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雌伏のじっ、ジークフリード 下 決着、遂に仲間に! ①

「お~~見紛うこと無きじっちゃん殿ではないですか」


 今度は魔ローダーの巨大な掌に握られたままの砂緒が、魔法ランプで明々と照らされる操縦席内部を覗き込んだ。


「コイツが噂のじっちゃんかよ……割と普通の奴だな」

「そうね、じっちゃ~~ん助けて~と叫びながら逃げてったのよ」


 フルエレが頬に手を当てて昔を思い出しながら言った。


「違う違う、じっちゃんに言い付けてやる! とか言いながら逃げていったんですよ」

「そうか、おじいちゃんっ子なんだな……」


 セレネが遠い目をした。


「違うわっ! 俺がじっちゃんがゴーレムの話、してたって言ったんだ!!」

「……やっぱりじっちゃん殿ではないですか」

「じっちゃんねえ」

「ロミーヌ国にいたんじゃねーの?」


 騎士風の男はわなわなと震え出した。


「緊張感の無い奴らめっ! 俺はじっちゃんじゃねえ、ジークフリードだっ!!」

「ああ、それでジッちゃんなのか」


 セレネは妙に納得した。


「もはや許さんっ! 死ねっ」


 じっちゃんが動かす魔ローダーアネーロは、砂緒を掴んだまま腕を振り上げそのままフルエレが生きていた崩れた屋上目掛け振り下ろした。


「キャーーーッフルエレ逃げてっ!」


 遂に最後のウーパーを食べ尽くした猫呼が叫び声を上げた。


「しまったアイスベルグッ!!」


 ジャキーーーン!!

 セレネの放った氷魔法は砂緒ごと魔呂の掌を凍らせたが、特にそれが勢いを止める事は無かった。


「バカめっもう終わりだっ!!」


 ザシュッ!!


「なに!?」


 ジークフリードが腕に走った激痛に振り向くと、地面に魔呂の腕ごと凍り付いた砂緒が落ちて、氷が砕けていた。


『両者そこまでっ!!』


 魔法外部スピーカーの声がして気付くと、青い量産型魔ローダーSRVが投擲ポーズのまま立っていた。どうやら巨大な剣をブーメランの様に投げてアネーロの腕を斬り落としたのだった。


「アブネッ向こうの城壁に剣が突き刺さってんぞ」

「本当だわ、でも助かったわね」

『くっそ~~誰だお前は??』


 ジークフリードは腕を押さえたまま叫んだ。その直後にバシャッとハッチが開いた。


『セレネさま申し遅れました。わたくしユッマランド執事見習いのナリと申します』


 自己紹介した少年は慇懃に胸に手を当てて頭を下げた。さらに慎重に色々な物を踏まない様に数機のSRVが現場を取り囲む様に現れていた。


「わしはユッマランド王じゃ、皆の者もはや騒動は許さんぞ。大人しく縛に付けい」

「おおっユッマランド王、何故此処に?」


 セレネは馬に乗ったユッマランド王に頭を下げた。


「うむ、周辺の村々から直訴を受けて内々に内偵しておったのだが、騒ぎが起きて急行したのだ。ロミーヌ王も来ておるぞ」

「お前は見紛うこと無きジークフリードではないか? 突然姿を消したかと思えば何をしておる?」


 突然多くの兵力に囲まれ動けなくなった男の顔をじっくり確認してロミーヌ王は言った。


「お、王様……」

「本名だったんですか? てっきり口から出まかせではないかと」


 氷を払いながら立ち上がった砂緒が見上げて言った。フルエレも近くに降りて来た。


「仕方が無いのう。ここまでの破壊をした以上は、じっくりユッマランドの牢に入れて取り調べをせねばな。ナリよ、そ奴を引き摺り出せ!」

「ひっ!?」


 ユッマランド王が命令すると、執事見習いのナリは操縦席に巨大な手を突っ込もうとした。


「ちょっと待ってあげて!!」


 その時黙っていた雪乃フルエレが大声で止めた。


「どうしたんですか、フルエレさん」

「よく考えて、この騒動は元はと言えば乱暴者の衣図ライグさんがトリッシュショッピングモールに不当に金銭を要求したのが発端よ! じっちゃんさんが一方的に悪いとは思えないの……」


 実はそーっと戻って来ていた衣図ライグの顔色が悪くなった。


(嬢ちゃん余計な事を言うんじゃねえよ……)


「ではどうすれば良いのかな?」


 ユッマランド王は雪乃フルエレに聞いた。


「衣図ライグさんは私達と話し合って今晩中にも即刻、此処を退去すると言っていました! だから誤解が生んだ争いなんです。ですから双方手討ちという事で引き下がる……じゃ駄目かしら?」

「ちっ」


 衣図ライグはつまらない顔をした。


「ふむ……そうだな良く考えなくとも全ては衣図ライグの不当占拠が悪いのだ。よしロミーヌ王よ、共に衣図ライグが本当に速やかに退去するか監察しようぞ」

「ははっ従いましょう」

「へいへい」


 中部小国群最大の人口と兵力を誇り、メド国征伐戦で多大な貢献をしたユッマランド王に逆らえる者はセレネや雪乃フルエレ同盟女王など、ごく少数の者しか居なかった。


「よし、これにて一件落着じゃっ! はーーはっはっはっ」


 馬上でユッマランド王は踏ん反り返って笑った。

挿絵(By みてみん)

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