兄探し依頼、金づるが転がり込んで来たb
「あ、あのねシステム的には猫呼ちゃんが、クエストとして依頼して解決してくれる冒険者が現れるのを待つって感じの場所なの……ここは」
フルエレが猫呼の勘違いを親切に解説する。
「……それでは解決してくれそうな冒険者さんは登録されているのですか?」
「ふ、二人ほど」
涙を流しながら言った。フルエレは結局自分達で最初の冒険者として、自分達のギルドに登録しなければ前に進まないと悟った。
「結局自分達で開設して登録して自分達で解決する、脅威の自己循環システムになり果てましたね。ある意味エコロジーと言えそうです」
「嫌味言わないでお願い」
フルエレが力なく言った直後だった、バタンッカランコロンカランコロンとドアの激しい音が。
「何だこのうるさい物は!」
評判が悪すぎるドアベル。ドアが開くと王都の役人と鎖帷子を着て槍を持った兵達がずかずか入り込んで来る。
「砂緒および雪乃フルエレ、二人をこの館への不法侵入不法占拠、さらには看板の王立の詐称、そして猥褻物陳列罪で逮捕投獄する。裁判は一か月後、それまで牢から出る事は許されない!」
「え、え、え、何かの間違いです! 衣図さん七華王女に聞いてください」
間違いも何もその当の七華王女がプライドを傷付けられた腹いせに、一か月ほど牢にぶち込み、あえて恩赦で恩に着させようという魂胆なだけだった。七華は初めて二人を見た時に、化け物という評判とは裏腹に、決して法律違反や牢破りをする性格では無いと踏んだ上での事だった。
「斬ろうか?」
イェラが剣に手をかける。
「や、やめて下さい、正規手段でちゃんと出ます! 不正規手段はやめて!」
不安感で泣きかけながら砂緒を見た。
「ああ、これが手枷足枷ですか……ヒンヤリして気持ちいいものですね」
謎の感慨に耽っていた。
「だめだ……この人駄目だめだ……」
フルエレは涙を流しながら首を振り続ける。
「雪乃、後で私達がなんとかしよう。耐えろ。何か要る物があるか?」
「う、うう、パジャマとハミガキとおにぎり……それに小銭を……」
「ほら、きりきり歩け!」
容赦なく鉄格子付きの馬車にぶち込まれる二人。
「ね、猫呼ちゃん、事件はちゃんと解決するから、待ってて、待ってて、こんなのいやー」
鉄格子の中で全く説得力無く事件解決を承諾した雪乃フルエレ。
「あ、あの……訳が分からな過ぎて私はどうすれば良いのでしょう」
「お、お屋敷で留守番しててください! えへへ」
少し壊れながらフルエレは応えた。言う間にも何の余韻も無く無情に連れ去られた二人だった。