表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

406/1099

メドース・リガリァ国への総攻撃開始

 ―トリッシュ城。朝4時。


「トリッシュ王よ、お休みの所早朝からまことに申し訳無い。これより五時からのメドース・リガリァ国総攻撃に出撃する為にお別れの挨拶にござる」


 律儀に早朝四時にきっちり身支度をして起きてくれていたトリッシュ王に対して、既に三時から準備をしていた砂緒が深々と頭を下げた。その後ろにはイェラや衣図ライグ、メランも居た。


「うむ、何のお役にも立てず申し訳無い。そなた達の勝利を願っておりますぞ。後ろの守りはお任せ下され」


 トリッシュ王も深々と頭を下げた。しかし内心の半分程は同盟軍がやっと去ってくれてヤレヤレと言った所であった。


「では諸準備がありますので、これでっ!」


 砂緒はいつもの給仕服のまま、シュタッと格好よく片手を上げると、スタスタと玉座の間を離れて行った。



 ―ソーナサ・ガ国、同じ朝四時数分頃。


「こらっ起きろY子殿、同じ事を繰り返すな! 五時キッカリに両面同時総攻撃だぞ! もう四時前には砂緒から魔法秘匿通信があったからな!」


 前と同じ様にセレネがY子のテントの入り口をバンバン蹴りまくる。


「あ~~眠いわ~~~何よも~~いじわる~~~」


 今度は一応いつものY子の姿になった状態で、また兜の中に手を突っ込んでよろよろと出て来た。


「よし、合格だな、早速ブリーフィングをして五時には出撃するからな! それでもう終わりだ」

「あいあい」


 セレネとY子こと雪乃フルエレ女王の後ろには無言でカレンが付いて来ていた。


(サッワくん……今頃どうしてるの??)



 ―メドース・リガリァ王国。


「いよいよ同盟軍の連中が東と西双方から同時に攻めて来るようだ。スピネルからの吉報を待って、出来る限り同盟軍を食い止めようぞ」


 作戦地図を前に貴嶋がサッワやココナツヒメ以下、居並ぶ諸将に重い口調で言った。


「お任せ下さい貴嶋さま、連中に対して超長距離攻撃が効かない場合の最後の戦い方があります!」

「うふふ、出来上がった魔砲弾二十四発、使い切って敵を撃滅してみせますわ」


 ココナツヒメも不敵に笑った。最後の戦い方と言っても特に画期的という訳でも無く、普通の戦い方なのだが、それでもシュミレーションでは同盟軍の魔ローダーの半数は倒せる想定だ。


「よし、頼むぞ行け!!」

「ハッ」

「は~~い」


 サッワとココナツヒメは指令室を後にした。しばらくすると痩せた顔をさらに暗くしたクレウが廊下に立ち尽くしていた。しかしココナツヒメの顔を観ると、さっと頭を下げた。


「あら、出て行かなかったの?」

「もはや私に同盟に帰る場所はありません……」

「じゃあ一緒に戦ってくれるの?」


 ココナツヒメは多少意地悪い顔をして聞いた。


「そ、それもお許し下さい。裏切者となろうとも、やはりフルエレ様に弓引く事は出来ません」


 さらにクレウは深々と頭を下げる。


「なら指を咥えて留守番しててちょうだいな、あ、でもお夕食とお掃除とお洗濯をお願いね!」

「はい……それならば」


 クレウは胸に手を当てた。それを見る事も無く二人はその場を後にする。


「ココナツヒメさま変わりましたか? 最初貴方にお会いした時は、気に入らない人間はザクッと突然刺してしまわれる様な雰囲気がありましたが。それに近付くと感じていた冷気も今はありませんね」


 久しぶりにサッワはココナツヒメのシールスーの胸をまじまじと見ながら言った。


「あれ……キャラ作りの為にわざと冷気出してたのよ……本当は冷え性なの。もうサッワちゃんは家族だからそんな演出要らないでしょ?」

「ええっもちろんです! うふふ」


 サッワは歩きながらにこっと笑った。そしてサッワは長距離魔砲ライフルを持ったレヴェルに、ココナツヒメは一人でル・ワンに乗り込んだ。その後ろでは生き残りのシャクシュカ隊Ⅱの美女達もレヴェルに乗り込んで行った。



 ―再びソーナサ・ガ国、五時直前。

 セレネとY子は同盟軍の旗機、日蝕白蛇輪に乗り込んでいた。その背後には十機のSRV部隊が控え、そのさらに後ろには魔戦車部隊と一万の歩兵部隊が並んでいる。


「セレネどうぞ」

「よし、Y子良いな、魔法剣展開!!」


 セレネが操縦桿に氷魔法を伝えると、魔法剣に霜が張り付き、やがて巨大な氷の刃が形成された。


(サッワくん……これから私達戦うの?)

「砂緒の合図で東西同時侵攻開始だ!」

「ええ」


 Y子の操縦席の後ろではカレンが固唾を飲んで見守っていた。



 ―トリッシュ国周辺の荒野。五時直前。


『えーー宴もたけなわでは御座いますが、そろそろメドース・リガリァ総攻撃の時間となりました。お集まりの皆さまには御足もとの悪いなか装備をして行軍して頂き感謝しきりで御座います。魔呂の手に握られているという変な立場では御座いますが、では出陣の挨拶としたいと思います。雪乃フルエレ女王陛下の北部海峡列国同盟軍、出陣!!』


 巨大な魔ローダール・ツーの黒い手に握られた状態の砂緒が魔法外部スピーカーを通してトリッシュ国郊外から全軍に出陣を命じ、ル・ツーのメランと兎幸が先頭で行進を開始し、続いて十七機のSRV部隊や五十二両の魔戦車部隊、衣図ライグやイェラが率いる一万四千の歩兵各部隊がそれに続いた。


「出陣だ!」

「よし、出陣!!」

「行くわよ!! 兎幸ちゃん!」

「あいあい」


「行け~~~~!!」


 ル・ツーの手に握られた砂緒が叫ぶと、メランの操縦するル・ツーが早足で突き進む。


「兎幸ちゃん、魔ローン二機上空展開、残りを待機してあらゆる事態に想定して!」

「あいあいっ」


 兎幸の合図で魔ローン二機が展開され、上空で敵からの超長距離魔砲攻撃の監視を開始した。



『ココナツヒメさま、敵が堀に掛かった所で、東西交互に砲撃を開始します!』

『ええ、そうしましょう!!』


 サッワは射撃する為に作られた高台で魔砲ライフルを構え、魔法スコープを覗き込んだ。ココナツヒメは敵が進軍と同時に結界くんを設置している為に瞬間移動斬り込みが出来ない事に歯ぎしりした。だが、敵にある程度接近を許した時点で、残りのレヴェルと共に決死の斬り込みは行う予定ではあった。


☆評価とブックマークお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ