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魔法のスナイパー 下 Y子軍の敗走

「兎幸身体大丈夫? ごめんね、魔ローンを一機射線上を辿って飛ばしてみれる?」

「う、うん……大丈夫行けるよ!! Y子ガンバレ!!」

「ありがとう……兎幸はいつでもずっと私の味方だね」

「えへーー。よしいっけえ、魔ローン!!」


 兎幸が盾に使っている六機の魔ローンの内、一機を上空高く上昇させ、弾道を計算して狙撃者を特定しようと飛んで行く。


 パシャッ!!!

その直後にもサッワの魔法の弾丸が超長距離を飛んで来るが、少し命中率が下がったのか外れて地面をえぐる。


『サッワちゃん、何かが飛んで行ったわっ多分空飛ぶ盾の円盤よっ! 早く狙撃位置を変更して、仕掛けがバレるわっ! いつかメッキ野郎が飛んで来るわよ!!』

『はい、だけどあと三機当てれば十機になります! もう少し!!』


 サッワもココナツヒメも仲間を次々撃破された蛇輪をとても警戒していた。


『急いで!!』


 ドーーーーン!!!


『やった! あと二機!!』


『なんて事!? またやられた……とにかくみんな慎重に早く退却するのよっ!!』


 兎幸に励まされてようやく正気を取り戻したY子ことフルエレは、これ以上損耗が無く撤退出来る事を願った。


「兎幸ごめん、残った魔ローンを使って皆の盾になってもいい?? 痛いかもしれないけどごめん」

「うん、いいよっがんばる!!」


 そう言うと、Y子の群青色魔ローダール・ツーはただ一機すくっと立ち上がり、両手を大きく広げた。当然その二十五Nメートルの巨大な魔ローダーの前面には、兎幸の五個の魔ローンが浮遊して完全にガードはしているが……


「嬢ちゃん、頭やられたかあ!?」

「フルエレ何を!?」

『ちょっと、Y子さん何を正気なの!?』


 衣図ライグとイェラとメランが同時にY子の奇行に驚いた。


『私が的になっている間に早く逃げてっ!!』


『ふっざけんなああっ!!!』


 直後にブチ切れたサッワが言うまでも無く目立ちまくるル・ツーに向けて射撃した。

 ガキイイイイイイイイイイイイイィイイイイン!!


「きゃーーーーーーーーっっ痛いいいいいいっ!!」


 案の定兎幸の魔ローンがまたしてもサッワの魔力が乗った強力な魔法弾丸を跳ね返したが、兎幸にも相当なダメージがあった。


『サッワちゃん無駄よ、全て跳ね返される。早く動いてっっ!!』


 ココナツヒメはル・ツーの挑発の様な行動に乗せられたサッワの事を心配した。


「見えたッ!! Y子、弾道計算出来たよっ、魔ローンに追跡させるからっ!!」

「うん、お願い」


 上空を注意深く見ていたココナツヒメは、キラリと光る魔ローンがバックマウンテンに向けて急降下する様子をはっきりと目撃した。


『駄目、サッワちゃん今度こそ移動しなさいっ!! 貴方の女王様からの命令よ』


 ドーーーーーン!!!

ココナツヒメがサッワに叫んだ直後、冷静にターゲットを変更したサッワが九機目の魔ローダーを撃破した。


『申し訳ありませんココナツヒメ様、今すぐ移動しますっ!!』

『急ぎなさい』


 言われてサッワのレヴェルは巨大な魔ローダーサイズの狙撃魔銃の砲身の上に設置されたハンドルを持つと、急いで狙撃場としていた切り開いた山肌から移動を始めた。


「……弾道計算から得た射線上には、何も居ないよ!? 山肌があるだけ……」


 兎幸の一機の偵察に出した魔ローンはトリッシュ国を通り過ぎ、サッワのレヴェルが姿を消した後に当地に正確に辿り着いたが、兎幸にはそれが狙撃場か只の山肌かなど区別はつかなかった。


『Y子さん、攻撃が止んでいます。走って逃げます!』

『ああ、魔ローダー残存全機、走れ!! 行けっ!!』

『ハッ!』


 Y子の合図により、伏せて進んでいたSRV達がむくりと起き上がると、一斉にどたどたと走り出した。


『口惜しいねえ……選り取り見取りなのに……だけど良くやったわサッワちゃん』

『はい……この探りに来た空飛ぶ盾、落とします!!』

『出来るの? そんな事が……』

『お任せを』


 狙撃位置を変更し、巨木の森の中に伏せて上手く同化したサッワのレヴェルは、ふわふわと狙撃場当たりを浮遊する魔ローンを長いバレルで、下からスピネルに聞いた弱点の腹部を狙い撃つという難しい芸当に挑んでいた。


「凄いやり辛いな……バレルが長すぎて……でも撃つ!!」


 ドシュッ!!! ドーーーーーーーンン!!!


「きゃーーーーーーーーーーー!!!」

「兎幸どうした!?」

「魔ローン、やられた……い、痛い……動けない……はぁはぁ」

「……ごめん、兎幸ごめんね」


 直近からサッワの大型狙撃魔銃で撃たれた魔ローンは完全に爆散して消え去った。


『ココナツヒメさま、空飛ぶ盾撃破、そちらの状況は??』

『凄いわサッワちゃん……早く抱き締めて上げたい。けど敵ザコ魔呂群は完全にアウトレンジよ。作戦は終了ね……あう、でも一機や二機なら追い掛けて剣で刺せるのに……』

『こらえて下さいココナツヒメ様、まだまだ奴らは性懲りも無く攻めてきます。それにメッキ野郎にも使う作戦ですし』

『そうね……では帰投するわっ!!』

(メッキ野郎……蛇輪の事か)


 そう言うとココナツヒメとクレウの乗った魔ローダール・ワンは、クレウの透明化魔法のまま瞬間移動(短)で帰投したのだった。



「なんだ何なのだっ!? 魔呂達が我ら地上兵を追い抜いて帰って行くぞ!? 恥知らず共めっ!」


 せっかく大軍の地上兵総指揮官に就任したにも関わらず、良い所無しで撤退命令を出した馬に跨るイェラの横を、さらに巨大な魔ローダー達が追い抜いて撤退して行く。


「ありゃああ、こりゃダサい風景ですぜ、大将~~~」

「だな、まあ俺達も最近大負けしただけに偉そうには言えんわ」


 ラフに言われて衣図ライグが頭を掻いた。二人の両横を大量の魔ローダー達が駆け抜けて行く……


「……Y子さん、敵攻撃終わった……ようです。帰投しましょう。私は……ミミイのレヴェル、いやザンザスⅡの片足を持ち帰ります……」


 メランは危険も顧みず一旦引き返すと、戦場に転がる白く塗られたレヴェルの足首を持ち帰った。


「Y子、帰ろう……皆どんどん離れて行くよ……」

「うっううっ……ぐすっ……ううっミミイ……」


 Y子は黒い兜の下でいつしか泣き続けていた。


「置いてかれるよ……帰ろうY子……」

「うん」


 帰りたくない、帰れないというのが本心だった。仮面を付けているとは言え、一体どんな顔で皆に会えば良いのか? 誰にも合わせる顔が無かった。

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