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破談と破壊


 ガタンガタンガタンガタガタガタガタ……


「?」

「何?」


 手と手が触れ合いそうになった瞬間、猫呼クラウディアとエリゼ玻璃音女王が不審な音に振り返った。


『どりゃああああああああああああああ!!』


 突然何者かの強い力によって一番後ろに立っていた、シルビァの魔ローダーレヴェルが後ろに引っ張られる。


『何だ貴様はっ』


 シルビァも達人であるので、一瞬で体勢を立て直しレヴェルの剣を構えると、突然現れた魔ローダーに斬りかかろうとするが、腕を引っ張った謎の魔ローダーも手練れなのか、軽く剣を受け流しすぐさまバサッと袈裟斬りにシルビァのレヴェルを切り捨てた。


『女王さ』


 ドゴォーーーーーン!!

 あっさりと爆散するシルビァのレヴェル。これで四機いたメドース・リガリァ側の魔ローダーは三機となった。


『何だ? 何事だ??』


 アヤカが爆発音に慌てて振り返ると、後ろにはすっかり女王二人の握手に気を取られている内に、複数の魔ローダー達が集結していた。


『間に合ったでーーーーー!!!』


 瑠璃ィキャナリーが意気揚々と叫んだが、アルベルトの死には間に合わなかった上に、今友好を育もうとしていた二人の女王の間をもぶち壊す最悪のタイミングだった……


「後ろから斬るのは卑怯だし、女王陛下の側に魔呂が倒れこんだら危ないからナ!!」

「王子凄いです!! 王子ってお金があって家柄が良いだけで顔はまあ中途半端な知能がアレな痛い王子なのだと思い込んでいましたが、魔ローダーの操縦が凄く強かったんですね!? 褒めれる部分がわずか一つだけでもあって良かったです、キャーー好きっ」


 メアは操縦席の後ろから、今シルビァの魔呂を切り捨てた直後のウェカ王子の肩に抱き着く。


「おい、今なんつった?? てか邪魔だから抱き着くなよ……」


 そう、普段のほほんとしてはいるが、実はウェカ王子はのび○の射撃の腕的に魔ローダーの操縦が巧かった。そこに現れたのは、魔法通信手段が断たれた中、馬や怪鳥や魔輪で複数の者が同時にユティトレッド魔導王国に危機を伝え、それを聞いて救援に来たウェカ王子の試作型魔呂のSRXと、瑠璃ィキャナリーのSRV2ルネッサ、さらには部下のフード軍団が乗り換えたジェイドにホーネットそして現行量産機のSRVと、合計十二機にも膨れ上がったラ・マッロカンプの魔ローダー部隊と随伴する二千名の兵士達だった。


「何よ何なのよ? 何処の部隊なの!?」

「どうしたのですか?? 何の混乱なのですか??」


 猫呼とエリゼ玻璃音女王は一瞬の混乱に状況が飲み込めずに揃ってあたふたする。


『戦闘員、子供猫耳と周囲の者全員今すぐ斬れ!!』

『スピネル様、女王陛下の回収をっ!!』


 残されたアヤカとブリットは女王の身を守る為、慌てて突如現れた魔ローダーの大部隊に向き合った。しばらく一瞬動かなかったスピネルだが、カッと正気を取り戻すと暴れようとするエリゼ玻璃音女王を魔呂の巨大な掌でガッと掴み取り、強引に開いたままのハッチから彼女を押し込み、すぐさまハッチを閉じた。


「スピネル、何をするのですか!? あともう少しで、あともう少しで友好が、メド国の安堵が保障されようとしていたのです!! なんという事ですか、早く私をあそこに戻しなさい!!」


 エリゼ女王はスピネルの頭や肩を子供の様にポカポカと叩きまくった。しかしその声は泣いていた。


「……我が妹ながら賢い妹です。あの者は増援部隊が来るのをひたすら待って時間を稼ぎに稼ぎまくっていたのです、最初から友好など育むつもりなど無かったのですよ。乗せられたのです。女王陛下、こうなった以上、私のお役目は貴方をメド国まで安全にお連れする事。もはや和平はお諦め下さい……」


 いつしかポカポカ叩く事を止めたエリゼ玻璃音女王はスピネルの服を掴みながら泣き続けた。


「帰る国がまだあれば良いのですが」


 女王は絞り出す様な声でぽつりと言った。


「死ねーーーーーー!!」

「キャーーーなんか来たーーーーーー!?」


 鉄のシェルタールーム跡を取り囲む様に立っていた数百人の戦闘員達が、魔ローダー戦闘に専念するアヤカ達の代わりに一斉に猫呼やレナード達に襲い掛かって来て、七華が叫び声を上げた。


「させるかあああ―――――!!」


 ザシュッ!! ザギュッ!!

 その時突然大鎌を持ったメイドさんが七華の前にジャンプして飛んで来て、襲い掛かるメド国戦闘員数人を一瞬で両断してしまう。鮮血が噴き出して七華の目が丸くなった。さらに道路工事現場で働いていた大男が両腕に魔法のシールドを展開して、次々に拳でメド国戦闘員達を殴り飛ばして行く。他にも次々と謎の猛者達が猫呼を守る様にわらわらと無数に現れた。


「ヒッ今度は何なのよっ」

「猫呼さま、遅れて申し訳ありません。散っていた仲間達を参集するのに手間取りました。シャル、良く一人で猫呼さまを守ったな」


 大鎌を背中に収めたライラが跪いて猫呼に謝罪した。しかし猫呼の心中は複雑なままでいつもの大口は出て来なかった。


「猫呼様?」

「おい、猫呼ちゃんしっかりしろよ、この何ちゃんか知らんがメイドさんに従って避難しようぜ」


 レナードが言っても猫呼は動かなかった。


「酷い……あと少し、あと少しであの女王の子と分かり合えたのに……こんな事って無いよ……うっうっ……お兄様……ううっ」


 いつもの猫呼とまるで違い、普通の女の子の様に両手で顔を覆うと力なくへたり込んで泣き続けた。言っている事はエリゼ玻璃音と同じだった。確かに一瞬二人は心が通じ合っていたのだった。


「猫の子さん……さあここは危険ですわ。まだ心の整理はつかないと思うけど、今は魔呂達から離れて避難しましょう」

「猫呼さま……そんなに泣かないでくれよ、俺も悲しくなるよ」


 七華とシャルが泣きじゃくる猫呼に二人がかりで慰めた。


「猫呼ちゃんごめんよ。鎌のメイドさん協力してくれ」


 国主の有未レナードはメガネとライラに協力させて泣き続ける猫呼クラウディアを背中におぶると、そのまま十人程のライラ達闇の冒険者ギルドの猛者達に護衛させながら、一刻も早く魔ローダー達の戦闘から離れるべく、壊れた石の廊下を走って行った。その周囲でも猫呼の部下の猛者達がメドース・リガリァの戦闘員達と激しい戦いを繰り広げていた。その間を縫って誰も気付かぬ内、フゥーはデスペラードに向けて走り出した。

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