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ナメ国援軍到着、川岸の戦いの終焉

 砂緒は瞬間的に最大限体を硬化させた。以前同盟締結式で魔ローダーの剣を受け止めた実績があるので砂緒自身は大丈夫だろうが、勢いで蛇輪の操縦席はずたずたに切り裂かれで蛇輪は再起不能に陥ってしまうだろう。雪乃フルエレの大切な蛇輪を壊されたくない、しかしどうする事も出来ないと破壊される事を覚悟した直後だった。


『砂緒危ないっ!』

 

 バーーーンッ


「ぶっ」


 速き稲妻Ⅱのパイプ椅子で眠っていた兎幸(うさこ)が突然起きて、魔ローン六機全て出現させ、一瞬で一つの塊にしてスピネルのデスペラード改Ⅲに横からぶち当ててふっとばす。ばしゃっとセブンリーファ後川に叩き倒されて、さらに大波が発生して小舟が波に飲まれる。


「そんな使い方が!?」

「おらあっ」


 ドカバシベシバキ

 立ち上がろうとするデスペラード改に間髪入れずに次々と攻撃を繰り返す六機の魔ローン達。


「兎幸ありがとう! 助かりました……」

『Y子ちゃんとセレネは何してるの!? 私一人じゃキツイよっうりゃっ』


 ガシッ!

兎幸は六機の魔ローンを操りながら速き稲妻Ⅱで起き上がろうとするデスペラード改Ⅱの腹に蹴りを入れる。しかしこの様な激しい操縦は兎幸の魔力備蓄を急速に奪っていく。


「くっそー魔力の無い私は蛇輪を動かせない!! 何やってんですあの二人」


 カキーン、カキーーーン!!

Y子こと雪乃フルエレ女王が鎌を振り上げて切り掛かるが、セレネは剣を使うまでも無く、ひょいっと避ける。


「はははははは、余裕余裕、そんな鈍らであたしが斬れると思うのかい!」

「うらうらうらうらうら」


 ビュンビュンビュンビュン

 言われてキレたY子がさらに大鎌をめった振りするが、ヒョイヒョイ避けまくるセレネには一向に当たらない。二人は周囲の状況も一切目に入らず、斬り合いに熱中していた。


「だめだーー、一体どうすれば!?」


 砂緒は二人の身勝手な振る舞いに絶望した。


「なんかおかしい、蛇輪は動かないままで速き稲妻Ⅱだけが戦い始めた。敵はグレーなトリッキーな奴だ。ミミイ貴方の仇のヤツ!」

「メランさん、もう群衆の上空に向けて一発撃って! それで突入しよう」

「仕方無い! 魔法弾火炎系発射!!」


 ドンッ

メランが船を待つ兵員達の上空に向かって魔戦車の魔主砲を撃った。


「なんだっ!?」

「南から魔戦車がっ!?」


 川の中の魔ローダー三機にばかり目を向けていた兵士達が、突然後ろから砲撃音が鳴って、一斉に振り返る。


「任せろっ!」


 ドンドンッドンッ

兵士達がうろたえた所を突破して魔ローダーに接近しようとしたが、兵士達の中に紛れていたメドース・リガリァの残っていた魔戦車三両が撃ち返して来る。


「撃って来た!? 魔戦車も居たの??」

「こっちも撃ち返す!! 物理弾発射!!」


 ドカンッドンッ

メランが撃ち返すと一発で一両の砲塔を撃ち抜いて爆発炎上させた。


「すごっ、さすが往年の速き稲妻だわ、魔呂よりこっち向きじゃない?」

「僕もそう思います!」

「? 往年て何よ現役ぴちぴちでしょ……よーしもう一発!!」


 好青年を軽く無視して、メランが照準を定めた直後だった、

 ドンドン、ドカンドボンッ!!

狙った直後、自身が撃つ前に二両の魔戦車に弾が命中して爆発した。


「わっ凄い二両同時に当たっちゃった」

「馬鹿言わないでよ、まだ撃ってないわよ……」


 メランが砲塔から顔を出して後ろを振り返った。


「我に続け!! 撃て!!」


 鎧を着て騎馬に跨ったシャル王だった。その両側には九両の魔戦車も付いて来ていた。ナメ国のシャル王は飛び石の様に周囲の小国や村々に遠征するのでは無くて、早朝から同時に各国に使節を派遣して、同盟軍の通過と手出し無用を通達したのだった。橋が落とされたセブンリーファ後川南側のミャマ地域各国の小国群は、メドース・リガリァ軍が去った今わざわざメド軍の為に戦うまでも無く、シャル王の通達をすんなり受け入れ同盟軍の通過を横目で易々と認めたのだった。


「シャル王に続けーーー!!」

「オオーーーッ!!」


 ドドドドドドド

 魔戦車の後ろから騎馬隊や魔銃歩兵、魔導士達も攻撃しながら走って来た。その数は二千数百名程で川岸にいまだ残る三千名以上のメド国兵よりも少なかったのだが、勢いの強さと魔戦車三両がいきなり撃破された事で、船を待つ兵達は突然の大混乱状態に陥った。


「シャル王達が来てくれたのねっ!」

「見て、前方が手薄になったわ、魔呂の足元まで行くのよ!」

「おおっ行くわよっどっけーーーー!!」


 南から迫るシャル王が率いるナメ国と同盟軍の連合部隊の勢いに押されてメラン達の前方の兵達が西に逃れ始めたのを見て、好青年に合図して魔主砲を撃ちながら魔戦車を急発進させる。

 ドンドンドン


「どけどけどけ、轢くぞオラーーーーー」

「アブねえ、逃げろっ」

「ヤバイ奴らが来たっ!」


 空中に魔砲を撃ちながらメランの魔戦車はなんとか川岸に辿り着く。


「ミミイ、蛇輪によじ登って私を速き稲妻Ⅱへ」

「ええっ分かったわっ」


 そう言うとミミイ王女は後部ハッチからぴょんと飛び降り、セレネや瑠璃ィみたいに一発で飛び乗る事は出来ないが、泳ぎ着くと器用に蛇輪の装甲を芋虫の様に伝い登り、物凄いスピードでハッチの開いたままの砂緒が乗る操縦席にするりと滑り込む。


「凄いサバイバル力……あの子王女を首になっても泥棒として生きていけるわ」

「うっバカ王女が来た……」

「うるさいっ銀髪三白眼どいてっ!!」

『早くして……はぁはぁ……もうしんどい……』


 バキドカドスベキッ

 その間も兎幸はデスペラードが立ち上がる隙を与えない程六機の魔ローンで殴りまくり、合間に蹴りを入れ続ける。


「ミミイーーーここよっ!」


 メランは砲塔の上でピョンピョン跳ねあがる。その間もシャル王に率いられた軍勢は南から攻め上り、残留していた約三千のメド国兵達は、船への乗船を諦めて戦う事も無く西に逃亡を続けている。


「はしっっ、はいドウゾ!!」

「うわっきゃあっ」


 魔ローダーの巨大な手がメランを掴み上げる。


「兎幸さん、後退して!!」

『うんっ』

「うりゃっ!!」


 デスペラード改Ⅲに蹴りを入れ続ける作業を中断して、兎幸の速き稲妻Ⅱが後退した一瞬で開いたままのハッチからメランをぽいと放り込む。


「痛いっコラっ! 乱暴よ」

「あ、いらっしゃい!!」

「兎幸さんに回復(強)」


 パシューーーーッッキラキラキラ……

メランはよろけたまま中腰で操縦桿を握り、いきなり自分自身の機体に魔ローダースキル回復(強)を掛けて兎幸のダメージを回復させた。


「そんな便利機能があったんだ!?」

「あったよー。行くよっ」

「あいっ」


 メランが操縦席に乗り、兎幸が後ろの仮設パイプ椅子に座った。同時にミミイが乗った蛇輪も、ようやくヨロヨロと立ち上がったデスペラード改に立ち向かう。


『待ていっ! 今銀色に乗った者、ユッマランド王女であろう!!』


 復活して向かって来た二機に対して突然デスペラード改Ⅲが片手を前に突き出した。


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