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エピローグ Ⅰ 紅蓮の叫び

 

 地上では既に深夜となり火災も鎮火し混乱も完全に収拾し、イェラとメランとコーディエ達が指揮する東西同盟軍とカヌッソヌ軍は軍事行動を停止して遅い休息に入っていた……

 シュタッシュタタッッ

 まだ魔ローダーが破壊していない外側の市街地の城壁を物凄い速さで飛び越える紅蓮と、その上をフワフワと天使の様に魔法で飛ぶ美柑の姿があった。


「何なんだこれは……街がメチャメチャじゃないか」

「街のあちこちに避難民を監視する様に巨大な魔ローダーが立ってる、凄く不気味な光景……酷いわ」


 建物が壊され、火災が発生して往時の姿が見る影も無いメドース・リガリァの市街地を小声で話しながら進んだ。しかしこの破壊の大半がカヌッソヌ軍とメド国革命派軍の混乱とデスペラードの大立ち回りから起こった事を彼らは知らない。いや、雪乃フルエレの蛇輪も多少破壊した訳でもあるが。


「それよりも気のせいか、城の影が全く無いんだけど……」


 紅蓮が言う様に、月明りで中心の城のシルエットが見えても良いはずだが、近付いても一向にその姿は現れなかった。


「まさか……エリゼの城が無くなっちゃう訳無いでしょっ」


 美柑はひたすら急いで懐かしい中心の城に向かった。



 シュタッ

 再び中心の城の堀と城壁を飛び越えた二人はしばし呆然とし声を失った。


「嘘でしょ……」

「こんな馬鹿な……」

「何も無くなってる」


 かつてエリゼの城があった場所には、ただ更地が広がるだけとなっていた。


「酷いよ……ここまでする必要あるの!?」

「同盟の女王雪乃フルエレ、一体どんな女性なのだろうか……あの雷も彼女が??」

「これじゃエリゼも貴嶋さんもきっと……」


 美柑が地面に手をついて泣き始めた。


「……一度同盟女王、雪乃フルエレに会ってみないといけないかもね」

「会ってどうするの? 倒すの??」

「会わないと分からないよ……」

「エリゼが殺されたのよ、よく落ち着いていられるわね!?」


 美柑は予想以上に落ち着いている紅蓮に違和感を感じていた。

 

「違うんだ……感じるんだ」

「何を感じるというの??」

「エリゼは生きている……彼女の心音と息吹を感じるんだ。ついでに貴嶋サンも」

「ええっ!? 何処どこ??」


 美柑は思い切りキョロキョロして、肩の上でフェレットが走り回った。紅蓮は目を閉じて精神を集中した。


「……外、城壁の西側の辺り……かすかに感じる……行こう」

「うん、凄く行こう、すぐ行こうよっ」


 美柑は両手をグーにして前に突き出すと目を輝かせフワリと飛んで行った。紅蓮も物凄い速さで走り出した。



 西の城壁の外側。此処はY子こと雪乃フルエレ女王とセレネが指揮する西側のミャマ地域軍が最初に張り付き、その後カヌッソヌ軍が突入した側で、今は静まりかえっていた。


「静かに、何者かが居る!」

「貴様、同盟軍かっ!!」

「殺せっ!!」


 誰も居ないと思っていた北の山の森に潜んでいた男女で構成された数十人規模の部隊が突然現れた。


「同盟軍かって聞くって事はメド国軍だね、じゃあ味方だね、でも時間が惜しい」

「分かったわっ紅蓮はエリゼを探して!」


 そう言うと美柑は肩のフェレットをフェンリルに変身させた。


「殺しちゃダメよっ!」

「あいあい」


 バキドカッ

 フェンリルは走り出すと、突然出て来た謎の部隊に軽く体当たりしては吹き飛ばして行く。


「ぎゃあっ」

「デカい犬が!?」

「デカい犬じゃない!!」


 突然出て来た部隊は特殊な能力など特に持って無かったのか、フェンリル一匹で簡単に押さえる事が出来た。


「紅蓮どお?」

「この辺りの地面の下からエリゼの息吹を感じるんだ……」


 そう言うと紅蓮は膝を付いて地面に頬を付けて目をつぶっていた。


「どうするの?」

「何とかやってみる!! 下がってて、あとあの人達も巻き込まない様にしてっ」

「うん、うん」


 美柑は良く分からなかったが、フェンリルに吹き飛ばされた男女の部隊をふわふわ飛びながら紅蓮から離して置いて行く。


「間に合ってくれ」


 そう言うと、紅蓮は背中のエイチファイアーブレードを抜いて地面に突き立てた。


「何で、こんな地面の底からエリゼと貴嶋さんの息吹と心音を感じるのか分からない、けど、けれど、もう一度二人に会ってみたい!! 誰も望んでいないんだこんな事」


 途端に地面に突き立てた炎の剣を中心に紅蓮の身体からも黄金色の粒子が沸き上がり、周囲に拡散して行く。


「何なの? 何の力??」

「何だあれは??」


 美柑だけで無く、襲い掛かって来ていた謎の部隊も動きを止めて光り輝く紅蓮の姿を眩し気に見た。


「エリゼ……誰も……そんな終わりにさせるかあああああああああっっ!!!」


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