蹴りたい砂緒か 下
『ラストッ!! ル・ツーの足元!!』
『はいっ!!』
どさっ!!
砂緒が丁度イェラの前に降り立った。
シュンッ!!
と、その時にル・ツー、砂緒、イェラそして地上兵達の軸線上の先にサッワのレヴェルが現れる。
『出たわよっ!!』
『撃ちます!!』
「イェラッ!!」
「何だ!?」
『砂緒さんっ!?』
『魔ローーンの盾っ!!』
バンッッ!!
ル・ツーの足元の先に出現したサッワのレヴェルは躊躇無く散弾を発射した。飛び降りた直後、視線の先にサッワのレヴェルが入った砂緒は瞬間的に体を捻ってバネの様にイェラの身体に飛び付いて硬化した。遅れて兎幸の魔ローンの盾が飛んで来るが、一足先にサッワの散弾が発射されてしまう。
ドバババババババ!!!
発射された小さな散弾達が地上すれすれで飛び、地上兵達をなぎ倒して行く。
「なっ!? 砂緒ッ」
イェラは砂緒に抱かれながら、周囲の男達が次々死んで行くというか、飛び散って行く瞬間を目を見開いてスローモーションの様に見ていた。
ドバッ! バチャッ!!
とても酷い光景だった。
「ぎゃーーー!!」
「痛い!!」
ガキーーーーン!!
砂緒の背中にも散弾の破片の一部が当たったが、硬化した砂緒の背中で破片はさらに砕け飛び散った。
「大丈夫ですかイェラ」
一瞬の出来事だったが、イェラは長い時間の様にも思えた。多くの死傷者の中イェラは無事だった。
『地上兵の司令官は死んだかい?』
『分かりません……近付かない事には……帰りますか?』
成果が気になって少しその場に留まるサッワとココナツヒメ。
「バカ、危ないだろう!」
ドンッと砂緒の胸を押したイェラだったが、目は潤んでいた。
「メラン、思い切り私を蹴って下さい!」
「どうした砂緒?」
イェラも戸惑う謎の指令だったが、少し怒っていた時にさらに抱き合う二人を見てカチンと来たメランは躊躇無く砂緒をル・ツーで思い切り蹴った。
『みんなどいてーーーーーっ!!』
ドシュッ!!
「アーーーーーーーッ!!」
スポッ!!
思い切り蹴られた砂緒はすっ飛び、なんとその場にまだ居たサッワのレヴェルの短くなった魔砲ライフルの砲口に一寸法師の様に入ってしまった……。
『ココナツヒメさま、砲身の中に衝撃がっ!?』
『なんか蹴ったような!?』
「こんな物、内部から叩き壊してやるっ!! はぁああああああああ!!」
砂緒は最大限拳を硬化させると、バレルの最深部の機関部と思われる辺りで思い切り中の機構を叩き潰した。
ガキーーーーーン!!
鈍い音と共にボルトが飛び抜け、サッワの魔砲ライフルが内部から破壊された。
『えっ?』
『サッワちゃん!?』
『全機、斬り込めーーーーーー!!』
一連の出来事は全ては一瞬の短い間で、SRV操縦者達が気付いた時には、突然敵の持つライフルの基部が破裂したので、それを見た途端に反射的に走り出したのだった。
『ちっ!!』
『帰るよっ!!』
シュンッ!!
しかしSRV達が剣を振り上げて襲い掛かる寸前に二機は姿を消したのだった。
「砂緒死んだかっ?」
『砂緒さんっ!?』
『砂緒が連れてかれちゃったよーーー!!」
イェラとメランと兎幸が同時に一斉に砂緒の事を心配した。
「馬鹿野郎……私を助けても死んだら意味無いだろ!?」
イェラが涙を流して地面を叩いた。
「あ、あのーーー? 死んでませんし、連れてかれても無いですけど……」
が、イェラが悲嘆に暮れた直後に飛び抜けたボルトの影から砂緒がひょいっと出て来た。
「生きてたのかっ心配させるなよっ!」
イェラが走って行って砂緒に抱き着いた。
「ど~~ですか、見直しましたかっ?」
「馬鹿野郎っ心配させるなっ」
「またご褒美なんて、あるかなデヘヘ」
砂緒の言葉にイェラがちらっと一瞬ル・ツーを見上げる。
「今度どこか城とか落ち着いた場所に入ったらな、メランにはナイショだぞ」
「……お風呂もアリですか?」
「アリだ」
「イエーーーッッ!!」
砂緒は素直に満面の笑みで親指を立てた。
『あの……砂緒さんもう一度蹴られたいですか?』
それを見ていたメランがル・ツーの脚を振り上げた。
「わわっメラン、そんな事してる場合じゃないよっ回復(強)だよっ!」
メランを横で見ていた兎幸が慌ててメランを止める。
「大将~~~俺達の事誰も心配してくれやしませんね~~~」
「そんなもんだろ……生きてるだけマシだと思え」
偶然にも魔ローダーの脚によって射線から隠れていた衣図ライグとラフだった…




