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セレネから海と山と王国への提案 震えるY子

「セレネ、また前みたいに結界を解除しては駄目ですよ」

「分かってるわっ!」


 海と山とに挟まれた小さき王国に到達した鳥型に変形中の魔ローダー蛇輪は、結界障壁の前でホバリングする。するとそれを確認した城兵が狼煙を上げた。


「うわ、ローテクですなあ」


 狼煙が上がってしばらくすると結界障壁はパッと消えた。そしてそのまま蛇輪が結界をくぐると、狼煙の中に赤い粉が入れられたのか、煙が赤く染まり程なくして結界は復活した。


「ふぅこれで海と山と国入りだな」

「しかし……これをセレネさんがぶち破ってくれたお陰で、泣きながら抱き着いてキスしてくれた訳ですなあ、この結界様様です」

「も、もぅ……その話は無しにしてよっ」


 等と言いながらセレネは横に座る砂緒の胸をポカポカ叩きまくる。


「セ、セレネマジで死にます、痛いッ」

「もぅあははははは」

(わざわざ見せつけるみたいにイチャイヤして、何よコレ……何でこんな物見せられなきゃならないのよっ)

「むがーっむがーーっ」


 す巻きにされたY子こと雪乃フルエレ同盟女王だが、健康上の問題があってはならないと強制的に魔法モニターはオンにされていた。そこには仲睦まじくイチャイチャする砂緒とセレネの姿があり、正視に耐えられなかったが、フルエレもずっと砂緒の前で為嘉(なか)アルベルトとイチャイチャし通しだった事は彼女は意識すらしていなかった。



 -海と山とに挟まれた小さき王国。蛇輪から降りて城に入った砂緒とY子とセレネは王様とお后さまとの接見を前に、お二人の準備を待つ為に控室に居た。

 カチカチカチカチカチ……

Y子の持つ紅茶のティーカップが小刻みに震えている。


「うわぁあああっ」


 そのままいきなりばちゃっと紅茶を床にこぼしてしまう。


「だ、大丈夫ですか? Y子殿っ」


 それを見ていたコーディエが思わず立ち上がってY子に接近しようとする。


「大丈夫っ!! いえ……大丈夫ですからお構いなく。すいません……」


 するとお城のメイドさん達が無言で紅茶のこぼれた床を拭き、代わりの紅茶を差し出す。


「ありがとう」

「お気遣い無く、このY子殿は普段から粗忽もので有名なのです、ははははははは」


 そんな様子のY子を見てセレネが高笑いする。コーディエは冷や汗を流しながら二人を見比べた。


(セレネのやつーーー、いい加減になさいよ、でも出来る限り小さくなって居よう)


「Y子殿は別に粗忽者では無いような、どちらかと言えば……ん、どちらかと言えば??」

「なんだどした?」

「いやあ、一体何が言いたかったのか上手く纏まりませんでした」

「んだよそれ、砂緒既にボケて来た?」

(砂緒……)


 コンコン

控室のドアがノックされる。


「ご準備が整いました。どうぞ謁見の玉座の間へ」

「は~い」



 そのまま三人はコーディエに案内されて玉座の間に導かれた。砂緒とセレネにとっては二回目、正体がこの国の夜宵姫であるY子にとっては我が家への久々の帰宅だった。


「遥々よくぞ参ったぞ砂緒殿にセレネ殿」

「あらっ砂緒さんセレネさん会いたかったわっお久しぶりね!!」


 一同王様に礼をする。そして二人を見た途端にお后様が満面の笑顔になって駆け寄って来た。


「お后様、いつお会いしても美しい……またお会いできて光栄です!」


 等と言いながら砂緒は跪くとお后さまの手の甲にキスをした。途端にお后さまは赤らめた頬を両手で押さえた。


「まあっ砂緒さんったら」

「ふふふふふふふ」

「砂緒殿、わしのワイフに手を出せばどうなるか覚悟は出来ておろうな」

「王様とはいずれ雌雄を決する時が……」

「まあっ冗談はやめてちょうだいよ」

「わははははは」

「砂緒はほんと、お后様が好きだなあ」

(え、何これ? 何でこんな仲いいのよ……) 


 そんな風に戸惑うY子をセレネが振り返り、フフッと笑う様な顔をする。同時にコーディエもちらちらとY子が気になって仕方が無い。


「あのう……その黒い方は?」


 遂にお后さまは後ろに後ろに隠れる様に跪くY子に気付いてしまう。


「この方は北部海峡列国同盟女王雪乃フルエレ陛下の名代、Y子殿という女黒騎士です。今回の戦について女王からのお礼をお伝えする為に同行されています!」

「………………」


 びくっとしたY子が少し俯いてしまう。


「どうしたのかな、良ければ何故兜を外さないか教えてもらえまいか?」


 少しだけムッとした王様が当然の質問をする。


「それは……実は彼女は改心した元モンスターであり、あの兜を外した時恐ろしい封印が解放されてしまうのです! それでフルエレ女王陛下の前ですら兜を脱ぐ事を禁止されているのです……王様の前でご無礼をお許し下さい」


 セレネは即座によく分からないファンタジックな設定を考えた。


(なんなのよそれ、セレネのヤツ……でもありがとう)


「まあそうなのぉ……大変なのね。でもお声は出るのでしょうか?」

「はい、お后様会話は普通にされておられます!」

(コーーディエ!!)


 Y子より先回りする様にコーディエが答えた。


「Y子殿、遠路はるばるご苦労であった。女王陛下はなんと?」

「………………お、おいどん会話は苦手ごわす。細かい事は全てセレネどんにまかせてもんそ。陛下はこん国にお礼ばいっちょいもした」


 Y子はほぼ〇っ〇ーレベルのガラガラ声を必死に出して話した。あまりのダミ声に面白過ぎて砂緒の目が輝いた。


「馬鹿なっY子殿は先程は小鳥の様に清らかな声を出しておられたぞっ!」


 コーディエはびっくりして信じられないという様な顔をする。


「コーディエ、これがY子殿の精一杯なのです。控えなさいっ」

「は、はぁ……?」


 優しいお后さまに諫められて何か言いたげなコーディエが黙り込んだ。


「ふふっでは私から女王陛下からの重要なお願いを王様にお伝えしてよろしいでしょうか?」

(えっ何よ!? 私何も言ってないわよ……)


「何でしょうかな?」


 真剣な話だと思い、王様が姿勢を正した。


「実はこの海と山とに挟まれた小さき王国は我が同盟に率先して賛同して下さった最初の国、そこで兼ねてより女王陛下が構想されておられた事をお伝えします。それはこのセブンリーファ後川南側のタカラ山監視砦より以西、タカミー国やナメ国、ロータス国等他の複数の小国や村々を含む、このミァマ地域一体の中枢統括国を海と山と国には担って頂きたい!!」

(なっ何よそれ、セレネ聞いてないわよっ)


 セレネが言った事が一瞬理解出来ないという感じの二人だったが、直ぐに過剰に反応した。


「無理無理無理無理無理無理無理絶対無理ッ!!」

「何を言っているのセレネさん、ありがた迷惑よっ!!」


 王様とお后さまは似た者夫婦感をいっぱいに出し、同時に両手首と頭を振って全力で拒否した。


「何故ですか? この国は古来より、まおう軍とも中部小国群とも争わずまさにこの地域の盟主となるにふさわしい王家だと思いますが」

「だからこそだよ! この国はこじんまりと小さく隙間産業でやって行くのが性に合っているのじゃ!」

「そうよ、そうなのよ、中枢? なんだか良く分からないけど目立つ様な事は絶対に嫌なのよ」


 王様もお后様も実にフルエレと似た性格をしていた。


挿絵(By みてみん)

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