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メラン、稲妻! 上


「でも一番好きな子と一緒の方面とか部隊になれるか決める会議なんでしょう?」

「ピクニックじゃ無いんだからな、別におやつはいくらまでとか決める気はないぞ!」

「おやつにアレは含まれるのですか?」

「アレって何だ、卑猥な物か?」


 聞いていた砂緒はぴたっと黙った。


「別に卑猥な物ではありません……セレネ優しいんですね、私の発言にいちいち受け答えしてくれて……」

「あたしが放置したら誰がお前の相手するんだ……」

「セレネ……」

「砂緒……」


 二人は壇上で皆を置き去りにして人前もはばからず手を握り合って見つめ合った。


「なんだこれ?」

「早く話を進めてくれ!」


 ざわつく場内。


「なんであんな物を見せつけられなきゃならないのよ! ねえメラン殿、ねえ?」


 Y子こと雪乃フルエレが横に座るメランに声を掛けるが、ぼーっとしていて気付かずメランは反応しない。


「ちょっと?」

「え……え、ええそうですね。じゃあちょっと私が空気を換えます」


 そう言うとメランは優等生らしく、真っすぐ腕を伸ばして手を上げた。


「うむ、な、何だメランさん、いや、メラン殿か」


 セレネは最初に砂緒と一緒に居た所を目撃されたメランとの出会いからして彼女の事が苦手だった。


「変な寸劇は止めて下さい。真剣にやって下さいミミイ王女が戦死されたのですよ!」

「……その通りだ申し訳ない。で、メランさんの事だ、それだけでは無いのだろう」


 セレネはミミイの事を言われてハッとすると頭を下げた。


「はい、この会議はミャマ地域軍と我々本隊の同時攻略作戦において、誰が何処の所属になるか決める重要な話し合いですよね、一体どういう基準で配置が決まるのですか?」

「その通りだ。所属が決まる基準はズバリ、敵の超長距離魔法爆撃がどちらに向かってくるかによって変わって来る。まず超長距離爆撃を防げる人員でチームを作り、それを何処に配置するか決める」

 

 気を取り直してセレネはボードに貼ったセブンリーファ後川流域の巨大な地図に指し棒をビシッと指しながら話した。 


「魔法爆撃を防げると言えば砂緒さんですか?」


 再びメランが聞いた。


「ああまずは砂緒だ、この人は魔ローダー無しで単独で魔法爆撃を跳ね返したらしいが、それは敵が狙った所にたまたま居たから出来た事で、現実的に実戦では兎幸先輩の魔ローンの探知能力とセットで無いと能力を発揮出来ないだろう。しかももう一人の跳ね返す能力、魔ローンの盾の持ち主も兎幸先輩でもあるから結局二人は離れられない事になる。あ、離れられないって恋愛的な意味では全く無いからなっ!」


 セレネ総司令官は何を言っているんだという感じで皆が白い目で見た。


「とりあえず私は兎幸と一緒のチームなのですね、兎幸常に私にぴたっとひっついておくのですよ、フフフ」

「はぁーーい!!」

「兎幸先輩、砂緒からセクハラを受けた場合はすぐさま訴える様に!」


 兎幸が走って来て砂緒に抱き着こうとするが、セレネに追い返された。


「何だかセレネ総司令官は敵の魔法爆撃が南のミャマ地域軍か東の我々本隊かどちらか限定で狙って来ると決めつけている様ですが、もし敵が二か所同時に爆撃して来たらどうするのですか?」


 セレネは内心、アレッメランさん何で喧嘩腰なの!? と少しドキドキしていた。


「いや、今回のトリッシュ王国攻略戦時に、もし二か所同時爆撃が可能ならミャマ地域軍の渡河作戦も爆撃されていたはずだと思うが……」

「でもそれは敵側が準備が整って無かっただけで、次の両面作戦でも二方向同時攻撃が無いとは言い切れませんよね?」


 やたら怖い顔でメランが言い返してくるので、セレネは横に立つ砂緒の顔を見て救援を求めた。


(砂緒、メランさんが怖い!! なんとかしろ)

(はいはい、セレネはメランが苦手なんですねえ……)


 二人は言葉を交わさなくともお互いの意志が伝わっていた。


「メラン、セレネが怖いと思っています、過度のストレスを与えないで下さい」

「コラーーーーーーーーーーー!!! 言ったら意味無いだろ!?」


 それを無視してメランが言葉を進める。


「例えば敵魔呂の半透明は瞬間移動が出来ますが我が領内では結界くんが防止しています。でも敵領内では自由なので、仮に魔法爆撃が魔呂の仕業だった場合、手を繋いで攻撃位置を次々変化させれば能力者が一機でも事実上同時攻撃が可能なのではないでしょうか?」

「あ、安心しろ! そういう事なら話を最後まで聞いてもらいたい。実は跳ね返す者はもう一人いるぞ!」


 メランに負けまいとセレネは低い胸を張った。


「そのもう一人とは?」

「それはあたしだっ! あたしが蛇輪と魔法剣で敵の攻撃を切り裂いて消滅させるぞ!」


 セレネは自分に親指を指し再び低い胸を張った。


「ちょっとセレネさんそんな話聞いてませんよ! 本当にそんな事出来るんですか??」


 砂緒が心配して真顔で聞いて来る。


「ああ安心しろ、さっき生身で魔銃を撃ってもらって剣で叩き落とす事に成功したからな!」


 おおおーーっと議場内にどよめきが起こる。


「それもう石○五○門の斬○剣やないか! でも何処も怪我とかしてないですよね??」

「こ、こら、止めろ、皆が見てるだろ……」


 砂緒が再び人前もはばからずセレネの身体をぺたぺた触り出して、皆がウンザリした顔をした。


「止めて下さい! 重要な会議中ですよ。つまり砂緒さんと兎幸さんのチーム、それにセレネさんのチームと別部隊になるのですね?」


 再び怖い顔をしてメランが発言したので、セレネが砂緒を遠ざけて応えた。


「ああ、そうだが正確には私の魔法剣の威力を高出力のまま安定化させる為に、Y子殿とあたしが一緒に組んで蛇輪に乗る。つまり砂緒と兎幸先輩のチーム、それにあたしとY子殿のチームに別れるのだ」

「嫌よっっ!! 絶対嫌、なんでセレネ殿と一緒の機体に!?」


 突然Y子が立ち上がり大声で拒絶する。


「あたしだって嫌だが諦めろバーカ!」

「あんたの方が馬鹿よ、バーーカ!!」

「御二人共止めて下さい。では私はル・ツー、速き稲妻Ⅱで砂緒さんと兎幸さんの魔法力サポートメンバーという事に決まったのですね?」


 二人の口喧嘩を遮って、突然メランがはっきりと言い切った。だがセレネはそこまで考えてはいなかったのだが、メランの勢いに押された。


「ああ、確かにトリッシュ国攻略戦でもY子殿が魔法力サポートしていたのだな、良いだろうメランさんもル・ツーに乗って頂こう」

「おおお、複座の蛇輪と違って、移動中は狭い速き稲妻Ⅱの操縦席で兎幸とメランとぎゅうぎゅう詰めではないですか!!」

「お前は移動中も魔呂の手に握られてるんだ!」

「そんな殺生な~~」

「で、魔呂のチーム別けは分りましたが、どっちの魔呂がどちらの方面の配属になるのでしょうか?」


 再びメランが真面目な顔で砂緒とセレネの会話に割って入る。


「……それは飛ぶ事が出来る蛇輪が此処からミャマ地域軍に飛んで行く事になるだろうな。つまりここの本隊をル・ツーが守る事になるな!」

「おおお、つまり私はセレネが居ない間に兎幸とメランとイェラとのびのびして幸せに過ごせる訳ですなあ。で、ミャマ地域軍の構成は?」


 セレネが白い目をしながら応えた。


「ああ、海と山とに挟まれた小さき王国のコーディエ殿が大将となり、それにナメ国のシャル王に遅れて参陣されたロータス国王、さらには十分反省されたタカミー国王そしてする事が無くなったタカラ指令も参陣されるぞ。まあ将軍は全員男か老人ばかりだな」

「……なんですかその地獄部隊は?」

「地獄部隊言うな、あたしが行く所に不吉だろうが」


 セレネを無視して砂緒はY子の元に走った。


「Y子殿、あのコーディエという男には十分お気を付け下さい、あの男は常に貴方の身体を嘗め回す様に見つめていましたからな!」

「あ、ああ、そ、そうか? 十分気を付けよう……」


 Y子の両手指先をぎゅっと握りながら要らぬ事を言っている砂緒を近場でメランが無言で見ていた。


挿絵(By みてみん)

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