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南に向かえ 上 隠し戸棚

「ここがスピナなる七華お姉さまの護衛騎士の部屋だったのですが……今は誰も使っておらず、私は度々や探ししていたのです」

「や探して」


 ちなみに猫呼からスピネルの正体についてはかん口令が敷かれ、砂緒やフルエレ達はスピナ=デスペラードのスピネルが良く分かっていなかった。さらに今彼女は城下町で一人で休憩中である。


「それで……お子様が見てはいけない大人の道具が出て来てしまったと?」

「ま、まあっ」

「本気で止めろ?」


 セレネは砂緒のウエイター服の胸ぐらを掴んだ。しかしリコシェ五華王女は頬を両手に当てて赤面して言った。


「そうなのです……良くお分かりを」

「え、そうなの!? それで良いの??」


 今度はフルエレが驚いて大声で言い、思わず赤面した。


「見て……下さい、これです!」

「遂に?」


 リコシェ姫が本棚の本を引き出して斜めにすると、ジャーーという音と共に本棚が横にズレて後ろから隠しロッカーが現れた。


「ゲゲッ何だこれは!?」


 最初にセレネが大声を上げた。ロッカーの中には濃い灰色スーツに妖しい三毛猫の仮面がセットで立て掛けられてあった。


「バッ○マン的なアレですなあ、完璧に三毛猫仮面じゃないですか」

「懐かしいわねえ三毛猫仮面」

「何ですかフルエレさん、その破壊的ネーミングセンスは?」

「自称よ……しかも猫呼の兄って噂よ」

「やっそれは酷い……」


 セレネはごくりと唾を飲み込んだ。


「おかしいですわっ……一つ足りない」

「ナヌッ?」


 砂緒が振り向いた。


「此処のロッカーには三か所置き場所があり、まだ二つスーツが残っていたのです。しかし前見た時より何故か一つ消えてしまっているのです」

「つまりスーツが独りでに歩いて行ったと?」

「アホはほっとこう」


 しかしリコシェ五華はハッとした顔をした。


「もしかして……砂緒様はお父様の財宝を御覧になりましたか?」

「ええ、否が応にも見せ付けられましたぞ」

「あれは確か神聖、連邦帝国? という東の地の大国からの贈り物なのです。父は大層な喜び様でああして見せびらかしているのです……」

「何と……此処にまで神聖連邦帝国が」

「マズイな、早くフルエレさんに新女王に就任して頂かないと!」

「勝手に決めないでよ! セレネが成ればいいじゃないの」

「喧嘩している場合ではありません。話を聞きましょうよ、して姫、その遣いの者共は今何処に?」

「は、はい確かタカギノシューネ様とネコニャン様という方々で、七華お姉さまを連れ立って南に観光に行くと……お父様は易々と承知されてしまって……お姉さまが心配で」


 リコシェは雲った顔に手を当てた。


「寄りによって貴城乃(たかぎの)シューネに猫弐矢(ねこにゃ)兄者の事ですか!?」

「誰なのよソレ」


 セレネと砂緒は当然知っているが、フルエレは聞いていなかった。当然姫乃ソラーレの事も……


「確かに美人が男二人に連れられちゃあ心配だな」

「はい……若い盛りの男二人に美しいお姉さまが淫靡な責め苦を受けているのではないかと心配で」

「淫靡とか言っちゃダメ」

「むしろ七華ならどんな状況にも対応可能でござろう……」

「やめなさい」

「違うんです! 奔放なお姉さまの事です最初は自ら快楽に身を委ねていても、後でふと我に返り激しい後悔にさいなまれるのではないかと……それが心配なんです!」

「深すぎて怖い」

「貴方何歳だっけ?」

「九歳です」


 しかし砂緒は目を輝かせた。


「姉の血を引いて将来有望過ぎです。よし嫁候補にしましょう」

「まあっ」

「ちょっと待てよ、今の発言冗談でも本気で許せない、あたしをいつも便利使いして……」


 セレネが本気で怖い顔をして砂緒は一瞬慌てた。


「そ、それよりも! 重要な事は三毛猫仮面スーツが何処に消えたかですよ、もしかして猫弐矢兄者が持ち去っていたら? もし三毛猫仮面が活動を再開したら恐ろしい事が起きますぞ!!」

「恐ろしい事って何だよ?」

「世界観が……破壊されます……」

「ゴクリ……そりゃ恐ろしいや」


 セレネは冷や汗を拭った。


「これはまだ猫呼には言えないわねえ。事実がはっきりするまでこの事は黙っておきましょう!」

「それがいいですねえ、ねえセレネさん?」

「……あたしの事好きで、ずっと一緒に居て欲しいって言ったの嘘じゃないよな?」

「当たり前ですよ、人前ですよ恥ずかしいです」


 セレネは雪乃フルエレ女王のみ砂緒が親しくして良いが、それ以外の女はたとえ年下の子供でも我慢ならない様だった。


「……分かった」


 しかしセレネは大人げなくギロッとリコシェを睨んで、少女はビクッッとなった。



 もはや選定会議まで日が迫っている為に即日衣図ライグの元へ向かう事となった。


「砂緒さま、お別れが惜しゅう御座います……私も一緒に行きたい……」


 砂緒はリコシェ五華の前に跪くと手の甲に軽くキスをした。


「ふふ、俺なんかと一緒に来ちゃダメだぜ、私はとんでも無い物を盗んでしまった……」

「なんとなく自分で言っちゃダメ」

「早くいこうぜ砂緒、フン」

「ちょっと遅い遅い、何してたのよっ!!」


 猫呼も合流し、今度はセレネの魔輪の後ろに乗って早速出発した。リコシェは小さく見えなくなるまで手を振り続けた。


「行ってらっしゃいませ~~」

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