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貴城乃シューネと某国密使との密談


「か、目が怖かったですので」


 七華王女は顔が怖かったと言い掛けて、失礼だと思ったから目に変えた。


「顔が、何か知っている人と同じで驚いた?」

「何の事やら。とにかくお離し下さいな。人に見られますわ」

「じゃ、やっぱり僕と出会ってドキドキしてポットを落としたのかな?」

「全然違いますわ、自信過剰もそこまで行くと滑稽ですわ」

「おや、ではこうしましょう」


 言いながら貴城乃(たかぎの)シューネは抱きすくめていた腕を離し、七華をくるりと回転させて顔を突き合わせて対面した。


「やはり貴方は美しい。東の地にもそうそう居ないです」

「何を!? あっむ」


 今度は前向きに立った直後にシューネは七華に無理やりキスをした。

 バシッ

 しかしほぼ直後に七華はシューネの頬を思い切り叩いた。


「はぁはぁ……無礼ですわよ!? お父様に言い付けてあげますわっ」

「痛いじゃ無いですか。それにお父様はいずれ我らに頭が上がらなくなる身、言い付けたとて大した影響はありませんな」

「なっ? なんて大胆不敵な男ですの……」


 変な男に狙われやすい体質の七華王女だった。しかしシューネはぶたれた事も構わず身を屈め再び七華に顔を接近させた。


「貴方には将来我々の仲間がやって来た時に先導役をお願いしたいのです。この事はどうかご内密に……」


 言いながらシューネはウインクした。


「馬鹿にしないでっ! 仲間を、セブンリーフを裏切れと言いますの? そんな安い女では無いですわっ! 失礼しますわっ」

(こんな奴とは全く違いますわっ砂緒さまは頭はアレですけど可愛げがあります、砂緒さまに危機をお伝えしなければっ!)


 七華はドレスの袖を両手で掴みながら走って逃げて行った。


「ふふっお気を付けて!」


 ガサッ

 直後に猫弐矢が藪から出て来た。


「君はやはり変質者だったか……」

「しっかり覗いていた君に言われたく無いな」


 シューネは乱れた髪を整えながら言った。


「覗きでは無い! 君が彼女に何かしないか見張ってたんだよ」

「しかし美しいという感想は事実だ。是非嫁の一人にしたい物だ」

「でも先導役って?? 神聖連邦は……セブンリーフに大規模な侵攻でも計画しているのか?」


 猫弐矢は片手で眼鏡を直しながら真剣な顔に戻って聞いた。


「さあてね」


 ガサガサッ

 シューネが肩をすくめて両掌を上げた直後、二人を囲む様に木々の背後から人の気配と物音がした。


「しっ、シューネ囲まれているぞ」

「呼び捨てかい? まあ良いけど、どうぞ出て来てくれたまえ」

「へ?」


 身構えた猫弐矢は一瞬シューネの言葉に戸惑った。


「野暮用は終わりですかな? 出て来るタイミングに戸惑いましたぞ」


 言いながら、高貴な身なりをしてはいるが鋭い目つきの怪しい男が出て来た。


「これはこれはヒューゴー様お待ちしておりましたぞ。猫弐矢殿、今回の主賓ですぞご挨拶を」


 言いながら貴城乃シューネは胸に片腕を回して大袈裟にお辞儀をした。仕方ないので猫弐矢も頭を下げた。会話している高貴な男の周囲には護衛の騎士や魔導士達も複数いた。


「この方は?」


 怪しい男が失礼にも猫弐矢を怪しんで見た。


「ご安心を、私の腹心で神聖連邦の有力者です」

(誰が腹心かっ!)


 猫弐矢は内心いきり立ったが、シューネの有力者だという言葉によって連中の見る目が明らかに変わった。これで相手が権力の亡者という事が分かった。


「ほほう、これは失礼致した」


 周囲の騎士達が殺気立った目で警戒する中、海の見える岬で両者の密談が始まった。猫弐矢は訳も分からず付き合う事となった。



「……という感じで、当面このジジイの権力は揺るぎない物で、同盟の女王も半ばこの者が独断で決めている様な状態です。この者が居座っている限り我らの家系に浮揚の目はありません」


 すっかり会話を聞き流していた猫弐矢だが、同盟の女王という言葉に反応してダミー猫耳がぴくぴく動いた。


「ほほう、ではその邪魔者が御退場する様に計らってみれば?」

(なんかヤバイ事言ってるぞコイツら)


 猫弐矢は細目で周囲を見た。


「いや、それが無理なのです。次期王となるべき息子夫婦こそ早めに消す事が出来たのですが、見逃した生き残りの孫娘がそれは狂暴な娘に成長しましてな、アレがいる限りは手出し出来ません」

「どれくらい狂暴なのですか?」

「あの娘が剣や魔法で誰かに負けたのを見た事がありません。しかも生身でドラゴンを何匹も倒したとか、強い魔ローダーにも乗れるとか滅茶苦茶な娘です」

「何か弱点は?」

「……一つ弱点と言える物があるとすれば、高飛車な性格で学校で友人がおらず孤立しており、よく休んでおりますな」

「ほほう、ツンでぼっちと……メモメモ」


 シューネは生真面目に全てメモした。



「では、我らはこれにて。いずれまたお会い致しましょうぞ」

「こちらこそ、貴方達に栄光を」


 両者は大袈裟に頭を下げると、怪しい者達はそそくさと去って行った。


「ふぅ~~~、今の見るからに怪しい連中は何者だよ?」

「何ってユティトレッド魔導王国の密使だよ」

「え?」

ユティトレッド魔導王国 旧ニナルティナ王国と並びセブンリーフで盟主と呼ばれる有力国。ライバルの旧ニナルティナが滅んだ後は事実上の北部海峡列国同盟の指導者となった。


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