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狙われた地上兵


 シュバッ!!

 ココナツヒメのル・ワンと彼女に触れられているサッワのレヴェルが、進軍する西側のミャマ地域軍の至近、結界くんの影響するギリギリ外に突然出現する。


「うわっ出た! 半透明だ!!」

「うわ、敵の魔呂だっ!!」


 土塁を崩し、堀を埋めていち早く兵員が通行出来る様にしていた兵隊に動揺が走る。


『落ち着け! 結界くんを敷設して行っている以上、半透明の瞬間移動は無効だ。敵は走って斬り込んで来る以外に無い!』

『魔呂隊剣を構えろ!!』


 ミャマ地域軍側の十機の魔ローダーSRVが剣を構えた。


『バカめっお前らなど眼中にないわよっ! サッワちゃん、はよしんしゃい!!』

『はいっくらえっ!!』


 バシュッ!!

 ガチャッカランッ

 バシュッ!

 ガチャカラン

 バシュ!!

 ガチャッカランッッ

 サッワはココナツヒメに言われるとすぐに長バレルを排除した魔砲ライフルを腰だめで三連射した。散弾の標的は魔ローダーでは無く進軍する約一万の地上兵に向けた物だった。


「ぎゃーーーーっ!」

「ぐわーーー!!」


 標的にされた地上兵達は突然無数の大きな火の玉が落ちて来て、その一つ一つが地表に落ちる寸前に炸裂して多数の死傷者を出した。クラスター爆弾よりも凶悪な攻撃で付近は阿鼻叫喚の地獄と化した。この三連射だけで数百人が死亡した。


『アハハハハ、同盟軍は人道的な軍隊さまらしいからねえ、地上兵さえ掃討しちまえば、魔ローダーだけじゃ街は蹂躙出来ないだろうからね! サッワちゃんどんどんやっちまいな!!』

『ハイッ!!』


 再びサッワがアサルトモードにした魔砲を構える。


『なんて奴らだ!?』

『イカン、急いで盾になれっ!!』


 魔ローダーSRV達が滑り込む様に射線に入り込み、地上兵達の盾になるべく立ちはだかった。

 バシュッ!!

 同時にサッワが再び発射した。

 ダカカカカカン!!


『あ、いてっうっ、いててててて』


 金属製のB○弾が高初速で身体にめり込む様な痛みが魔ローダー操縦者の全身に走る。



『セレネ様、半透明が瞬間移動でっ!』

『セレネ、早く戻るわよ!!』


 Y子が変形して飛び立とうとするが、セレネが何故か変形を阻止してガチッと動きが止まる。


『いや、連中がそんな非人道的な攻撃するなら、こっちももはやメドース・リガリァの本城を飛び蹴りでぶち壊そう。それでついでに街も滅茶苦茶に壊してやろう!!』


 少しキレたセレネが、自分の過去発言と矛盾する様な提案をした。


『駄目よっ! 何を言っているの?? 貴方が多くの国々が一致協力して地上兵の力でメド国を落とす事に意味があるって言ったのよ! 何を今更街や城を蹴とばして壊すよ、そんなやり方私がいる間は絶対に許さないから』


 Y子は魔法モニター越しに断言した。しかしその当のY子こと雪乃フルエレ女王こそが、我を忘れその前言をあっさり翻す事となる……


『はいはい、Y子ちゃんはお優しい御方で御座いますね!』

『なによっ文句ある? 早く飛ぶわよ!!』


 今度こそ一瞬で鳥型に変形してサッワ達が出現した地点に飛んで舞い戻った。


『くっそーーー!! 右に左に瞬間移動で位置を変えて!! セレネさま早くっ』


 バシュッ

 バシュッ!!


「ぎゃーーーーーー!!」

「うわーーーー」


 もぐら叩きの様に、いろんな場所に瞬間移動しては地上兵達をしつこく掃射するサッワの散弾魔砲ライフル。Y子とセレネが戻る前の瞬く間に三分の一近くが犠牲になり始めていた。


「くっそ、一瞬で何て事だ!?」

「コーディエ殿危ないですぞ!!」

「シャル王こそ、早く魔呂の背中に隠れて下さい!」


 コーディエやシャル王や他の王達や指揮官達も逃げ回る事しか出来ない。


「危ないっ!!」


 コーディエの視線の先に遂にサッワの巨大な魔砲ライフルの姿が見え、彼は無意識のうちにシャル王の前に馬で立ちはだかった。


「コーディエ殿!!」


 バシュッ!!

 シャル王もコーディエも発射音とブラストに目をつぶった直後、巨大な氷の剣が盾代わりに二人を守った。


「……Y子殿っ! い、いやコーディエ殿、身を挺してワシを」

「い、いえ貴方をY子殿が頼っているようですので、別に……」


 てっきり悪人だと思い始めていたコーディエが身を挺して自分を守ってくれた事をどう考えれば良いのか混乱するシャル王だった。


『シャル王さまご無事ですか!?』

「わしの事は良い、それよりも兵達を!!」

『はいっ!! こんな酷いやり方許せないわっ!』


 Y子はすぐさま蛇輪を立ち上がらせると、ライフルを構えるサッワのレヴェルに肉薄するが、すぐに瞬間移動されて違う場所に出現されてしまう。


『ちっ、今までの瞬間移動の戦い方で一番やっかいだな!』


 バシュッ!!

 サッワがまた地上兵に対して散弾を撃った。


『くっそーーー!! また撃ちやがった!!』


『アハハハハ、手も足も出ない様だねえ!!』


『SRV隊済まない! 全力で兵達を守ってくれ!』


 突然セレネは出発地点のソーナサ・ガ国に走って戻って行く。


『セレネどうするの??』

『これだっ!! 結界くん散布装置、これで地上兵の周囲より広範囲に出現出来なくする!!』


 蛇輪は置き去りにされていた結界くん散布装置を片手で持つと再び地上兵の周囲に飛んで現れた。

 カシャッ!! ババババババ!!

 鳥型の状態でより高い高度から結界くんを広範囲に散布する。


『これで、さっきより地上兵に接近出来なくなったハズだっ!』


 地味な行動だが効果があった。ココナツヒメの瞬間移動の輪が広がり、よりSRV達が盾になりやすくなった。

 バシュッ!!


『あっ痛い。いてててててて』


 盾になったSRV操縦者が苦痛に顔を歪めるが、そんな物は直接掃射される地上兵に比べれば何とも無い物だ。


『チッバカ鳥が結界装置をさらに散布してさっきより近くに接近出来なくなったわ!』


 散弾は至近の敵には効果を発揮しやすいが、少しでも距離を取られると途端に威力が半減する弱点もあった。


『よし、SRVが盾をしやすくなったぞっ! 回復魔導士医療班、すぐさま怪我人の治療だっ!』

『半透明に斬り込むわよっセレネ! ていうか斬り込んでよ!!』


 バシャッ!!

 上を見上げる半透明、ル・ワンに向けて取り囲む様に結界くんの残りを散布する。


『しまった!! 囲まれたわっ!!』

『ココナさま、走りましょう!!』

『ええっ』


 ココナツヒメとサッワは慌てて結界くんの効果範囲外に走り出した。


『逃すかあああーーーーーーーーーー!!!』


 結界くん散布装置を放り出したセレネが魔法剣を展開して急降下する。

 ザシュッ!!

 シュンッ!!


 蛇輪が剣を振り下ろしながら着地した瞬間、同時に結界くんの範囲外に出たココナツヒメがサッワのレヴェルと共に瞬間移動して消えた。この短時間の攻撃でミャマ地域軍側の地上兵の三分の二以上が行動不能となった……


『くっそーーーまた取り逃がしたあのバカ透明!!』

『なんて事酷過ぎるわ……地上兵が甚大な被害よ……ああっ衣図さんやイェラが危険よ! 早く教えてあげなくちゃ』


 Y子はすぐさま砂緒の東側本隊に危険な攻撃の警告を連絡した。

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