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タカラ山監視砦急襲

「べ、別にデレデレなんてしてないよ。すいませんフルエレ女王陛下いいですか?」


 ニィルが顔を作り直してフルエレに対応しようとするが、どうしてもフルエレに面と向かうと顔が綻んでしまう。ニィルに限らず殆どの若い男が天使の様に可愛いフルエレに会うと同様にデレデレになってしまう。


「女王陛下は止めてと言ったはずよ、フルエレで良いの」

「はっこれはすいません、フルエレ……さん、お知らせが」

「何かしらー?」


 ニィルが真面目な顔になって真面目な話題を話そうとするが、アルベルトが一緒に帰国して以降、フルエレにとって戦場の話は急激に興味が無くなっていた。フルエレの中でセレネと砂緒のコンビは最強であり、倒せる者などいないと思っていたので、特に心配もしていなかった。


「今朝早朝速魔輪で報告がっ。お味方、同盟軍はロミーヌ王国を無血開城させ拠点として、即座に北の、我らから見てハルカ城やイ・オサ砦の南に当たるオゴ砦をも落とし連戦連勝だそうです!! なんでもセレネ様と砂緒さまが大活躍で、敵のトリッキーなグレー魔ローダーを撃退したとか!!」


 ニィルが拳を振り上げ興奮気味に報告する。


(グレーでトリッキーな敵魔ローダー?? ああっスピネル様まで撃退されたの?? お命は大丈夫なの!?)

「わああああああ、私の所為だ、私のっ」

(私が負けて抜けたから……)


 突然フゥーが頭を抱えて泣き出した。しかしフゥーの責任というよりサッワの責任の方が大きかったが彼女にはそんな事は関係無かった。


「あっ……」


 フルエレがしまったという顔をしてニィルが凍り付く。


「あの……俺何かマズい事言っちゃいましたか??」

「兄さん……いや……」


 冷や汗を流す兄をイライザが慰めた。


「フゥーちゃんごめんね……フゥーちゃんの味方のお話しだもんね、でも堪えて欲しいの。私達もなるべく早く戦争を終わらせる様にするし、一般人を巻き込まない様にするわね……いつかフゥーちゃんにも国に帰れる様に手配してあげるから」


 フルエレは身を屈めフゥーの目線になって真剣に言っている様に見えた。


(この人が……サッワさまの敵?)



 ―数時間前の早朝ロミーヌ王国、同盟軍前線司令部。

 早朝に衣図ライグやラフ達西リュフミュラン軍御一行をオゴ砦に常駐兵として残し、砂緒とセレネとミミイ王女とメラン、それにグルメタウンはセブンリーファ後川南側にあると知ったイェラが戻っていた。他には魔戦車部隊もオゴ砦に数両を残しここに戻っていた。しかし衣図達が抜けた事で総兵力はガタンと減り、兵の総数は千数百人程度にまでなってしまっていた。


「取り敢えず伝令を出した。フルエレさん達喜んでくれるかな? メドース・リガリァ軍の新ニナルティナへの侵入経路をとりあえず遮断した事で枕を高くして眠れるだろう」


 軍議が始まる前、砂緒とセレネは朝食を摂りながら別室で話し込んでいた。


「フルエレがそんな事興味ある訳無いじゃないですか。どうせ午後に美味しいケーキでも食べてる最中に聞いて、ふーんで終わりですね」


 砂緒が興味なさげに言い放った。


「ふーーん、そんな物かねえ、それでさ……あの……砂緒」

「何ですか? もじもじして気持ち悪いですね、またキスの要求では無いのでしょう?」


 珍しくセレネがもじもじしてなかなかはっきり言わない。


「ちがわっ違うよ……そうじゃ無くって、昨日さ、その砂緒の現世での物凄く数少ない友達の悪口みたいな事言っちゃってさ、ごめん。気を悪くした?」


 その時砂緒は雷に打たれ天地が崩壊した事を聞いたかの如く衝撃の顔で固まった。


「どどど、どうしたのですかセレネさん、貴方が私にその様に謝罪するなんて……ごく一部表現にひっかかる部分はあるのですが、私の友達の事まで気にかけてくれて……成長しましたね」

「成長はねーだろ、何様だよ……」

「いや冗談です、セレネがそんな事言ってくれて凄く嬉しいです。私もそっけない態度しちゃいました」

「砂緒……」


 ごはんを食べている最中にも関わらず二人は見つめ合って手を握り合った。なんだかんだ言って旅以降急激に親密になっている二人だった。

 コンコン

突然ドアがノックされ平静に戻る二人。


「セレネさま良いでしょうか?」


 ミミイ王女の声だった。


「いいぞ入りたまえ」

「はい」


 ミミイ王女とメランが入って来た。


「……盛り上がっていたのにすいません」

「こらっ」


 メランが慌ててミミイ王女を叱る。


「最悪だな……」

「すいません、本題を言いますが、父王からの伝達が届きましたので、会議の前にセレネ王女のお耳に入れようと思いまして」

「うむ、言ってくれたまえ」

「セレネさんまた偉そうになってますよ」


 砂緒に言われて、セレネが一瞬もうって顔をするがすぐにミミイに向き合う。


「父王の報告では逃亡した兵達を探し出しもう一度本軍を再編するのはまだまだ時間が掛かると……申し訳ありません」

「いや、もう良い報告ありがとう」

「こら、もう部屋を出るのよ」


 メランがぴっぴっとミミイ王女の服を引っ張る。


「もうちょっとお二人のご様子を」

「だから止めなさいって悪趣味よ、すいません出ますっ失礼しますっ」


 セレネは呆れた顔をしてミミイ王女が部屋を出るのを見送った。


「呆れた子だな。それよかユッマランドの本軍が戻らず、西リュフミュランの一隊が離れた今、いきなりメドース・リガリァ本国を急襲するなんてあり得なくなったな」


 セレネがやれやれという感じで背伸びした。


「どうなんでしょう、私とセレネと兎幸が同乗して、三人だけでメドース・リガリァ本国を空爆してなんとか言う敵首領の女王を倒したらだめなんでしょうか?」

「エリゼ玻璃音か? そんな事しても意味無いだろう」

「何故ですか?」


 砂緒が真顔で聞いた。


「我々の目的はただ単に敵としてメドース・リガリァを倒すだけでは無い、その後が重要なんだ」

「その後と言いますと?」

「決まっているじゃないか、おじい様はメドース・リガリァ打倒後に北部海峡列国同盟国と、中部小国群合わせて三十か国が一同に会する会議を開くと言っている。その為には敵女王を倒すだけでは駄目だ。ニナルティナやユティトレッドがセブンリーフを主導する様な立派な国であると印象付ける戦いが重要なんだ」

「はぁ」

「この戦いで中部小国群の国々が我々になびく事が目的なのに、敵女王を空爆して消しただけでは各国がまたばらばらになって終わり。それでは駄目なんだよ……」

「つまり……皆が協力して一致団結してメドース・リガリァに引導を渡す様な展開が良いと?」

「そうそう。だからなるべくユッマランドの兵力が回復するのを待ちたい」

「……それフルエレは知ってるんですか??」

「いいや、後で相談すれば良い」

「それまさか、またフルエレにエスカレーター式に三十か国の同盟女王をやらせる訳じゃないですよねえ?」

「………………」


 セレネは黙り込んだ。


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