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スピネル強行突破 有未レナードへ悲しい知らせ

「女王陛下、あの猫耳の偽女王は避難して行きました。これで完全に作戦は失敗となりました。この責は全てそれがしに在ります。どの様な罰も受けましょう。しかしまずは御国に帰る事が……」

「もうあの片思いの女性の事は良いのかしら? 元に戻ったのねスピネル」


 スピネルの言葉を遮ってエリゼ女王はさばさばとした口調で言った。


「何の事でしょうか? あの女の戯言でありましょう」

「そう……では国に帰して頂戴」


 もはや何の希望も断たれた女王だった。


『アヤカ、ブリット、最後の命令だ。それがしはこれより女王陛下をメドース・リガリァにお連れする。其方らは捨て石となり、それがしが突破する時間を稼げ!』

『ハッ有難き幸せ!! どうぞ無事の御帰国を!』

『……スピネルさま、短い間でしたが貴方の部下となれて幸せでした!』


 アヤカとブリットは沢山の魔ローダーに立ち向かいながら敬礼した。


『済まない』

「………………」


 虚ろな気持ちのエリゼ女王を乗せて、スピネルのデスペラード改Ⅲが帰国する為に取り囲むウェカ王子たちの魔ローダー部隊を突破しようと走り出そうとした寸前だった。


「スピネルさま、フゥーです。第一次シャクシュカ隊の生き残りのフゥーと申します。どうかお助けを! 私も国にお連れ下さい!!」


 デスペラード改Ⅲの外部魔法マイクに必死に叫ぶフゥーの声が拾われた。スピネルは無言でエリゼ女王の顔を見た。女王は静かに首を横に数回振った。それを見てスピネルは聞かずとも女王の心が分かった。


『何だ貴様は。もはやメド国は終わりだっお前は此処で平和に暮らせ! 解雇する!!』


 そうぶしつけに言い捨てると、デスペラード改Ⅲは今度こそ本当に走り出した。フゥーは気が抜けた様に無言でペタンと座り込んだ。


『あっ濃いグレーだかの魔呂が走り出したぞ! 捕まえろ!!』


 ウェカ王子がデスペラード改Ⅲが走り出した事に気付き、自分も追い掛けながら部下達に取り囲む様に指示した。SRV数機が回り込んでブロックしようとしたが、すかさずアヤカとブリットのレヴェルが逆に立ちはだかり剣で腕を斬り落とした。


『スピネル様の邪魔はさせない!』

『女王陛下、どうかご無事で!』


 叫びながらわらわら襲い掛かるSRV達に果敢に切り掛かるアヤカとブリットのレヴェル。しかし数が多い為に数機がなおもデスペラード改に襲い掛かる。その内の一機が遂にタックルで押さえ付けようとした時に、デスペラードがクツのかかとの先辺りから飛び出たナイフでSRVの操縦席を後ろ蹴りでグサッと突き刺した。さらにその直後には剣で振り向きざまに別の一機の首を刎ねる。瞬く間に逃げながら二機のSRVを撃破すると、今度は体中から黒煙を吐き出し姿をくらました。


『消えたッ!? 逃げられたかっ??』

『隙ありっ!!』


 煙幕に乗じて逃げたかと思いきや、いきなり舞い戻って来たデスペラードが遂に三機目のSRVをズバッと切り捨てる。

 ドゴーーーン!!


『もう良い、逃げる敵を追って命を失うのは損だ。その濃いグレーは放置しろ!!』

『グレーのはウチが倒したるわっ!!』


 強敵と分かって遂に瑠璃ィキャナリーがデスペラードを追い掛け始めたが、少し判断が遅くスピネルは街の何を踏もうが構わず全速力で逃げ始めた。当然瑠璃ィは足の踏み場に気を遣い全速力では追えなかった……


『済まぬ三機が限界だ。それがしはこれより本国に帰る、許せ』

『はいっ!』

『おさらばです!!』


 ジャミング下、少し離れると魔法通信が使えなくなり、遂にスピネルのデスペラードは敵の追撃から逃げおおせた。


『どうやらこの二機は逃げたヤツより格下の様やな、こんなん全員でメッタ斬りにしたったら可哀そうや。ウチと王子の一対一同士で戦うか?』

『よしそうしよう! ユティトレッドでやった模擬戦の続きだ、どっちが先に倒すか競争だな!』

「王子頑張って!!」


 瑠璃ィがウェカ王子に提案すると、フード軍団の残りの七機の魔ローダー達が円陣を作る様に二機のレヴェルを取り囲んだ。


『舐めたマネを……決闘形式ってかい?』

『いいじゃないか、一体一でこのリーダー格ぽいのを撃破してやろうよ』


 アヤカとブリットも覚悟を決めた。二機とも剣を構えた。


『よし、やるでっ!!』

『ボクも行くぞー!!』


 ウェカ王子のSRXと瑠璃ィのSRV2ルネッサは同時に二機のレヴェルに斬りかかった。

 ザシュッ!!

 カーーーン、ザギュッ!!

 四機の決闘は、居合の様にいづれも一瞬で決着が付いた。ウェカ王子も瑠璃ィもそれぞれアヤカとブリットの剣をひらりとかわし、敵の懐に忍び込むとそれぞれが同時に敵魔呂に致命傷の斬撃を与えた。


『…………スピネルさま申し訳……あり、ませ』

『サッワさま……もう一度お会いした……』


 ドーーンドドーーン!!

 二機の魔ローダーレヴェルはそれぞれ同時に倒れながら爆散した。


『王子、ホンマに強かってんなあ……ウチてっきり頭が痛い取り柄が無い子やとばかりに』

『お前までメアと同じ事言うなっ!!』

「お、王子……でもこれでもう私達の戦闘は終わりなんですよね!? 王子が無事で本当に良かったです……ウワーーン」


 メアは一機逃げられたが、全ての敵を倒した事で安心して感極まって泣き始めた。彼女なりにウェカ王子の事を心配し続けていたのだった。


「め、メア……泣くなよーー、今回は付いて来てくれてありがとうなっ!」

「王子が無理やり連れて来たんです~~」

「そうだっけ?」


 なおも泣き続けるメアの頭をウェカ王子はぽんぽん撫で続けた。



「ご報告! 東側からリュフミュラン王率いる二千の兵が救援の為に殺到しております!!」

「おおお!!」

「西のユティトレッド軍に続いて東のリュフミュラン軍までもが!」

「よし残敵を掃討しろっ!!」


 猫呼が新たな避難場所というか、もはや残敵を掃討する側の本陣としている女王仮宮殿のいつもの会議室には次々に良い報告が上がって来始めた。


「ひっお父様がっ!? 早く女優さん帽子とサングラスよ、フゥーちゃんサングラスは何処? あれ、フゥーちゃんがいつのまにかいませんわ」


 七華リュフミュラン王女が父王の来訪に慌ててフゥーを呼ぶが、フゥーはふらふらと街を彷徨っていた。しかししばらくして無事に皆の元に帰っては来たが、魂の抜け殻の様になっていた。


「七華ちゃんって本当にリュフミュラン王女だったんだな。下手にセクハラとかしなくて良かったぜっ、国際問題になる所だった……」

「もしかして狙ってたんですか?」


 自称美人秘書のメガネがじとっとした目で有未レナードを見た。その間も猫呼は兄との再会など色々な事が急に起こってまだまだ呆然としていた。その横ではシャルがずっと猫呼を見ている。


「……レナード様……あの……」


 と、そこにニィルがようやく帰還して来た。彼も兵達を指揮して必死に戦っていたのだった。


「あら……ニィル無事だったのね!」


 ようやく猫呼が少し明るい顔をし始めた。しかし逆にニィルは恐ろしく暗い顔をしている。


「何だよニィル君、暗い顔してんじゃねーよ。所でアルベルトのヤツしらんか?」

「それが……ご報告が」

「何だよ怖いな、早く言ってくれよ」


 そこで流石にレナードも猫呼も異変を察知した。


「……魔戦車部隊壊滅……指揮官の為嘉アルベルト様……壮絶な御最期を遂げられたと報告が」


 一瞬その場に居た全員が言葉を失ってシーンとなった。


「ハハハ、無い無い。アイツに限っていきなりこんな事で死んだりはしない」

「……そうよね!?」

「間違いでしょう」


 ニィルは人目もはばからず嗚咽して泣き始めた。しかし泣きながらも必死に必要事項を伝えた。


「いち早く魔戦車を消火して生存者が居ないか救助に当たりましたが、燃え残ったご遺体の一部と衣服の一部からアルベルト様だと、緊急ハッチから脱出された同搭乗者からも泣きながらアルベルトさまで間違い無いと……」

「嘘だーーーーーー!! そんな訳ねえ!! 絶対に間違いだっ!!」


 いつもいい加減で真面目になる事が無い有未レナードが半狂乱で泣き叫び出した。


「これが……ご遺体の中心辺りに……」


 ニィルが熱でぐにゃりと曲がり、宝石が取れて台座だけとなった指輪らしき物を震えながらレナード公に渡した。


「あ、あ、あああああああああ!?」


 有未レナードは膝から崩れ落ちて指輪を握り締めて泣き続けた。

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