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前世の前世Ⅲ セレン・ディピティー王女 上

 ―メドース・リガリァ


「西側の防御についてはカヌッソヌ市を全面的に利用するしか無い。西側の最後の砦として城壁を強化致そう!」


 貴嶋がああでも無いこうでも無いと作戦指令室で討議を繰り返している最中に慌ただしく家臣が入って来た。


「貴嶋さま大変です! カヌッソヌ市が手切れを通告して来ました!」


 ソーナサ・ガ救援に向かったココナツヒメとサッワが失敗して戻って来てしばらく後の出来事だった。


「なにい!? 我らの衛星国として最も利益を享受しておったカヌッソヌがか!?」


 先程まで西側の最終防衛ラインについてカヌッソヌ市をアテにしていただけに、腰が砕けそうな程に脱力する。落ちぶれればこんな物であった。


「なんという事だ……これでは西側の防衛ラインが……一体何としますか貴嶋さま!?」

「なんとかする! だがその前にカヌッソヌ市の軍使の者を斬れ!!」


 貴嶋はビシッと指を指した。


「お、お待ちを外交儀礼に反します!」

「もう良い、よしっ斬れ!!」

「ハッ斬ります!!」


 止める家臣もいたが、貴嶋に命令された別の家臣が別室で控えていたカヌッソヌ市の軍使をあっさりとバッサリと斬り捨てた。


「よし、では早速カヌッソヌ市を爆撃だ! サッワに命令せよ」

「お待ちを、今は敵になびいても将来我が国が勝てばまた我が領土になります、無意味な攻撃はお止めになった方が……」

「そうであるか」


 貴嶋ももはやカヌッソヌを爆撃する余力すら無い事は分っていた。



 ―ソーナサ・ガ国


「吉報ですセレネ様、カヌッソヌ市から同盟参加の軍使が参りましたっ!」


 興奮で顔を赤らめた軍人がセレネの元に走って来た。


「よし、斬れ!!」


 セレネも貴嶋と同じくビシッと指を指した。


「は、はあ?」

「ダメでしょ! 味方になろうという国に何をするのだ!」

「カヌッソヌと言えばメド国の隣で大きな顔をしていた国ではないか! それが主が沈むと分かった途端に鼠の様に逃げ出すつもりか! 主と運命を共にせよ、そんな国は要らん、滅ぼす!!」

「うるさいわよ、この子はちょっと頭がイタい子だから無視してくれ! よしその使いには我とシャル王が会うと伝えよ」


 総司令官を頭が痛い子と言われ走って来た者は戸惑った。


「そういう話なら私も行きましょう!」


 Y子は軽く無視したが、コーディエも一緒に付いて来て、カヌッソヌ市は円満に同盟に加盟する事となった。



「だが、結局カヌッソヌ市自体はメド国の勢力圏内だから、我が軍がコマを進めようと思えば爆撃の危険に晒され結局戦闘になるのか……」

「でもカヌッソヌ市が攻撃に参加して来ないだけでも良しとしましょう」

「いやしかし騙し討ちの危険性もある。人質でも要求しようか……」


 セレネとY子が話す中にまたコーディエが割って入る。


「しかしこれで両面作戦決行の機が熟したと言えるでしょう。Y子殿セレネ総司令、東側本隊の砂緒殿に総攻撃開始の提案をして下さい」

「ワシもそう思います。いよいよですな」


 そこにシャル王も賛成した。もはやこれ以上時間を掛ける必要は無かった。


「………………そうか、じゃY子殿、蛇輪で魔法秘匿通信を頼む」

「何で我なのだ? 総司令官殿が行え!」


 セレネは女の子に囲まれてデレデレしている砂緒と、今は何となく話したく無かった。


「セレネ総司令! 魔法秘匿通信で砂緒様から話がしたいと着信が。一人で来て欲しいとの事です」

「む、噂をすれば影、いよいよ東側本隊も攻め入る気になったようですな!」

「はい、セレネいってらっしゃ~~い」


 Y子はシャル王の肩に手を置きながら手を振った。


「お前な……」


 等と言いながらもセレネは内心、砂緒から直々に指名された事を少し嬉しく思っていた。



 ―ソーナサ・ガ国、臨時魔ローダー駐機場、蛇輪操縦席。


「何だ砂緒恥ずかしいだろ! いちいち指名するなよ」


 魔法秘匿通信のモニターにはル・ツーの操縦席に一人座る砂緒の姿があった。


「いえ、先程は変な感じで通信が切れてしまったので……」

「まさかそれだけでわざわざ通信しているのじゃ無いだろうな?」


 通信する度にわざわざ魔ローダーに乗らなくとも、魔法通信機だけを切り離して設置すれば良いじゃないか! と思う方がいるかもしれないが、この新技術の顔画面付き魔法通信機を動かすには魔ローダーか魔戦車の中枢機関、魔ァンプリファイアの能力が必要であり、それだけで重量百Nキロを越えており、転戦を繰り返す場合には設置するよりもこうして魔呂に乗り込む方がてっとり早かった。


「いよいよ、両面総攻撃を決行しようかと思いましてね」

「おーこっちも同じだ。シンクロしたな」

「そりゃ相思相愛のセレネさんと私の事ですからねー」

「ほほう?」


 少し何時もの調子が戻って来た。


「そうですね、明日早朝にでもサクッと最後の総攻撃を開始しましょうか。と、その前に少し聞きたい事があるのですが、セレネさんメド国のウェキ玻璃音大王って知ってますか?」


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