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トリッシュ国陥落 上 爆撃、サッワの決断 


「なんて奴ら、あんた達を早く倒さないと!!」


 ガキーーーン、ドギーーーン!! 

 Y子が素早く斬りかかり、再び始まった魔ローダー同士の激しい戦いの中、ココナツヒメが叫んだ。


『早くなさい!』


 カシャッ、ジャキン

ココナツヒメの激に促され、サッワは思考が停止して、無意識の中でボルトを引いて次弾を装填した。


『うおおおおおおおおおおおお!!!』


 血走った目に涙を貯めてサッワのレヴェルが巨大魔砲ライフルのトリガーを引いた。

 ドンッッ

 ヒュルルルルルルルルル……


「げげっまた来た!! 伏せろっ!!」

「きゃーーーーっ!」


 砂緒が叫ぶとカレンを担いだ衣図ライグやラフ達が一斉に伏せ、再び砂緒は中腰で両手を前に突き出した。大男に押さえつけられたカレンは訳も分からず泣き叫んだ。


「バッチコーーーーイ!!」

 

 ヒュルルルルル……

しかし不気味な飛来音は砂緒達の頭上を通り過ぎて行く……


「ありゃ、通り過ぎましたね……くっイェラッ!!」


 砂緒が振り返り、とっさに市街地で戦っているであろうイェラの事を激しく心配した。



 ドーーン!! ドンドン ドーーン!


「進めーーっ! もう少しで市街地を制圧するぞっ中心の城まであともう一息だっ!!」

「おおーーっ」


 イェラが剣を振り上げて魔戦車や地上兵達を指揮し、中心の城に至る寸前で最後の抵抗を試みるラン隊長とは別の地区の義勇軍の生き残り達と、少数の正規兵目掛けて戦っていた。

 ヒュルルルルルルルルルル


「おっ?」


 その当のイェラのぎりぎり頭上をサッワの魔砲弾がかすめる様に斜めに隕石の如くに突入して来た。

 ドガーーーーーーーーン!!!


「ぎゃーーーーーーーー」


 直後、激しい閃光と衝撃とがあり轟音が鳴り響き、イェラは吹き飛ばされくるくると回転して地面に叩き付けられた。


「な、何だ、爆撃か!? 味方が戦っている地にか!? く、狂ってる!!」

「イェラ様ご無事ですか!? 今の爆撃で魔戦車数両と味方千名以上が消失!!」

「い、痛い……何い!!」


 イェラが何とかよろよろと立ち上がって後ろを振り向くと、先程までイェラが引き連れていた部隊が大穴となって消滅していた。しかも丁度そこはカレンの実家のある地区であり、家族やご近所の人達は城に避難していたが、実家もご近所の家共々消えていた。カレンは異常に引きの強い少女だった……


「何て事……味方ごと市街地を爆撃するなんて、思った通り狂った敵だわっ」


 カキーーーン、コキーーーン!!

 ココナツヒメと激しい打ち合いをしながら、再び城壁内のしかも市街地辺りに爆撃があった事にY子ことフルエレ女王は戦慄した。


「Y子さー、なんだか敵は凄いクレージーみたいだし、もうセレネに応援要請したら??」

「………………」


 屈託の無い兎幸がセレネへの救援を提案したが、その事はY子が最もしたくない行動であった。けれども今の味方がどんどん犠牲になる状況で、確かにセレネに頼み事をしたく無い等と言っていられる場面では無かった。


『アハハハハハッ良くやったわっサッワちゃん! 残りの弾を全部撃ち込むのよっ勝利は目前よっ!!』


 ココナツヒメがY子のル・ツーと激しい剣の打ち合いを繰り広げながら、ようやくサッワが市街地に爆撃を始めた事を褒めた直後だった、サッワがぼそっと言った。


『……ココナツヒメさま、残りの数発は次の段の戦闘に残して撤退しましょう』


 思いがけないサッワの言葉を聞いてココナツヒメは一瞬絶句した。


『え? 聞き間違いよね?』

『聞き間違いでは無いです。連中は市街地にいくら爆撃した所で占領を諦めたりしません。僕はもう撤退を提案します!!』

『どうしたの、サッワちゃんは初戦でもう虐殺は繰り返したじゃない、何今頃躊躇してるの?? さあ早く撃ちなさい!!』


 ココナツヒメは思わぬサッワの反抗に焦った。


『………………好きな女の子が居ます、トリッシュ国に好きな子がいるんです。もう撃てません』


 声を絞り出す様にサッワはココナツヒメに告白した。



 ―中心の城前。


「ひでえ奴らだなあ、味方ごと市街地を撃ちやがった!!」

「クレージーですぜ~~」

「イェラさん大丈夫かな……」


 頭上を通り過ぎ、市街地で炸裂した爆撃を目撃して衣図ライグ部隊の屈強な男達が戦慄していた。


「ど、どういう事、何で味方の街を爆撃するの!? 誤爆……?」

「いやいや、王城に続いて今度は市街地ですからねえ、連中はワザとやってるんでしょう。案外キミの大好きなサッワくんとやらの仕業かもしれませんよ。もしイェラの身に何かあれば此処の住民共を皆殺しにしますから、覚悟して下さい」

「ヒッッ」


 砂緒が無表情でカレンの顔の間近で恐ろしい事を言い出して背筋が寒くなった。


(サッワくんが、サッワがそんな事する訳無いじゃない……)


 カレンは無言で首を振った。



「戦いは嫌いだけどっ、あんた達を絶対に許さない!! ミミイの仇、ここで絶対に討つ!!」


 ガシーーーーーーン!!

いつにも増して戦闘意欲旺盛なY子が兎幸のサポートを受けつつ、優位にココナツヒメに対して剣の攻撃を繰り返す。彼女も部下のSRV操縦者達も結界くんNEOを所持しており、ココナツヒメの瞬間移動は既に封じられていて、もはやココナツヒメには勝利の望みは薄くなっていた。


『………………ふぅ~~~じゃ、しょうがないわね、好きな子が居るなら仕方ないわ。全機撤退よ! 敵機から離れて集合よ、サッワちゃんの場所まで瞬間移動(短)を繰り返すわっ!!』

『ハッ!!』

『はい!』

『分かりました!!』


 一人一人が猛者とは言え、六機対四機の苦しい戦いを強いられていたシャクシュカ隊パート2の美女達に安堵の顔色が表れた。


『ココナツヒメさま……ありがとうございます!!』


 サッワのレヴェルは長大な魔砲ライフルのキャリングハンドルを再び握って駆け出す体勢に移った。


「あっ逃すかっ!! 全機敵魔呂を取り囲め!!」


 ココナツヒメのル・ワンを始め敵魔呂が結界くんNEOの影響から外れようと一斉に戦線から離脱したのを見て、いつになく珍しくY子が追い打ちを命令する。普段の彼女、フルエレなら敵が逃げた途端にホッとして放置するだけだろう。


『早く、手を繋ぐのよっ!! ちっえっ、えーーい!!』


 容赦なく剣を打ち込んで来るY子のル・ツーやSRV達の剣をココナツヒメがイラつきながら薙ぎ払う。


『ココナツヒメさま、此処は私がっ!! 早くお逃げを!!』


 そこに一機のレヴェルが前に進み出て、ココナツヒメを逃そうと促した。


『リリカッ何を!?』

『さあお早く!!』


 なおもリリカという美女操縦者はココナツヒメを庇った。代わりに一機で襲い来るル・ツーやSRVの剣を薙ぎ払い続ける。


『くっ、皆さあ早く手を繋いで!! リリカも』

『は、はい!!』


 リリカのレヴェルが剣を振るいながら振り返り、ココナツヒメの伸ばす手に自らの機体の手を伸ばした直後だった。


「逃すかーーーっ!!」


 ザクザクザクッッ!!

ル・ツーはじめ、複数のSRVの剣先がリリカの機体の前面に突き刺さった。


『サッワさ……ま』


 ドカーーーーン!!

 リリカの機体は爆散した。

 シュバッッ!!

しかしその直後、手を繋いだココナツヒメと二機のレヴェルは瞬間移動(単)で姿を消した。

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