お城に呼ばれました。b
フルエレが半泣き状態で沈み込んだと同時にドアがコンコンと鳴り、確認無く勝手に扉が開かれる。入って来たのは昨日七華リュフミュラン王女の横に常に張り付いて護衛していた美形剣士だった。剣士は二人の姿を交互に見ると、目を細めて軽蔑のあからさまに冷たい視線を送る。
「鍵開いてたんだ。おはようございます。一体何の御用でしょうか? 昨日は二人それぞれ凄く離れた部屋でぐっすり眠っておりました」
フルエレは最大限赤面していたが、何事も無い様にふるまった。
「? ここに新たな衣装があります。どうぞお受け取り下さい。そしてどうぞ御髪をとかし身支度を整えられて下さい。これより王と王女より感謝の式典があります。ご安心下さいお食事も当然用意してあります」
言うより前に箱を抱えたメイドさんや使用人が、勝手に入って来て勝手に置いて行く。美剣士は言葉は慇懃だが一切心のこもっていない態度だった。
「私はこの軍服が気に入ってるのだが、これじゃだめですかね?」
砂緒はまるでコントみたいにボロボロの敵国の軍服をひらひらさせる。フルエレは暗くて見えなかったが、ここまでボロボロだったのかと改めでびっくりする。
「だめだめだめ、お言葉に甘えましょう」
美剣士やメイドさん達が退出し、衣装が入った箱に手をかけぴたっと止まるフルエレ。真横で砂緒は何を考えているのか分からない目で凝視している。
「あのー」
「何でしょう?」
「着替える時は、それぞれ別々の部屋に移動するの。自分の箱を持ってホールから出て行ってください」
昨日の事もあるので多少厳しめに言ったが、砂緒はなる程と言いながら出て行った。
「でかいですね。あの上には入場料を払えば上らせてもらえるのでしょうか?」
砂緒はまるで子供の様に、馬車の窓から見える王様を模った巨大な像を見上げる。感覚的には、なになに観音みたいな物だった。
「王様の頭を蹴る事になります。あり得ません」
二人を見る事も無く味気ない返事をする美剣士。二人は貴族や豪商という程では無いが、それなりに美しい衣装をもらい、見違える様に立派になっていた。




