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ウェカ王子と謎の華麗なおとぎの城……


 ―少し時間を遡る。バックマウンテン山中。


「あちこち探したのですが、北に向かったという敵の足取りがぱったりと消えてしまって。偽装されているのか最初からそんな物はいなかったのか……」


 ラ・マッロカンプ王国のウェカ王子の客分、瑠璃ィキャナリーのさらにその部下のフード軍団の男がルート探しから戻って来た。


「あのぅ……王子言いたくは無いのですが私達遭難してしまったんじゃ……」


 セクシーなメイドさんのメアが、最近男らしくなって来たウェカ王子のプライドを傷付け無い様に慎重に言った。


「そ、そんな訳無いだろーう」


 王子も心なしか自信喪失したのか元気が無かった。


「あのう……敵の足取りは発見出来なかったのですが、なんだか北の方の山あいのすぐ下に見た事も無い様な桃源郷の様な見事なお城を発見したのですが……」


 フード軍団の男が恐る恐る言った。


「ナヌッ!? 桃源郷だと?」


 元気が無かったウェカ王子の目が輝いた。


「王子、もう敵の事も戦争の事も忘れてその桃源郷とやらを探検せえへんか?」


 瑠璃ィが他人事の様に言っているが、これだけ迷いに迷った理由の大半は、恐ろしいレベルの方向オンチである瑠璃ィとフード軍団の責任が多分にあった。


「それが良いです、私も桃源郷のお城が見たいです!!」


 メアも戦闘にならずに済む様に必死に誘導した。


「じゃ、ちょっくらそのよく分からない城に向かってみるか? もしかしたら敵が築いた砦かも分からないしな!」


 皆が「んな訳あるか!」と思ったが、まとまりかけた話をややこしくしない為に誰も突っ込まなかった。



 しばらくして今度はもう迷う事無く、皆は北の山あいのすぐ下の地にある見事な城を眼下に収めた。


「ホントだ……なんだかこじんまりとした平地にヤケに華麗な城だな……」

「さあ行きましょ行きましょ!!」


 メアがウェカ王子の操縦席の後ろから、はやし立てた。


「よーーし、突撃いいいいいい!!」

「うりゃーーーーーーーー」


 王子の掛け声に瑠璃ィが笑顔で続いた。ジェイドとホーネット二機の魔ローダーの後ろにさらにSRV三機が続き、兵力二千がどどどっと山を駆け下りた。

 ドンドン!!

 突然王子のジェイドの装甲に魔戦車の砲撃が当たった。


「敵だ! 蹴散らせうりゃーーーーー!!」


 瑠璃ィが張り切ったが、そこによろよろと一機のSRVが走って来た。


『貴様達は何者だ! 何で山からこんな所にジェイドとホーネットとSRVが現れる!?』


 魔法外部スピーカーで警告が発せられる。あからさまに味方陣営だった……


「王子、取り敢えず謝りましょう……」

「え、何処ここ??」


『まずはハッチを開け、所属を告げられよ!!』


「うわ、めっちゃ怒られてる……」


 ウェカ王子も瑠璃ィも渋々とハッチを開けた……



 ―華麗な城の中。


「え、此処ってあのユティトレッド魔導王国の王城なのですか!? どおりで華麗な……私おとぎの国のお城かと思いました!!」

「確かに現実離れしてるわ~~装飾がバシバシやな」


 メアと瑠璃ィがティーカップを持ちながら、豪華な装飾が施された部屋の壁や天井のあちこちをじろじろ見ながら言った。


「はい、この華麗な城を人は雲に立つ薔薇の城とか薔薇城と呼びますわ」


 接待してくれているなかなか美人の妙齢の女性が自慢げに言った。


「ほーんと、お城だけじゃ無くて、お城の周りの街並みも雰囲気が凄い良い! まさにロマンチックって感じ!! 路面念車が走り回るモダンなニナルティナとも違う雰囲気がするの。行った事無いけど。」


 メアが手を組んで目を輝かせた。


「はあ? 褒め過ぎだろう。あの、あの有名なラ・マッロカンプのウェカ王子様が来てやったのに、王様は挨拶もしないのかっ!?」


 ウェカ王子が怒りながら言ったが、突然義経のヒヨドリ越えの逆落としの様に魔呂で突撃して来た無礼者にも関わらず、不問に付してくれた王国に対して全く無礼な態度であり、事前調整も無しにプライドが高い同盟の実質的指導者の王様が会ってくれないのも当然だった。


「あの肖像画の綺麗な女性は?」

「ああ、あの方は悲運のセレン・ディピティー王女の肖像画ですわ……」

「ヘェー?」


 メアは歴史の事は知らなかったので適当に流した。


「まあまあ怒らんとき。ここってあの生き返った司会っ子の国やんなあ? あの子がツーンとしててプライドが高いのもなんとなくわかるわ~でも肖像画の子とも少し似てるんちゃうん、知らんけど」

「瑠璃ィさん瑠璃ィさんダメですよっ」


 王子をフォローしてるつもりが、しっかり悪口を言い出した瑠璃ィをメアが必死に止める。


「おほほ、この国は神秘のヴェールに包まれてて、偉そうにしてるだの恐れられてるだのと言われているのはなんとなく自覚してますハイ。そこでどうですか? 皆さん何やら山の中をさ迷っていらしたそうで、少し骨休めをして行かれては?? そうですね、今この国には操縦者がいなくて動かせない魔ローダーが沢山あるので見物してみてはどうでしょう?」


 美人ながら片眼鏡を掛けたなにやらお高くとまったご婦人にも見えるが、接待してくれた女性は非常に親しみ深く優しい人間だった。


「そやなあ、ウチら偉い大作戦を決行するつもりで山の中を行ったり来たりしてて、結局お隣さんの国に来てたんやなあ、でもウチ最初はユティトレッド魔導王国にも来るつもりやったから丁度ええわ」

「あ、じゃあ決まりですね。王子、此処で少し休憩しましょうよ! ね?」


 王子に戦闘をして欲しく無いメアは必死に王子の機嫌を取った。しかし王子は自分の立てた奇策でみんなをギャフンと言わせるつもりだった事が、こんな結果になって意気消沈していた。


「ほーうぅ? じゃあどんな魔呂があるんだよ?」

「そうですね~~私魔呂には詳しく無いのですが、色々な過去の試作機に加えてSRVの次期量産機試験型のSRXというのがあるとか。あとセレネ王女のSRV2ルネッサの修理が終わって保管してますね。女性型のスリムな高機動型だとか……」

「よし、そこまで言うならちょっくら見てやるか、瑠璃ィ行くぞ!」

「よっしゃ~~そうこなくっちゃやで」


 皆で魔ローダー駐機場に移動した。そこには色々な魔ローダーが十五機程林立していた。


「おおお、いっぱいあるなあ、あのモダンな奴が次期量産型のSRXとか言うヤツか?」

「確かに少しレトロな雰囲気のSRVに比べたら、なんとなく近未来的な形してるわ」

「うふふ、なんでもスリムなのにスピードはSRVよりも速いらしいです!」


 メアは魔ローダーの事がよく分からなくて少し寂しかったが、王子の気が紛れて良かったと思った。


「あのオレンジ色の派手な女性型のヤツが司会っ子のやな?」

「ええ、旗機としてこの国の威厳を表す意匠が施されていますのよ!」

「そうだ、折角だから魔呂の操縦者が足りないのだったら、ちょっくら試運転してやるか?」

「え?」


 接待してくれた女性が戸惑う。


「ああ、それええなあ、ウチこのオレンジ色に乗るわ!」

「あ、あ、それは王女さまの」

「じゃーーボクはSRXとか言う奴に乗ってやるかー、よし瑠璃ィ、本気で模擬戦ダッ!」

「お、それええなあ、本気で行くで~~~」

「あ、あの……それは!?」


 接待の女性を無視して王子と瑠璃ィが魔呂に乗り込むと、それを合図に家来のフード軍団も笑顔で勝手に好きな機体に乗り始めた。


「ひーーーっやっぱり野蛮人だった!?」


 接待してくれた女性は冷や汗を掻きながら、王様に報告に走った。


「あーあ、せっかく優しくしてくれてたのに……」


 メアは本当に心から悪いと思った。

挿絵(By みてみん)

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