女黒騎士さんのお掃除、見えそで見えない……!?
「あうーあうーあうーあ、ううっあうーあうーすなおーー、ふるえれーーー、あうーあうーあ、ううーー、ついでに……せれね、あうあうーー」
兎幸の部屋では豪華なベッドで兎幸が目をつぶり熱にうなされる様な状態になっていた。一目見て女黒騎士Y子はベッドにかぶりついて彼女を心配する。もっとも不気味な黒い軽量兜の所為で口元しか表情は見えないのだが。
「まあっ兎幸、なんてツボを心得た……いえ苦しそうにしているの……心配だわぁ」
「心配だわぁ?」
ミミイ王女が意地悪く突っ込む。
「い、いや彼女の親友フルエレさんならそう仰るだろうなと……」
「うんうんですよね」
メランが納得してウンウンと頷いて容態を解説する。
「元気な時もあるんですが……こうなると、セレネさんがユティトレッドの魔法技術者を派遣させて視てもらったりしてるのだけど、魔改造された時に謎の技術がいっぱい取り入れられてるとかで、全く未知の部分も多くて……取り敢えず大魔力を注入すれば自己修復機能が働くんじゃないかって……」
「ほう……では我も多少の魔力があるので注入してみよう」
「セレネさん筆頭にメランさんも私も皆試したけど、魔改造された時に凄い容量が増えたとかで、全然足り無いみたい、Y子さんでもどうかしらね~~~」
要らん事を言うミミイ王女をメランが無言で睨み付ける。
「フル、Y子さんやって下さい!!」
「では……」
Y子は軽い装甲が施されたボンデージ風の黒い革ロンググローブをしゅるりと脱ぎ去ると、白魚の様な指先で優しく兎幸の手を握った。
「元気になって兎幸さん……」
言った途端に目には見えないが膨大な魔力が注入されて行く。
「あうーあうーあうー、あ? あうあうーーああ? あうっ?? あうーーーーー!!」
途端に兎幸はシャキーンと目が開き、がばあっと上半身を起き上げた。
「フルエレ!? フルエレありがとうっ!!」
「きゃっ」
そう言うと兎幸は目の前のY子に抱き着いた。
「違うのよっ! この人はフルエレさんじゃ無いの、ね、違う人よ!!」
「空気読んで、ウサコちゃん空気読んで欲しいの? 分かるY子さんて言うのよ」
直後にミミイとメランが冷や汗を流しながら必死解説を開始する。起き掛けに多少混乱して目をぱちくりさせる兎幸だった。
「う、うんーーーY子ありがとう……元気になったよ?」
「そう良かった……でも自己修復機能が本当にあるのか見極める為に今日は横になっててくれたまえ」
「うん……」
兎幸のセンサーには明らかにフルエレの反応を示しているのに、Y子という人だと必死に言われて不審がるが、多少空気を読む事を覚えた兎幸は言われるまま布団を被り直して目をつぶった。
「これで一つ解決だな!」
「はいっ!」
兎幸の部屋を出た三人は今度はセレネと砂緒の控室に向かう。
「……一つ聞きたいのだが、セレネ総司令と砂緒殿という方の共同控室との事だが、ご両人はどの様な関係なのかな?」
歩きながら突然Y子が二人に聞いた。声は多少上ずっていた。
「おやあーーー気になりますぅ??」
「こら」
「い、いやゴシップ的な意味合いでな。セレネ総司令の事でもあるし」
「まあ端的に言うと、砂緒殿というのは正体不明の男で、セレネ総司令の愛人だと言う事ですよ!」
「あ、愛人!?」
Y子が黒い兜越しに大声を出す。
「声大きいです」
「だって砂緒さんご本人が皆の前で愛人ですって宣言してましたからねっ」
はっきり言い切るミミイにY子が反論した。
「しかし……今ぱっと見た印象なのだが、砂緒殿は虚言癖というか大言壮語する様な部分がありそうな」
「パッと見ただけでそこまで分かるのですか!?」
「こらこら」
再びからかう様に言うミミイをメランがたしなめる。
「確かに愛の巣だとか愛人だとかはお二人の冗談だとは思います。ただ……」
「ただ?」
「リュフミュラン冒険者ギルド時代から知っている私の印象では、セレネさんも砂緒さんも凄く良い方向に変わって行って、普通の恋人同士、いえもっとそれ以上の長年連れ添った夫婦くらいに息が合って信頼し合ってる様に見える時も……」
メランはチラッと兜越しにY子の表情を探った。
「そ、そう、それは良き事ですね」
「あっあっでもでも夜になるとお二人とも別々のお部屋で寝ていますよ! どうやら砂緒さんがきっちり分けた方が良いと仰ってる様で……意外と真面目なんですねえ?」
「えっそうなの!?」
一瞬声が弾んだ様に聞こえた。
ガチャリッ
メランは二人の共同控室を開けた。
「お邪魔しま~す?」
ドアを開けてなおもメランは用心深く部屋の中を見回した。
「貴方セレネさんを怖がり過ぎよ」
「い、いやあの人の事だからいきなり睨んで座ってる事も……」
(え、偉い怖がられようね……)
しかし部屋の中は誰もおらずガラーーンと静まり返っていた。
「でも緊張しちゃうわよ。若い男女が普段使ってるお部屋の掃除なんて……いけない物が出て来ちゃいそう」
「いけない物って……何?」
メランが用心深く聞き返す。
「そりゃ……ねえ、分かるでしょう……?」
「な、何よ……言ってみなさいよ」
「そ、そりゃねえ……ごにょごにょ」
「も、もうその辺で止めないか? セレネ殿は気位の高い一国の王女、見られてマズイ物は事前に捨てるはずだ」
Y子は身も蓋も無い言い方をした。その後三人は真面目に掃除を始めた。控室と言っても我々の世界の芸人が一時滞留する様なパイプ椅子と簡素な会議机のあるあの控室では無く、一般家庭の応接室よりも高級な調度品に溢れた広い部屋となっている。その広い部屋を三人で必死に掃除をし続けた。
「はぁはぁ意外にキツイ……こんな事王女である私がなんでしなきゃならないの……!!」
文句たらたらのミミイ王女がY子の姿を見て声を失い、ちらりとメランの様子を確認した。メランは自分の掃除に必死でこっちに関心は薄れていた。
「ふうふう……」
Y子は雑巾で床を拭いていた……もともとぱつぱつのミニスカ衣装の為、その後ろ姿はかなり危ない状態になっていた。
「あああ、あのY子さん、あっちの方もうちょっと拭いた方がよいのではないかしら?」
「はい!」
素直なY子は言われるまま従う。拭き掃除に気を取られるY子はどんどん大胆部が開き気味になり、その度にパツンパツンの黒いタイトミニが徐々にたくし上がって行く……そうするとY子の健康的な太ももの付け根辺り、その上部のなだらかな曲線の膨らみが見え始めた。
「どうでしょうかー?」
「あともう少し……あともう少しよ!! はぁはぁ」
「え? こうですかぁー?」
「うん、あともうすこ……」
「ぃやめんかーーーーーーーいっっ!!」
気付いたメランの蹴りが入った。




