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砂緒モテ期到来 カヌッソヌ市の反逆

「よし、工兵は結界くんの設置! 魔ローダーは西側の城壁を壊せ!! 魔導士は大型攻城魔法を撃ち続けろ!! 魔戦車は突入の準備!」


 コーディエは騎馬のまま立て続けに指示を出す。その指示に従って、シャル王やタカラ指令達がてきぱきと部隊を動かした。


「抵抗らしい抵抗がありませんな」


 シャル王は横に居るコーディエに語り掛けた。


「ですね、ソーナサ・ガにはそれ程の戦力は割かれていなかった様です。陥落は時間の問題でしょう」


 その直後だった。


「あれを見ろ!」

「あっちにも出ているぞ!」


 コーディエの近場の兵達が騒ぎ出した。


「何だ? どうした?」

「ハッ、城壁のあちこちから降伏の白旗らしき物が無数に」

「む?」


 言われてコーディエがよく見ると、確かに白旗らしき物や中には破けた白い布らしき物があちこちに掲げられていた。その上よく考えれば城からの反撃は一切無かった。


「魔戦車の砲撃と魔導士の大型攻城魔法は一時中止!」

「大丈夫ですかな?」


 大アリリァ乃シャル王が慎重に聞いた。


「これ程の圧倒的な戦力差です、一時的に騙し討ちが成功したとしてももはや敵に大勢をひっくり返せる事は出来ません。小細工などしないでしょう」

「確かに!」


 シャル王は手を叩いた。


「所でY子殿をどうお思いかな?」


 シャル王は聞いてからコーディエの顔をちらっと見た。


「尊敬すべき同志ですね」


 コーディエもシャル王を見てにこっと笑った。



『つまらん、何と歯ごたえの無い! 死ぬまで戦え!!』

『滅茶苦茶言わないでもらいたい。犠牲は少ない方が良い!』

『あの、外部魔法スピーカーオンで喧嘩しない方が……』


 山から走り降りて来たY子とセレネの蛇輪は、攻城戦が急転してソーナサ・ガ国が降伏した事を知った。


「ああ、シャル王殿ご無事でしたかっ!」


 Y子は蛇輪から降りると開城の処理に当たっていたシャル王に走って行き飛び付いた。


「こ、これY子殿、私は娘のある身、そのような事はお止め下され!」

「あはは、これは申し訳無い」


 Y子が離れると、シャル王は赤面して少し大きめの鼻を掻いた。


「これはY子殿、ご無事で何よりです。蛇輪のご活躍により兵士達は安全に行軍出来ましたよ」

「ふーーーん?」


 コーディエが笑顔で両手を広げたが、Y子は挨拶もせずに通り過ぎた。


「よし、ソーナサ・ガ王を尋問するぞ! とその前にカレン、ちょっとこっち来い!」

「もうセレネ、いちいちカレンの言う事を気にしないで、こんなに可愛くてキラキラした目の子なのよ!」

「顔で決まったら警備兵いらんわっ!」


 こうしていつもの様にY子こと雪乃フルエレとセレネが喧嘩しつつ、昼過ぎには無抵抗で武器を捨てて投降した兵達のいる城内をあっさりと占領完了したのだった……



『……という訳なのだ、連絡が遅れて済まないな砂緒! きっと砂緒も司令官に着任したばかりでいろいろ苦労していると思って先回りしてしまったかな』


 蛇輪から魔法秘匿通信で連絡が入り、ル・ツーの魔法モニター越しに数日ぶりにセレネの顔を観て声を聞いた砂緒だった。


『いやいやいやや、セレネさんの声が聞けて嬉しいですよ~~、こっちは軍の再編に邁進しつつ、一体どんな戦術でメドース・リガリァ本国に迫れば良いか夜も眠れず考えていて……少し寝不足なのですよ……』

『そうだろうな、実は砂緒はとても真面目で誠実な男というのはあたしが一番知っているぞ』

『セレネ……早くまた逢いたいです』

『バカッお前が魔輪で飛び出して行ったんだろうがっ』


 モニター越しに二人は見つめ合った。しかしその後ろでイェラが良くもそんな嘘が付けるなと白い目で見ていた。


『セレネいい加減にしてっ! どこをどう取ったら砂緒殿をそこまで美化出来る?』

『そうだぞ、ソーナサ・ガが陥落した以上、今度はいつ本当に両面作戦を決行するか、それを決めろ砂緒! でなければもうご褒美は無いぞ!』

『こ、こら、変な事を、シッ!!』


 砂緒の後ろから割って入ったイェラの口を慌てて押さえた。


『ちょっと待て、御褒美って何だ砂緒……? イェラお姉さまと何かあったのか??』


 セレネが不審の目で見る。


『違う、違いますセレネ、私がイェラと知り合ってどれ程経つと思うのですか? セレネよりもずっと先に知り合っていたのに、今更何かあると思いますか?』

『そうだな……あたしなんかより先に知り合いだった物な……あたしなんてどうせ』


 嫉妬して怒るよりも先に陰鬱になるセレネ。


『そうだな、我もフルエレ女王から砂緒殿とイェラ殿は妙に怪しい時があると聞いたぞ』

『普段どんな会話してるんですか?』


 すると突然イェラが砂緒に後ろから抱き着いた。大きな胸が砂緒の後頭部に押し付けられる。


『ご褒美とはこんな程度だ安心しろ!』

『ちょと、止めて下さい、むしろ心配になりますって!!』

『わーーい兎幸も!!』


 後ろから大きな胸のイェラが抱き着き、さらに横から魔改造されムチムチした身体の兎幸まで参加して火に油を注ぐ。


『そう、頑張って。じゃあ両面作戦のタイミングが決まればまた相談しよう』


 プチッ

 暗い顔をしたセレネから強引に通信は切られた。


「イェラ何て事してくれたんですか? 男勝りなイェラらしくも無いですぞ!!」

「……そうか、やっぱり砂緒もそんな目で見ているのか……」


 砂緒は少し赤面して恥ずかしそうに視線を逸らすイェラを見て驚いた。


「えっ」


 イェラも砂緒とフルエレとセレネの三角関係を見守る優しいお姉さん的ポジションから、少し砂緒の事が本気で気になり始めていた。さらにその会話の後ろで、操縦席に入りきれなかったメランがタラップからじとっとした目で見ていた……



 ―メドース・リガリァの西隣り、カヌッソヌ市。

 カヌッソヌ市はメドース・リガリァがセブンリーファ後川流域の中部小国群統一を目指して挙兵した直後に、いち早く恭順の意を示した衛星国の様な小国であった。


「何とトリッシュ国に続きソーナサ・ガまでが落ちたか!?」

「遂にメド国版図の東と西が落ちた事になる」

「同盟の勢いは凄まじいな」

「技術のユティトレッド魔導王国、生産力のニナルティナ、兵力のユッマランド、この三国が同盟しているのだ、最初から勝てる訳が無いのは分っていた!」

「誰だっメド国などに降ろうと決めたのは!」

「お前だっ!」

「何を!!」


 今、カヌッソヌ市指導部は絶賛大混乱中だった。しかし代表指導者が遂に一つの結論を唱えた。


「もはや国内で揉めていても仕方があるまい。儂はもう既に同盟に降ろうと思う、誰か異論はあるか?」

「………………」

「………………」

「そうか、声に出さずとも皆の意見は同じだな」


 こうしてまた一つ、メドース・リガリァ滅亡の歯車が動いた。

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