報酬の大金を貰ってしまった…b
「あ、いいのよ。いつもの様に振舞ってらして。それよりも、お約束の報酬をお持ちしましたわ。さてさて何にお遣いになるのかしら? 王都に豪華なお屋敷を手に入れられてもいいのよ」
お付きの者が、最高価値の金貨が沢山入った袋をどさっと置く。
「お前に言う必要は」
「やめー!」
大声で慌てて砂緒の言葉を遮る。
「そのお金は……砂緒が許してくれればだけど……村の戦ったみんなで山分けしようって、決まってからずっと考えていました。砂緒はどうかな?」
ちらっと見る。
「なる程、確かにフェアトレードという観点から言えば、あの馬とあの屋敷は釣り合いません。フルエレの言う通り兵士の給金と考えても正しい判断でしょう」
「良かった! 絶対賛成してくれると思った!!」
両手を合わせて喜ぶフルエレ。口には食べ物がいっぱい付いている。
「ま、まあ……む、無欲な事ですわね、見習わなければいけません事」
意表を突かれた様になった七華が控え部屋をそそくさと出ようとした時だった。
「あ、あの……王女は……七華さんは、衣図さんや戦ったみんなにも、お礼を言わないんですか? 戦ったのはわたしや砂緒だけじゃないです、みんなも七華さんに感謝してもらえたら、泣いて嬉しいはずです」
ぴしっと空気が割れる様な緊張が走る。
「なん……ですって……!?」
振り返った七華の顔には血管が走り、激怒の表情になっていたが、すぐに平静を装った。金で釣れたと思った飼い犬に噛まれた様な気持ちになっていた。
「うわ、すすすすすすす、すいません! 変な事言っちゃって、ごめんなさい」
「別に謝らんで良いでしょうフルエレ」
フルエレの言葉も聞かず、すたすたと退出する七華王女。二人は静かに激しく王女の怒りを買った。
「あれは何でしょう? フルエレ」
再び剣士に馬車に乗せられ、村に帰って来ると館の前で多くの人々が集まっている事に気付いた。二人が城に行っている間に、なんとおじいさん達や兵達が館の掃除をしてくれてたのだ。二人の帰還に気付き手を振り出した。
「こんな物でよいかな?」
「リュフミュラン王立冒険者ギルド?」
「いつから王立になったんですか? いいんでしょうか」
砂緒は先程の事もあって、大層な自称王立にさして嬉しさを感じていないが、衣図ライグが嬉々として指図して館の前に看板を立て掛けて行く。
「本当に有難うみなさん……これでやって行けそうな気がします」
雪乃フルエレは目に涙を貯めてみんなに感謝した。