初めてのお客さまっ! 猫呼クラウディア +猫呼顔①
「あ、イェラさんですか、ようこそ……お越しくださいました」
「あからさまにがっかりだな」
「安心するのです、この子は大体においてこのような態度のニンゲンなのですよ」
「変な嘘つかないで下さい!」
無言で言い争う二人を見守り続けるイェラ。
「ここは常に人も居なくて居心地が良い。手芸をするのでしばらく使って良いか?」
「はい……そうですね、人居ないですものね。は!? 手芸をするんですか?」
突然生き返ってフルエレが聞く。
「そうだ変か」
「いいえ凄く素敵です! 何を作ってるんですか?」
「キルトだ」
「誰かにあげちゃうんですか?」
「いや、作っては貯蔵してるだけだ」
イェラは革張りの豪華な椅子に座りこむと、ぐーーっと手を伸ばし反り返って背筋を伸ばす。その途端にフルエレとは比べられない程の量感のある大きな胸が天井に向かって突き出る。女子のフルエレもごくりと唾を飲み込んだ。
「イェラ……」
はっと振り返ると砂緒がイェラを三白眼で凝視している。砂緒は人間になったばかりのゴーレムだと思い込んでいるので安心していたが、こういう事に興味が出始めちゃった!? と少し心配になってきた。
「ウェルカムドリンクは何に致しましょう」
職務に忠実だった!
「グレープフルーツソーダだ覚えておけ」
「かしこまりました」
砂緒はすたすたと無言で簡易調理場に行った。ほぼ店員その物だった。
ガチャッカランコロンカランコロンカラン
その場に残った二人が音が鳴るドアを向く。
「はいはい……どうせ兵隊さんかおじいさんか、リズさんでしょうね」
フルエレが諦め顔で開いたドアの前まで出迎えると、フルエレよりもまだ小さい年齢と思われる、銀髪のおさげ髪をしたとても可愛い女の子が立っている。
「私、猫呼クラウディアと申すものです。遠く旅をしているのですが、リュフミュランにも冒険者ギルドが復活したと聞き及びましてやって来ました。入ってもよろしいでしょうか?」
「おきゃ、おきゃ、お客さんらった」
フルエレが震えながら少女をぎこちなく案内する。入って来た少女は髪の毛の上に白い猫耳が生えいて可愛いスカートには尻尾まで生えていた。入って来た猫耳少女を丁寧に座席に案内する雪乃フルエレ。ちょこんと座る姿も可愛い少女。
「いらっしゃいませ、冒険者さまですよね。今ウェルカムドリンクをお持ちしますね」
「ウェルカムドリンク?」
怪訝な顔をする猫耳少女をよそに、砂緒が早く戻って来ないかキョロッキョロッするフルエレ。
「グレープフルーツソーダです。お」
イェラのテーブルにソーダを置いた砂緒が初めての冒険者らしき来客に気付く。突如少女は椅子から立ち上がって砂緒に駆け寄った。
「お、お兄様っ!」
そう叫びながら砂緒に抱き着く。
「えーー!!」
「誰なんですかこの少女は」
砂緒は少女の顔面に掌を当て、一切の何の配慮も無くむぎゅっと男の力で無造作に引き離す。へこむ少女の顔面。
「は、離し方離し方!」
「! ……申し訳ありません」
猫呼顔①