ラグジュアリー感を考え内装に凝ったらお金尽きるb
ガチャッ
「あ、お客様いらっしゃいませ冒険者の方ですか?」
「すーなーおくんー! 小競り合いレベルだが、ニナルティナの連中が性懲りも無く攻めて来やがった! また一緒に戦おうぜ」
衣図ライグだ。ここリュフミュランの端っこにあるライグ村は、隣国のニナルティナから度々侵攻を受け、今まで大将の実力一つで事実上王都の防波堤となっていた。
「静かにして下さい。今店内の家具の配置で悩んでいる所なのです。戦争などにかまけている暇はないのですよ! 自分達の実力で応戦してください」
「お、おま……ここが滅亡したらお前らの所為だからな! 幽霊になって出るぞ」
「良いのかしら、本当に放っていて」
フルエレが心配そうに言う。
「安心して下さい、この村は魔戦車を鹵獲し、さらに魔銃を多数保有して急速に防御力がアップしているのです! 大将は分配金で複数の防塁も建設、もはや以前の敵は敵では無いでしょう」
「そうなんだ」
「それにもし本当に危険になったらちゃんと出動しますよ。ここが滅亡したらフルエレが困りますからね」
「まあ」
フルエレは頬に両手を置いて、如何にも人間的にまともな事を口走る砂緒に喜んだ。
「しかし……まだ足りない物があります。それはお客様に無料でお出しするウェルカムドリンクサービスと、えそんなお値段で食べれるの!? と500Nゴールド程度で食べれるオムレツ等のフードメニューです。オムレツの上にはハートマークも重要なのですよ」
「フード……メニュー……?」
先程の砂緒の嬉しい言葉に軽い洗脳状態に入ったフルエレは、ふらふらと言う通り従ってしまっていた。
「まだ足りない物がありますね。それはお客様が入って来た時に聞き逃さぬように、入り口のドアにぶら下がってて、カランコロンカランコロン鳴るドアベルです!!」
「はっドアベルですって!?」
それはもはや喫茶店だった。
「やっぱりひ、暇過ぎです……」
当たり前だが砂緒のアイディアは何の意味も無かった! 豪華内装の為に殆どのお金を使い果たし、食費も切り詰めなければならない有様だった。
「自分を恨みたい。もう少し多めにお金を貰えば良かった……三分の一くらいは。なんで軌道に乗る前に店内内装なんかに凝っちゃったんだろう……」
黙々と砂緒がオムレツを食べる横でフルエレが沈み込んでく。
「でも良いじゃないですか、私はここにフルエレと居るだけでなんだか安心しますよ」
「……そ、その手には騙されませんから」
フルエレは怒っているのに笑顔が出て来て隠しきれず、下を向いた。
ガチャッカランコロンカランコロンカラン
「あ、お客様いらっしゃいませ冒険者の方ですか?」
「何だこのうるさい物体は? 取れ」
一緒に戦った高身長の女戦士イェラさんだった。鎧姿では無いイェラはスタイルバツグンであり男達の羨望の的だったが、非常に強く誰も手だし出来ない上に、彼女自身も人を寄せ付けない物があった。