牢屋暮らしはメンタルきついよb
「いらっしゃいませ! 冒険者の方ですね、冒険者登録されますか?」
その頃冒険者ギルドは砂緒とフルエレに入れ違いになる様に、ちらほらと冒険者の来訪が出始めていた。なんと最初の冒険者のお客様の来訪を牢獄に入っていて見逃してしまった二人だったのだ。来訪者がある以上放置は出来ないと、フルエレの事が心配だがここはイェラと猫呼クラウディアが切り盛りする事になった。代わりに男共が城に行って無罪を嘆願している。
「わーこの登録者カードは手書きかい、素朴でいいねえ」
「裏を見て下さいね」
猫耳にメイド姿がハマリ過ぎた猫呼クラウディアが恥ずかしそうに言った。
「おお『気を付けてくださいね。はあと』だって、感動するよ!」
「うふふ、頑張ってくださいね!」
冒険者達が猫呼にデレデレしながらフルエレが心血を注いだ革張りの椅子に座っていく。突然の代役にも関わらず堂に入り過ぎた猫呼に驚くイェラ。そのイェラ自体の姿はフルエレのメイド服を着ている為にパッツパツであり、危険な程のミニスカになっていた。
「お前はプロか。それよりもどうしてもこの姿じゃないと駄目なのか?」
普段は無表情なイェラが少し頬を赤らめてひらひらさせる。問題はひらひらでは無くサイズだったのだが。
「私も羞恥に耐えて着ているんですよ! 当たり前じゃないですか」
「お前は普段から猫耳を付けて羞恥に耐性があるだろう……それにしても二人が心配だな」
「そうですね……」
二週間程が経過していた。
「フルエレ、私は最近昔観たドラマを第一話からずっと反芻する事に凝っています。今は刑事ものがグルグル回っています。フルエレは最近静かですね、大丈夫ですか」
「う、ううう私もう駄目です。砂緒に脱獄を依頼しちゃいそうです。看守さん今日の洗濯物です」
「お、じゃあ洗濯おばさんに渡しておくな!」
「か、看守さん、匂い嗅いだり変な事してないですよね」
「安心しろ! 変な事は一切していないぞ。ははは」
満面の笑顔で親指を立てる爽やかな看守。シュバァシュバアァ! 横からは激しい音と光の連続。
「もうやってらんねえ! こんな事毎日毎日やってたら死んじまう!」
「こら、手を抜くんじゃねえ!」
どぼっっバキッぼすっという、繰り返し殴り続ける鈍い音が響く。
「ほらっ気にす・ん・な!」
親指を立て、凄く爽やかな笑顔でフルエレを励ます看守が怖い。
「か、帰りたい……メンタルが……崩壊しそう……お店……私の」
フルエレは涙を流し続けた。