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カレンの旅立ち

「ちょっとそんな状態で魔輪運転とかヤバいでしょ、一旦落ち着いて下さい」

「恥ずかしいですよ、帰りましょう!」


 メランは精一杯笑顔を作ると、片腕で超高速で涙を拭った。だが砂緒はまだ手を離さないので魔輪に乗れなかった。


「フルエレとは最初に出会った子で月まで一緒に行きましたし、セレネとはかなり長い距離二人で旅したりして色々あってやっぱりとても大切な子になりました。ですので今日いきなり衝撃の告白されて、正直どんな風に接したら良いのかとか分からないです」


 一瞬沈黙が続いたが、メランは言葉を振り絞った。


「正直に言ってもらってありがとう」


 でもまだ腕を離さない砂緒。


「だけど、一か所だけ訂正させて下さい」

「え?」


 急に砂緒が真顔になったのでメランはドキっとした。


「メランが自分もあっさり死ぬかもしれないなんて言いましたけど、私と一緒にいる以上は絶対に死んだりしませんよ、メランは私が必ず守りますから。だからいつ死ぬかも分からないなんて考えないで下さい」

「うん、はい……嬉しい」


 決して抱き寄せるという距離感では無いが、砂緒はメランの両肩を持って間近で宣言した。


「メランも兎幸もイェラも私が指揮官である以上、絶対に死なせません! 守りますよ」

(やっぱりその並びカ~~~)


 メランの涙も乾き始めた頃、突如砂緒がまじまじとメランの顔を見つめ始めた。


「あ、ああの何でしょう!? さっきの今なので凄く恥ずかしいですが」

「メランて良くみたら結構可愛いですね、今まで何で気付かなかったのでしょう……」

「へっ!?」


 突然今度は砂緒はメランの両肩に手を置いたまま、左右を念入りに確認した。


「あ、あの何を!?」

(ヒッ動きが完全に怪しいヒトだ)


「……でも良く考えたら、メランが折角ここまで勇気を出して告白してくれたんです、私はそれに応えようと思う。という訳で、こ、ここ、ここで、き、キキキ、キスしませんか!?」


 何故か突如肉欲が出て来た最悪野郎の砂緒だった……その姿を見てメランに衝撃が走った。


(絶対変わった人だろうと、少しヤバい人だろうとは想像していたけど、ここまでとは!)


「き、ききき、緊張しないで下さいっ、肩の力を抜けば良いですから! はぁはぁごくり」


 砂緒は緊張丸出しの顔でメランに迫った。ほぼセクハラにしか見えない。


(い、いま今、確実に唾を飲み込んだ!? こんな事セレネさんとしょっちゅうやってるはずなのに??)


 そんな事は無かった。セレネとのキスも戦いの後とか勢いで数回だけであり、砂緒は飢えていた。こんな場面、普通だったら馬鹿っ死ねっ! で、バチンと殴られてギャフンっで終わる場面だろうが、今日のメランは一味違っていた。


「いいよ、キスしよ」


 今度は砂緒に雷の様な衝撃が走った。あれ、本当にこの子可愛いと思ってしまった……さらにごくりともう一回唾を飲み込んで、メランに完全にその音を聞かれてしまう。


「行きます、んーーーーーーーー」

「はい……」


 目をそっと閉じたメランの肩をがっしりと掴んだまま、タコさんの様に口を尖らせた砂緒がメランの唇に触れようとした……


「だめえーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 ドギャッッ!!


「うがああああああああっっ」


 その時突如上空から兎幸が飛来し、砂緒に両脚が揃った綺麗なドロップキックを鮮やかに決めた。

 ゴロゴロゴロゴロゴロ……

 ズシャッッ!!

メランをかする事無く砂緒だけが吹っ飛び、地面を凄まじい勢いで転がって行って適当な岩石にぶち当たって止まった。


「何をする!! 普通の人ならモザイク処理が必要な状態になりますよ!?」


 地面にめり込んだ顔を上げた砂緒が激怒して兎幸に怒鳴った。


「砂緒には邪念があった、今のは良く無かったよ! だから駄目ーーーっ!!」


 兎幸は魔ローンでは無い、初登場時に使用していた個人用UFOで飛んで来ていた。


「何ですか邪念って、変な事言わないでもらいたいっ!!」


 しかし突然飛来した兎幸に衝撃を受けたのはメランも同じだった。


「あの……兎幸さん……い、いつから話聞いてたんですか?」

「うーんと、もう、命狙ってません! からかなあ?」


 砂緒のトンチンカンな行動で止まっていたメランの涙が再び流れ出した。


「酷い……兎幸さん盗み聞きなんて酷いよっせっかく砂緒さんとイイカンジになっていたのにっ!」

「エーーーッイイカンジだったかなあ!?」

「もういいですっ、じゃあ!!」

「あっメランッ!!」


 砂緒が止めるのも聞かず、メランは泣きながら魔輪に飛び乗ると一人で走って行った。


「あーー帰っちゃった!!」

「なんて事してくれたんですか? 兎幸、今のはただの無邪気じゃ済みませんよ、これから三人で戦うって時になんて事を……はぁ~~~」


 砂緒は頭を抱えた。その後砂緒は死んだモンスター扱いで兎幸のUFOに運搬して帰してもらったが、先に城に戻っていたメランとは会えず仕舞いだった……



 ―トリッシュ城内、夜。メランの部屋の前。

 コンコン、砂緒がドアをノックした。


「メラン、昼間は軽はずみな事をしてしまいました、本当にすみません、これから出発するY子殿とセレネの見送りに行きますが、一緒に行きますか?」

「………………」


 少し待ったが返事は無かった。


「じゃあ行って来ますね」

「あっ待って下さい、恥ずかしくて今は一緒に行けませんが、昼間はごめんなさい。一人で騒いで一人で怒って、勝手に先に帰ってしまった。明日からはケロッとして普通にしますから!」

「い、いやこちらも軽はずみな事をしでかしました、反省しています……」

「も、もうその事は言いっこなしですから! では行ってらっしゃい、おやすみなさい」

「はい、では明日から部隊編成など一緒に頑張りましょう」

「はーい」


 メランはショックから少し回復して、部屋の中で手を振った。



 ―城外、魔ローダー駐機場。


「砂緒殿、イェラ殿とメラン殿、兎幸を頼むぞ、それと彼女達に変な事をしたらフルエレ様が許さないと仰っていたぞ」

「そ、それは当然です。へ、変な事なぞしません!」


 砂緒の目は泳ぎまくった。


「砂緒、お前の事だから絶対に死んだりする事は無いと思うが、身体に気を付けてくれ、勝ってメドース・リガリァで再会しよう! ん」


 セレネはY子に見せつける様に砂緒に抱き着くと、お別れのキスをせがんだ。その瞬間に砂緒は昼間、メランを傷付けてしまった事を思い出して、目を閉じたセレネを直視出来なくなり顔を背ける。セレネにもメランにも両方悪いと思った。


「……セレネこそ絶対に大丈夫だとは思いますが、いや結構敵に捕まってあられもない姿を晒して来てますか、と、とにかく身体に気を付けて下さい」

「?」


 セレネは砂緒が朴念仁だから気付かなかったのかと思い、そのまま身体を離した。


「じゃあもう行くわよ、セレネ殿!」

「ああ、はいはい、言われんでも行くよっ!」

「じゃあ!」


 喧嘩しながら蛇輪に歩いて行く二人に向けて砂緒は手を振った。



「見て見て、砂緒まだ手を振ってるわよ!」

「Y子殿、頼むから語尾を統一してくれんか? こっちが疲れるんだ」


 セレネが複座の上の操縦席に、Y子こと雪乃フルエレ女王が下の操縦席に座る。


「何よ疲れるって。こっちこそ貴方と二人きりなんて疲れるわよ。早く敵を倒してしまってコンビ解消したいぞっ」

「それはこっちの台詞だよっ!」


 またまた二人が魔法モニター越しにお互いの顔を見ながら喧嘩を始めようとした。


「お願いします、こんな狭い機内で喧嘩なさらないで下さい、本当にこんな人達に負けただなんてガッカリしますよ」


 と、Y子の座席の後ろから見知らぬ少女がひょいっと顔を出して、セレネがぎょっとした。


「ぎゃーーーーーーーな、何だ、敵の幽霊かっ!?」

「何驚いてるのよ、幽霊な訳無いでしょう。元トリッシュ国の敵兵だったカレンちゃんよ。貴方と二人きりだと息が詰まるし、色々身の回りの世話をしてもらおうと思って、召使いとして雇ったの!」


 Y子は元敵兵の少女を背中に置きながら、事も無げに言った。


「はあああああ召使い!? Y子殿たいがいお姫さまだな!!」


 セレネはつい昨日の今日まで敵兵だった少女を旗機魔ローダーに乗せるY子こと雪乃フルエレに呆れかえった……

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