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前世の前世Ⅲ セレン・ディピティー王女 下

画面の前でセレネはワンテンポ遅れて返答した。


「総攻撃の件はあたしもそれで良いと思う。早朝にサクッと攻撃開始しようか。でも急に歴史の勉強か? やっぱりお前めちゃめちゃ真面目になったんだな。戦術を研究するだけじゃ物足りず、敵国の歴史まで勉強し始めたか?」

「まーそんな所です」


 砂緒は頭を掻いた。


「でもお前はバカだから仕方ないが……」

「バカじゃ無いです」

「ウンウンそうだなバカじゃないな。でもウェキ玻璃音と言えばセブンリーフじゃ小さな子供でも知ってる偉人の一人だぞ……」

「そうなんですか? どんな人なんですか?」


 砂緒は自分の前世の前世がそんな偉人だと知って驚く。


「何でも無責任大王と言われてバンドを組んでたとか、八十八まで生きて長寿だったとか」

「それくらいなら知ってますぞ!」


 砂緒は少しふんぞり返った。


「んーーじゃあ、こんなんは知ってるか? ウェキ玻璃音大王はセブンリーファ後川流域の中部小国群を纏め上げた後、域外の帝国と通行する為の道を開ける為、旧ニナルティナを中心とする北部列国、今で言えば北部海峡列国同盟の地とも友好を育もうとして、三十越えてからあたしの国から政略結婚に王女を嫁にもらったらしいぞ。何でも若い頃一緒に冒険していたハーレム要員の女達は涙にくれたそうだ。それだけ平和の維持を考えていたのだろうな」


 砂緒は思いがけずセレネのユティトレッド魔導王国から嫁いだと聞いてびっくりした。


「エーー、そんな重要な事早く教えて下さいよ。なんという王女なのですか? それならセレネとメド国王家とは親戚という事になるんじゃないんですか? 攻め込んじゃって良いのでしょうか……」


 砂緒は自分がそのウェキ玻璃音大王自身という過去世を隠して聞き続けた。


「大王が亡くなる百年以上前の事だからなあ……名前だけしか知らんがセレン・ディピティーというそれは美しい王女だったらしい。まあ、あたしの方が美人かなあ~!?」

「セレン? でも確かに……多分セレネの方が美しいでしょう」

「お前は拍子抜けするなあ……普通の男は美しいとか口が裂けても言わんぞ」

「セレネは美しいので美しい物を美しいと言って何が悪いのでしょうか……」

「はいはい分かった分かった。で、今のメド国が親戚かどうかだが、セレン王女は政略結婚ながら嫁いですぐに大王とそれは仲睦まじくなり愛娘が直ぐに生まれたらしいが……」

「じゃ、なおさらダメでしょ!?」


 砂緒は画面いっぱいに迫って言った。


「最後まで聞け! だがある日大王が少しの間だけ留守をしていた時に、大王の治世の反対派によって王女も娘も惨殺されてしまったらしい……それ以降大王は一生独身を通して。それでユティトレッドとメド国の縁は切れてしまった。でも大体セブンリーフ中の王家なんてどこかで婚姻していたり親戚だったりする物だ……どうした?」


 セレネは普段見ない砂緒の只ならぬ脱力した表情を見て心配した。砂緒は内心、現在のエリゼ玻璃音女王と自分の過去世ウェキ玻璃音大王とは、養子だとかもしくは織田信長と織田有楽斎の子孫の様な感じで、実は直系的な子孫では無いかもしれないと少し安堵しつつも、惨殺された妻子というのが衝撃の情報で、すぐには上手く考えが纏まらなかった。


「いえーー何でも……無い……ですー」

「いや、あるだろ変だぞ凄く。声小さいぞ」


 しかし元気の無かった砂緒は一転、突然がばっと画面に張り付いた。


「セレネさんお腹冷えてて痛かったりしませんか?」

「しないわ、何だよそれ」

「あと変な虫とか飛んでませんか? 刺されない様にして下さい」

「子供じゃねーわ」

「変な毒物とか気軽に飲んじゃダメですよ!」

「飲まんわ!」

「あとあと寝る時は警備兵を百人くらい付けて下さい」

「どした!?」

「い、いえ特に深い理由は無いのですが、セレネさんが心配なんです……」

「なら戦闘を心配しろよ……」


「はいはい、もうその辺でいいでしょう、砂緒さんとセレネさんの二人きりの会話ってキリが無いわね。でも周囲に人がいるフォーマルな時のイチャイチャと二人きりだと思い込んでる時のイチャイチャ、微妙に違う事が分かったわ~~喫茶猫呼の先輩と後輩に戻っちゃうのかなあ」


 その時突然後ろからメランがひょいっと顔を出してペラペラしゃべり出した。


「あーーー魔法力をメランに借りてます」

(あっ……砂緒、魔法力無いの忘れてた……)


 セレネの顔がみるみる真っ赤に染まって行く。


「メ、メランさんそれでは明日早朝五時出陣だ! よ、よろしく頼む」

「美しい美しい、へへ」


 セレネは何事も無かった事にして赤面のまま力技で強引に話を纏めようとした。


「で、では切るぞ」

「砂緒さん取っちゃおうかな~~」

「な、何!?」


 セレネが叫んだ瞬間、メランは通信をぷちっと切った。


「な~~んて、砂緒さ」

「……今セレネととても重要な話をしていたんです。邪魔して欲しく無かった」


 砂緒はいつものふざけた調子と全く違って、ぼそっと一言呟くと力なく操縦席から去って行った。


「あ、ご、ごめんなさい……」


 てっきりいつもの様に笑いで返されると思っていたメランは、意気消沈した砂緒の様子に戸惑ってそれ以上何も言えずにただ見送った。

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