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ソーナサ・ガ陥落 上

 軍議は一旦中断され、砂緒とイェラと衣図ライグが王様の自室に向かった。


「よし」


 衣図ライグが片手を上げるとトリッシュ王を軟禁していた城兵達が槍を下げた。


「お頼みします」


 砂緒が侍女に事情を話すと、しばらくして砂緒達は入室を許可された。広大な部屋の中心には王様とその家族達が明らかに恐怖を感じ緊張した顔をして肩を寄せ合っていた。


「な、何事かね、物々しい兵達を連れて、遂に我らに危害を加えるつもりかこの嘘つき共め!」

「お、お父様!!」

「貴方っ」


 お后さま、さらには娘や小さな王子達が王様自身の言葉に驚き恐怖に打ち震えた。


「な、なんと心外な!? 一体我らにどんなお疑いをっ!?」


 リュフミュランの騎士時代以来、久しぶりに砂緒の演劇魂に火が付いた。


「では何をしに来たのかね?」

「おお、お城に蔓延る危険分子を一掃し、今や城内が安全になったのでかねてよりのお約束通り王様をお迎えに上がった次第に御座います!」


 砂緒は大袈裟に王様に向かって跪くと両手を大きく広げた。


「それは我ら一家の軟禁を解くという事かな?」


 王様の言葉を聞いてすぐさま砂緒は顔を覆って大袈裟に悲しむポーズをした。


「なんと心外な……我らが軟禁等と……王様はまさにトリッシュ王国の主、これまで通り王として君臨なされば良いのです。ただそれは我が同盟の一員としてですが……」

「それはつまり、同盟に加われば本領を安堵するというかねてよりの約束を履行する、という事なのだな」

「その通りです!」


 砂緒は今度は胸に手を当てて目を潤ませ親愛の情を示した。


「うむ、其方のその眼、決して嘘を付いている様には思えん……だが死んで行った兵達の事もある」

「貴方っ素直に従って」


 多少王としてのプライドがあるのか、唯々諾々と言われる通り砂緒の軍門に降る事を逡巡する王様にお后様が背中を押した。


「そうだな、それではこれより同盟の一員として同盟軍に協力致そう!」


 その瞬間、突然砂緒は王様の両手をぎゅっと握り締めた。年下の若造に異様な態度をされて多少たじろぐ王様。


「なんと有難いお言葉、それではこれより我が軍議にお加わり下され!」

「今なんと言われた?」


 王様も何故か砂緒の調子に合わせ始めた……


「是非トリッシュ王にも同盟軍のメドース・リガリァ征伐の軍議に加わって頂きたいので……」

「砂緒、これまで敵であった者がいきなり我らの軍議に参加とはやり過ぎでは無いか!」


 その時、イェラが間に割って入り砂緒に異を唱えた。


「ってぇい! だまらっしゃい! 王に対して無礼であるぞ、儂が良いと言えば良いのじゃ!」

(ってぇい?? 儂??)


 イェラが細い目をして呆れた。


「あー砂緒殿がそう言うのならば仕方がないなー」

「余計な邪魔が入り申し訳ない、是非とも王様には軍議に加わって頂きたい!!」


 再び砂緒は王様の手を取って訴えた。


「おお、なんと有難い……実は其方が常にウェイター服を着ておるふざけた男で、セレネとか言う女司令官の操り人形だと思い決定権等無いと疑っておったが、なんと心の広い決断力のある御方なのか」

「言葉のごく一部に引っ掛かる物はあるのですが、結果的にこうして分かり合えれば良いのです。では早速軍議の場に参りましょう。さあ皆の者、王のご帰還ですぞ!!」


 砂緒が手を上げると城兵達が十戒の様に道を開けた。もちろん王様に復帰すると言っても、同盟軍本隊の実権を握っている砂緒より上位に立つ訳では無く、あくまで城内の全ては砂緒達が決める訳だが、しかしそれも同盟軍が此処に駐屯している間だけであり、砂緒達が出陣し、何処かに去ればまた元の地位には戻れるという事だろう。


「ささっ王様、是非上座にお座り下され……」

「なんとそれはなりませぬ。私に恥知らずと、笑われよと申されるかっ、砂緒殿が上座に」

「いやっ王様が上座に!」

「いやいやいや砂緒殿が上座に!!」

「もうやめてッッ!!」


 バンッ!!

 メランが堪らず机を思い切り叩き、砂緒を止めた。


「すいません、という訳で王様とは仲良く手を繋いで座ります……」


 砂緒は本当に机の下で王様と手を繋いだので王様は激しく困惑した。


「うむ、余計な茶番が入ったが、早速彼我の戦力差を聞かせてくれ!」

「ハハッ!」


 イェラの言葉に部隊長の一人が地図を広げた。


「えーでは我が本隊はー……」


 部隊長が次々に砂緒達が今いる本隊から彼我の戦力を解説し始めた。


同盟軍東側・砂緒本隊 総兵力一万四千 魔戦車52両 SRV17機+ル・ツー1機


同盟軍西側ミャマ地域軍 総兵力一万 魔戦車55両 SRV10機+日蝕白蛇輪1機


予備兵力ユティトレッド魔導王国 兵力二千程 未稼働魔ローダーが15機程


行方不明ラ・マッロカンプ軍 兵力二千 魔ローダーSRV3機+ジェイド、ホーネット 


不参加リュフミュラン軍 兵力三~四千程 魔ローダー無し。


同盟首都新ニナルティナ 魔戦車数両、兵力千前後


「……という事になっており、それに対してメドース・リガリァは」


兵力一万程 ゴーレム兵約三千 魔戦車30両程 魔ローダーレヴェル7機+グレーなヤツ+半透明


「……程と、風前の灯と言えるでしょう! 支配下のソーナサ・ガやカヌッソヌの戦力を足しても、もはや大した敵では御座いません!」


 報告をしている部隊長がグッと拳を握った。しかし実際にはメド国の魔ローダーレヴェル七機の内、グレーなヤツつまりスピネルのデスペラードに率いられたレヴェル三機が山越え首都急襲作戦に出陣しており、もはやメド国には四機のレヴェルしか存在していなかった。まさに風前の灯と言えた。


「そのラ・マッロカンプ軍の行方不明とは何なのだ? そんないい加減な話で良いのか、そんな不真面目な国、罰を与えてやれ!」


 イェラが地図に指をさして怒りを露わにした。


「まあ量産型のSRVじゃない試作型の機体二機と、瑠璃ィキャナリーの腕が惜しいが、それでも我らが余裕で勝ってしまうでしょう。後はセレネからの連絡を待つばかり」

「ってやっぱりそうかっ! お前実は自主性無いだろ?? 早く攻め掛かれ!! もうサクッと勝てる状態ではないかっ!!」


 机に勢いよくバンッと両手を着いてイェラが立ち上がって叫んだ。実は図星だった。砂緒は自分から攻撃開始の合図を掛ける事が出来ずに、ひたすらセレネからの合図を待ちわびているのだった。


「ま、まあ落ち着いて下さい、もう少しすればセレネからなんらかの連絡があるハズです。それを待っても全然遅くはないですから……」


 何故かメド国の独裁者貴嶋と同じ様な事を言い出す砂緒だった。


「何をダラダラしているか、早く総攻撃の号令をかけよ!!」


 なおもイェラが砂緒にくって掛かっている時だった、軍議の場に慌ただしく駆け込んで来る足音が。


「はぁはぁ、大変です!!」


 大変です、という言葉に一同不吉な事でも起こったかと一瞬ヒヤッとする。


「どうした、落ち着いて言え」


 イェラが報告の者を落ち着かせる。


「ハッ! 吉報です、セレネ様とY子殿とコーディエ殿のミャマ地域軍がソーナサ・ガを陥落させたとの事!!」

「フェ?」

「はやっ」


 てっきり砂緒の本体と、ミャマ地域軍は同時に直線的にメド国に攻め入るとばかり思っていた所、思いがけずセレネ達の西側の軍だけで飛び石的にメド国の周辺国であるソーナサ・ガを陥落させたとの報に、喜んで良いのか本隊への相談も無しに動いた事に怒れば良いのか、砂緒を筆頭に一同微妙な空気になった……


挿絵(By みてみん)

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