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わたしのイェラを守って(略称わたイェ)


(こ、こんな酷い事をあのサッワくんが? 信じられない……)


 魔ローダースキル回復に手こずるY子の操縦席の後ろでカレンは震えながら凄惨な兵士達の虐殺現場を見ていた。トリッシュ国義勇兵として多くの死は見て来たが、明らかに度を越した残酷さだった。


(私が……サッワくんに会って、サッワくんを止めなきゃ……)


 カレンはY子の操縦席の下に隠した短魔銃をちらっと見た。



 ―再び東側、砂緒の本隊に戻る。


「んんんーんんんーー、んんんーーんんんーー、んんんーーーんんんーー、んんーーーんーーー。んんんーーんんんーー、んんんーーんんんーー、んんんーーんんんーー、んんーーーーーーー。んーーんんんんんー、んーんーんーんーーーんーんーんんーんー、んーんーーんんんんーーんーーんんんんーんんーーんんんんーーーーー」


『あ、あの、砂緒さん?』


 砂緒はル・ツーの巨大な掌に握られながら、うっとりとした顔で謎のハミングを歌い出した。


「タタタータ、タタタータータタタ、タタタ。タタタータ、タタターータ、ターーターーーターーーーターーーーーーー」

『あの砂緒さん、さっきから私何を聞かされてるんでしょうかっ!?』


 メランの声を聞きハッとして振り返る砂緒。


「何って○居○乃さんの月○ら○祈○と○にに決まっているでしょうが、今まさに佳境に入ろうとしている時になんて事してくれるんですかっ!!」

『わかりませんよっ何言ってるか……』

「メラン、ちゃんと警戒してないと駄目ですよっ!」

『それはこっちの台詞です!!』



 メドース・リガリァ郊外の本陣でサッワに魔砲弾を渡していた魔ローダーレヴェルが親指を立てた。


『追加で急遽、通常魔砲弾が三発、散弾を十発供給してもらいました、これで東側を急襲出来ます』

『ええ、じゃ早速行きましょう!!』


 すぐさまサッワとココナツヒメの魔呂が手を繋ぎ、戦線に復帰する為に瞬間移動をした。

 シュンッ!!


 シュンッ!!


『うわっ半透明が出たっ!!』


 東側砂緒の本隊が行軍を開始した直後にサッワとココナツヒメが現れたが、事前の砂緒の指示もあって特に乱れる事も無く、すぐさま計画通りの対処が出来た。


『アタッカーは半透明と狙撃者に斬り込め!!』

『盾役は兵員を守れっ!!』


 しかしサッワのレヴェルが腰だめで抱えた魔砲ライフルは、下を向く事無く真っすぐそのまま魔ローダーに向けられていた。


『駄目ッ! 逃げてっ!!』


 上空待機している魔ローン二機の監視センサーから、即座にライフルの砲口が魔ローダーに向けられている事を感知した兎幸が、散弾では無く通常弾だと計算して慌てて魔ローダーに避ける事を指示した。


『バカめっ! 散弾じゃ無いんだよっ!!』


 ドンッ!!

 サッワは真っすぐ迷い無く迫ってくる魔ローダーSRV一機に向けて、魔砲弾を撃ち放した。人間には感知出来ない速さで一直線に魔砲弾が飛んで行く。


『だめーーーーー!!』


 シャッ!! カキーーーーーーーーン!!

 瞬間的に既に別に待機させていた盾用の三機の魔ローンをSRVの前に飛ばし、寸での所で直撃を避ける事に成功したが、兎幸に激しい痛みが走った。


『痛ーーーーーーーーーーいいい!!』

『げっ助かった!?』


 直撃して死ぬかと思ったSRV操縦者は生きている事が一瞬信じられなかった。


『ちいっまた浮遊する盾がっ!』

『あと二発、確実に当てます、瞬間移動を!』

『いくわよっ』


 シュンッ

 ココナツヒメは今度はなるべく浮遊する盾から離れた場所に出現した。


『今よっ!!』

『当たれっ!!』


 ドンッ!!

 ドカーーーーーン!!

 瞬間移動から出現した直後、躊躇する事無く引き金を引いたサッワは、眼前に居た一機のSRVに魔砲弾を直撃させた。操縦者にしてみれば、よく分からない内に機体が爆散してしまった事だろう。機体がいきなり撃墜された事で盾役達にも動揺が走る。


『お、おい大丈夫なのか??』


「なんて事ですかっ!? しまったあああ!!」


 先程までお気楽な調子だった砂緒が歯ぎしりした。


『あと一発、瞬間移動をっ』

『ええっ』


 シュンッ!!


『兎幸、当てずっぽうでいいから盾を最初から配置してっ!!』


 メランが叫ぶ。


『えっ!? そんな事言われてもっ』


 シュンッ!!

 ドンッ!!

 ドカーーーーン!!

しかし無情にも突然現れたサッワによって、またしても直撃弾を受けたSRVが一機撃墜されてしまった。


『やった、二機撃墜成功!! 次、散弾に変わります』


 もともと弾倉内に魔砲弾は三発しか入っておらず、次弾からは散弾となった。十七機いたSRVは二機減って十五機となってしまった。


 シュンッ!!

 再び目まぐるしく瞬間移動を繰り返し、突然現れたサッワがライフルを構えた。


『下っ! 下向いてるから散弾だよっ!!』

『本当かっ!?』


 シュバッ!!

 ドドドドドドドド!!!

兎幸の読み通り、今度の発射は散弾でいきなり地上兵に怖れていた犠牲が出てしまった。


「ぎゃーーーー!!」

「ひいいっ」

「ぐわっ」


「ちいいいいっ皆、何やってんですかっ!!」

『やってますっ! 散弾に変わった! 皆、また盾になって!! 兎幸も魔ローンの盾もっと前に出してっ!!』


 メランが砂緒に変わって全機に指示を出す。


『サッワちゃん、なんとしても残り九発、地上兵に当てるのよっ!』

『はいっ!!』


 シュンッ

 再び消えるサッワのレヴェルとココナツヒメのル・ワン。


「兎幸、イェラは地上兵全体の指揮官です! 彼女にマーカーを付けて、重点的に守って下さい!!」

『え、え?? う、うん』


 しかし魔法マイクに拾われた砂緒の声は、そのまま魔法外部スピーカーによって、偶然至近にいたイェラに聞かれてしまう。


「砂緒、余計な事をするなっ!! 私の事は良いから地上兵全体の事を考えろっ!」


 イェラは馬に乗りながら大声で叫んだ。


「なんだよ、俺達死んでもいいみたいな扱いだぜ」

「いや実際忘れられてるんでしょ~~」


 同じく馬に乗った衣図ライグとラフも敵の出現に慌てながら避ける事も出来ずあたふたして駆け廻った。


 シュンッ

が、偶然か瞬間移動を繰り返していたサッワのレヴェルが今度はイェラ達が居る先頭部分付近に出現した。


「メラン兎幸ッ!! 後ろっ!!」


 シュバッ!! 

 カカカカカカカン

しかしその散弾は、発射された直後に兎幸が回した魔ローンの盾により防がれた。


『ちっサッワちゃん移動よ』

『はいっ!』


シュンッ!!


「危ない……イェラ、もうル・ツーに乗ってくれませんか?」


 巨大な掌に握られた砂緒がイェラに叫ぶ。


「私だけ特別扱いするなっ!」

「特別な存在だから特別扱いしますっ!」

「いいからっほっとけって!!」

『二人共喧嘩してる場合じゃ無いですからっ!』


 イェラと言い合いになり掛けた砂緒にメランが怒鳴った。

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