兄探し依頼、金づるが転がり込んで来た
「趣味なんだ……」
「この新聞記事を見て下さい」
「なになに『王都に怪盗三毛猫仮面あらわる!!』ですと……なんですかこれは昭和か」
「三毛猫仮面は流石にネーミングセンスがレッドゾーンに突入しているだろう」
砂緒とイェラが口々に話す。
「これがお兄さんだと言うのね?」
フルエレが二人を遮って話を進める。
「はい……。お二人には兄を探し出す……もしくは手がかりだけでも掴んで欲しいのです。公衆の面前で猫耳を装着する、そんな特殊な羞恥に耐えられるのは私達の一族としか。しかも三毛猫仮面は他称では無く自称なんです。そんな危険なセンス兄としか思えません!」
「自称なのか変態だな」
イェラが飽きれて言う。
「先程から話が見えないのですがフルエレ、この子は口入れ屋と何でも屋を誤解していますね」
「冒険者ギルドですよ。私もその事に今気付きました。でも自分で探して下さいって言うのも冷たい気が」
二人は少女を見ながらこそこそと話す。
「ここに一応報酬の一部、着手金としてこちらの価値で百万Nゴールド分の金をお渡しします。父に旅に出る時に困らないだけもって行けと言われて、魔法のお財布にまだまだあります」
ゴトリと金のつぶてを無造作に置く猫呼。
「魔法の財布とは便利な」
「ひゃ、百万Nゴールド!!」
一瞬で目が眩むフルエレ。
「猫呼の父上とは何をやっている者なのです?」
必要があれば欲しいだけで、別段守銭奴でも何でも無い砂緒が金を目の前にしても変わらぬ態度で聞く。
「強いて言うなら~、引退した王様? 引退したとは言えお家にはお金が唸る程あるんですよ!」
「唸る程……」
フルエレは金のつぶてを見てから完全に目が眩んで態度がおかしい。
「何故引退したのだ?」
イェラは王様や引退というワードに反応した。
「強いて言えば、滅んだ? あ、いい意味で、いい意味で言えば円満に滅んだんです」
「滅亡に良い意味も悪い意味もあるのか」
「何故滅んでしまったの!? ご家族は大丈夫なのかしら」
フルエレが心配して聞く。
「それは言えません……でもみんなピンピンして元気に暮らしています。ご心配して下さって有難うございます」
ほんわかした態度の猫呼クラウディアが初めて曇った顔になった。
「兄はそんな状況が我慢ならなくて『こんな所居られるかボケー(原文ママ)』と叫びながら出てったんです。そんな兄に私達は幸せに暮らしているよと、一言伝えたいんです」
「(原文ママ)なのか激しい兄だな」
イェラが身を乗り出して言った。