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妹猫呼クラウディアと兄猫名の再会と七華王女


「開けなさい!!」

「い、いえ……それだけはご容赦を」

「早く開けなさい!!」


 パシッ!!

 突然エリゼ玻璃音女王が、か弱い手でスピネルの頬を後ろからはたいた。


「つべこべ言わず開けなさい!! やはり私はお飾りの女王なのでしょうか? こんな簡単な命令すら聞いてもらえないのですか? でもこの命令だけは取り下げるつもりはありませんよ、さあ、私の言う事を聞くのです!!」


 スピネルが後ろに完全に振り返ると何故かエリゼ玻璃音女王は大粒の涙を流していた。


「……申し訳ありません敬愛する我が女王、ご命令に従いましょう」

「顔を良く見たい、操縦席をなるべく低くするのです」

「ハッ」


 観念したスピネルは、決心して魔呂を跪かせて操縦席を低い位置にする。


(?)


 振り上げられていた剣が降ろされ、身を屈め始める巨大な魔ローダーに戸惑う猫呼一行。


『スピネルさま何を!?』

『危険です!!』

『お止めを』


 バシャッ

 美女たちが警告する中、猫呼の眼前で突然ハッチが開かれた。


「い、一体何のつもりよ……捕らえてとって食うつもり……え?」


 内心恐怖で立ち上がったまま動けない猫呼は、目の前で開いたハッチの中に座る青年の姿を見て言葉を失った。


「雪乃フルエレ女王よ貴方に一度お会いしてお話ししたかったのです……」

「貴方はスピナさん……? い、いえスピナさんってやはり猫名お兄様?」

「え?」

「え?」


 猫呼とエリゼ女王がほぼ同時に言葉を発して聞き取れなくて戸惑う。しかし猫呼はエリゼ女王を無視した。


「そこに座っているのは七華のお付き騎士のスピナさん、いえ国が円満に滅んだ時に何処かに消えてしまった猫名お兄様ね……一体そこで何をしているの? 何故メドース・リガリァの魔ローダーに乗っているの??」

(猫呼さまのお兄さんだって??)


 真横に居たシャル始め、その場にいる人間全員が突然の事でよく話が見えなくて戸惑った。


「その様な男は知らない。女王陛下、もはや恐怖のあまり雪乃フルエレは錯乱しております。まともな話し合いなど不可能。ひと思いにあの世に送ってあげましょう」

(例え偽物でも影武者でも自ら雪乃フルエレ女王と自称したのが運の尽きだ。ここで女王として皆の前で死んでもらうしかあるまい……)


 スピネルこと猫名も完全に猫呼の事を無視しようとした。


「お待ちなさい、何か兄妹だと言っていますよね」

「何かの間違いでしょう」


「猫名兄さん、兄さんは誤解しているわ! 猫弐矢(ねこにゃ)お兄様もお父様もお母さまも人々も幸せに暮らしています! 一度でいいから帰って来て、その目で実際を見て欲しいの!! そうしたらわだかまりも解けるから……ね?」


 説得する為、遂に猫呼はヴェール帽子を脱ぎ捨てて顔を晒した。


(猫な? 猫にゃ?? 猫呼ちゃん何言ってるんだ??)


 帽子を脱いだ猫呼はいつもの達観し過ぎた様子と違って必死に訴える。レナードもシャルもネコナやネコニャという言葉の乱舞に戸惑ったが、これが本当の猫呼の姿なのだなと思った。 


「………………何を言う!! 私が居ない間に勝手に神聖連邦帝国への恭順を決めておき、何が人々も幸せに暮らしているだっ! そんな偽りの平和など、腑抜けになったクラウディア王国になどもはや用は無い、今はもうそんな話どうでも良いわっ!! あっ」


 しかし妹、猫呼の意に沿わない言葉に突然キレた、スピネルこと猫名兄さんは大声で反論して思わずハッとしてしまい、その様子をエリゼ女王は見逃さずにいた。


「スピネル……貴方?」

「やっぱりそんな風にキレやすい性格……すましていても猫名兄さんなのね……」


 しかしスピネルはやり取りを無視して再びゆっくりとデスペラード改を立ち上がらせると、巨大な剣を構えた。


「問答無用、死ね」

「何を、何をするのですスピネル、妹さんなのですね? 話し合いをなさい」


 エリゼ女王は必死にスピネルの肩を揺するが、もはや彼女の言葉に一切耳を貸そうとしなくなった。


「……何て事……猫名兄さん、私が猫呼だと分かったのに、殺すの?」


 もはや猫呼もシャルやレナード達も観念してただ無言で振り下ろされる剣を見つめるだけだった。


「お待ちなさいっ!! スピナ何をしているのですか?? わたくし、七華リュフミュラン第一王女が命令します、スピナよ剣を降ろしなさい!!」


 デスペラード改の巨大な剣が最大限振り上げられた直後、突然その場に七華の声が響いた。遂にその場に現れた七華王女とフゥーだった。そしてその場に居た七華以外の意外な事に巨大な剣の動きはその声でピタッと止まった。


(七華……七華さまだと……何故此処に? 何故王女が……)


「あ、痛い、いたたた、離しなさいコラッ、セクハラよセクハラ罪で逮捕ですわよっ!」

「スピネルさま……痛い……私、味方なのに」


 しかしその場に展開していた戦闘員にすぐさま拘束される七華とフゥーだった。


「私はメドース・リガリァ女王、エリゼ玻璃音です、その女性を今すぐ解放なさい! 命令です!!」

「な?」


 突然ハッチから身を乗り出す様にしてエリゼ女王が叫んだ。その言葉に仕方なく戦闘員達が七華とフゥーを解放する。


「痛いですわねっ。スピナッ、何をしているのです?? 早く降りてらっしゃい、そして跪きなさい。突然勝手に姿を消して今まで何処に行って何をしていたのですか? 悪い子ですわね、せっかんして差し上げましょう!!」


 子供を叱る様に手を振り上げる七華。妹の猫呼に続き、突然の七華の登場に混乱するスピネルことスピナこと猫名だった。


「そ、そんな男など知らない」


 スピネルはゆっくりと首を振るが、エリゼ女王からも明らかにスピネルの様子はこれまでよりもおかしくなった。


「スピナ……この男はね、長い事私の事が好きだったのに、何も言えずただひたすら無言で私の側に仕えるだけだった情けない男なのよ……そうでしょう?」


 七華は上を見上げて大声で叫んだ。皆何も言わずシーンと静まりかえっている。


「お兄様七華の事が?」

「そ、そんな……男など知らない」


 スピネルは力なく首を振った。


「……三毛猫……何故あんな回りくどいやり方をしたの? 何故直接、好きだの一言くらいが言えないの? 本当に情けない男ですわね」


 いつしか七華王女も涙を流していた。


「……違う」


 スピネルは一言小さくつぶやくと、再びデスペラード改の巨大な剣を振り上げた。


「止めなさいスピネル、一度引き下がりなさい!!」

「死ね……七華様も猫呼も……死ぬが良い!!」


 今度こそ躊躇無く巨大な剣を七華に振り下げようとした。


「きゃっ狂ったの!?」

「七華さん」

「兄さん!?」


 思わず七華は腕で顔を隠し、フゥーは七華を守ろうとする。周囲の戦闘員達は巻き込まれまいとその場を離れた。


「もうお止めなさい!!」


 しかし巨大な剣が振り降ろされようとする瞬間、今度はエリゼ玻璃音女王がスピネルにタックルして、スピネルは大きな身体で力なく操縦席の床にゴロンと転がり落ちた。彼は明らかに魂が抜けた様にもともと力が入って居なかった。


「同盟雪乃フルエレ女王よ、私メドース・リガリァ女王エリゼ玻璃音から提案があります! 聞いて下さい!!」


 操縦席の床に転がって動かないスピネルを無視し、エリゼ女王は突然大声で叫んだ。

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