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フルエレ一味のリュフミュラン出張 下 箱の中身……

「い、一体どっちに? どっちに乗ればいいのでしょうかっ!? うおおおおお」


 砂緒は血走った目で頭を抱えて悩み出した。


「そこまで悩む事じゃ無いだろ……お前一生一緒に居て下さいとか言ってただろ……」


 セレネは赤面しつつ小声で言った。


(セレネの魔輪に乗れば彼女の華奢な腰に腕を回し、時折彼女の低い胸に手が当たる等の嬉し恥ずかしいハプニングも!? でも久しぶりにフルエレと一緒に走りたい気持ちも大きい……)


「ちょっと砂緒……私は久しぶりに砂緒と一緒に走りたくなったのよ、何を血迷っているの?」

(同じ事思ってるし)


(ちょっとちょっとフルエレさんやっぱりアンタ身勝手だな! まさかアルベルトさんが亡くなった途端に砂緒とヨリを戻すとかトンデモ尻軽破天荒女か? 流石にいい加減にしろよ……)


「あ、あのフルエレさんもセレネさんも目を覚まして下さい! 相手はアノ砂緒さんですよ!? 取り合う必要ありますか? 首に縄を掛けて引きずったら良いんじゃないですかっ!?」

「まあっそれも良いわねメラン!」


 フルエレは笑顔で手を合わせた。


「ふぅ……決まりました。首に縄を掛けられるのは御免ですからね。ではセレネの腰に手を回しましょうか」


 等と言いつつ砂緒はセレネの魔輪に足を掛け、彼女の腰に腕を回そうとする。


「テイッッ! 何をするつもりだ? タンデムってのはタンデムバー握るもんだろが、何腰掴もうとしてるんだスケベが」

「あうっ」


 パシッとセレネが砂緒の手を叩きどけた。


「分かり申した、ではフルエレのサイドカーに乗り申そう」

「分かり易いヤツ!!」

「最初からそうすれば良いのよ」


 最近の彼女にしては珍しく、フルエレは終始にこにこしていた。という訳で乗るだけで長時間掛かってようやく三人は出発した。



「もうすぐ私達が作った裂岩の新・幹道ですなあ」

「ええ、直線が続くから凄く気持ちが良い道みたいよ! なんだかこうして走ってると昔を思い出しちゃうよね、砂緒……」

「そうですねえ」


 フルエレが金髪をなびかせながら話した。このセブンリーフにヘルメット着用義務は無い。


(何フルエレさん雰囲気醸し出してるんだよ……醸すなよ!)


 此処最近はセレネ一辺倒だった砂緒が途端にフルエレと笑顔で会話していてセレネは非常に面白く無かった。メドース・リガリァを滅ぼした日の涙と言葉は何なのかと問い詰めたかった。


「所でフルエレ、後部の巨大ボックスには何が入っているのでしょう?」

「うん、リュフミュラン王に送る粗品の賞味期限切れかけのポーションとハミガキと靴墨とかの雑具よっ!」


 フルエレは笑顔で答えた。


「フルエレ……貴方センスが行商目指してた時に退化してないですか?」

「フルエレさんそれ冗談だよな??」

「ホントよ、駄目かしら!?」

「駄目に決まってますよ。そんなの上げたら余計関係がこじれますよ!!」

「じゃあ何を渡せば良いのよ」


 しばし砂緒はサイドカーで考えた。


「衣図ライグに聞いた事があるのですが、南リュフミュランの民は金のピィイヨコちゃんなる神の鳥を信奉しておるそうな。その怪鳥を捕獲して剥製にして贈ってみては??」

「神の鳥を剥製にしちゃダメ」

「もういい加減だなあフルエレさん! とにかく何か買ってでも用意しましょうよ」



 そして二台の魔輪は裂岩の新・幹道の入り口に入った。


「わ~~~気持ち良い道ねっ! なんだか此処だとどんどんスピードが出ちゃう!!」

「こ、こらフルエレさん自重して下さいよっ」


 セレネが警告するもフルエレは久しぶりの小旅行に気持ちが緩みどんどんアクセルを開けて行った……


「うふふ……よ~~し、ぬふわNキロからぬおわNキロに挑戦よっ! うおりゃあああああ」


 とことんハイになったフルエレの魔輪がビューーーンと加速を始めた。


「フルエレ!? ヘルメット無しでこの速度はああああああ」


 砂緒も危惧する程の速度域に達したが、フルエレの笑顔は消えなかった。


「フルエレさん止まれ―――!!」


 もちろんセレネの必死の叫びも聞こえない。


「おほほほほほほほ私は風よっ」


 ビューーーーン!! さらにフルエレは加速を続けた。

 ウウウ~~~~~ウ~~~~~~ウ~~~

突如、けたたましいサイレン音が鳴り響いた。その瞬間、フルエレとセレネの顔は凍り付いた。


『はい、そこの魔輪二台、待避所に止まりなさい』

「何ですかこの柳○慎○的なスピーカー音声は!?」


 砂緒が振り返ると魔法パトライトを光らせたパト魔ー、覆面パトロール魔車が追跡していた。


「どどどどど、どうしよセレネッ逃げましょッ全速力で逃げれば……」

「高速警備兵ですよ、駄目です撃たれますよ! 止まりますよ……」

「うっ」


 そうしてフルエレ達は意気消沈しながら停車した。


「はい、住所と名前と年齢言って! 此処60Nキロ制限だよ? 今確か160Nキロ出てたよね? お父さんお母さん知ってるの?」


 新ニナルティナに免許証は無いが、スピード違反はあった様だ。


「そ、そんな出てません! そんな恐ろしい事出来ません!」

「ウソ付けよフルエレさん」

「フルエレさん? 貴方同盟女王陛下と同じ名前なの? はぁ面汚しだわ」

「はぁはぁ……此処だけの話ですよ高速警備兵さん、実はわたしその同盟女王なんです!! だから見逃して下さい!!」


 意を決したフルエレは指を立てて小声で言った。


「……どこの世界に高速を160Nキロで爆走する女王陛下がいるの?? 貴方達怪し過ぎるわ。その後ろのボックス開けなさい!!」

「ウザいですね、全員雷で消しますか??」


 遂に砂緒が切れかけて掌から雷をほとばしりさせ始めた。


「駄目――!! 警備兵さん消しちゃダメ」

「何も怪しい物じゃ無いんです、箱の中身をさっさと見せて下さいフルエレさん」

「そ、そうね!!」


 パカッ!!

 フルエレは荷台の大型ボックスを開けた。


「ナ~~~ゴ~~~~~」

「………………」


 ボックスの中には必死に猫の真似をする猫呼(ねここ)が居たのでフルエレはそっと閉じた。

 パフォ。


「今の何!? 開けなさい!!」

「猫です」

「猫じゃないでしょ、女の子でしょ! ますます怪しい!! 警備署まで来なさい!!」

「はい、○時○分現行犯捕縛!!」

「いやっいやよ、セレネ助けて何とかして!?」

「フルエレさん……砂緒余計な事するな、あたしがなんとかするから今は大人しく捕まれ」

「まるきり警察24時じゃないですか……」


 砂緒は仕方なく雷を消してパト魔ーに乗り込んだ。

裂岩の新・幹道 章・直通道路を敷こう(第106部分あたり)で砂緒とフルエレとセレネが魔ローダー蛇輪で作った幹線道路。一般人向けには駅魔車という高速バス魔車が運行されている。


魔車 魔法力で動く自動車。バス型や戦車型(魔戦車)、リムジンタイプ魔車など多種多様に存在する。発明順としては最初に大型ロボット魔ローダーが開発され、次第に路面念車や魔車や魔輪など小型化技術が開発されて行った。

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