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オゴ砦奪取 ……砂緒ミサイル再び

 魔法通信兵は再び聞き返した。


「スピネルさま撤退ですか?」

「撤退だ。現地人を残してメドース・リガリァ兵だけでも良い、撤退しろ。現在敵魔戦車部隊が接近しており、さらに後方に歩兵部隊も確認出来る。私もこれから旗色が悪くなる、なるべく時間を稼ぐので速やかに西に撤退するんだ」

「ハッ直ちに!」


 スピネルの冷静ながらもはっきりとした物言いに魔法通信兵は緊張して通信を終えた。


「おらおらおらお!!」


 蛇輪は妖しく光り輝く魔法剣を目立つ様に振り回しながら走って切り掛かって来る。


「ふんっ! いくらクラウディア製の魔法剣が強くともっこれまでと同じ事っ!!」


 スピネルは威嚇に惑わされる事無く、これまで通り二本の剣で攻撃をいなしながらも、次々に攻撃を繰り出して行く。松明や魔法ランプの少しの明かりの夜の暗闇の中、イルミネーションの様に光り輝く魔法剣がある意味綺麗にも見えた。


「なんだか綺麗ですねえこれ……一瞬戦いを忘れそうです」


 砂緒が激しい剣劇の中、のんびりした事を言う。


「他人事かよ! こっちは大変なんだぞ!!」

「私の予想ではもうすぐ決着が付きますよ、普通に剣で戦っててみて下さい」

「なんだよえらい自信だな」


 その間もカキーーン、カコーーンと激しい剣の戦いが続く。

 ピシッ!!

その直後に暗闇の戦場に鈍い音が響いた。


「何だ??」


 一見二刀流で優位に剣での戦いを進めてるかに見えるスピネルが鈍い音に不審感を抱く。

 パシィーーーン!!

その直後に魔法剣と何度も剣を交わした二刀流の内一本が弾け飛んだ。


「むっ剣の耐久かっ!!」

「すごっ……砂緒が言ってたんはこれの事か」

「ちょっとズルい気もしますが、我々が以前魔法剣が砕けた事と同じ事です。剣を打ち合う度にあっちの剣も魔法剣と同じ影響を受けている訳です」

「ちいっまだまだ!!」


 スピネルは切り落としたSRVの腕に握られていた剣を素早く拾うと再び二刀流の構えを見せた。


「あっ私達の剣を!!」

「私達のって……言い方がいちいちなんかイヤ」


 二機の戦いを遠巻きに見ているメランとミミイ王女が叫んだ。


「うわっしぶとい!!」

「そりゃ命がけですからねえ……」


「むう……これではすぐに同じ事になるだろう……これでどうだっ!!」


 スピネルが言うとデスペラード・サイドワインダーカスタムⅡの機体の各所から白い煙が物凄い勢いでもわもわと噴出した。あっと言う間に暗闇の砦前の戦場がさらに白煙で視界がゼロの状態になってしまう。


「見えーーーーーん! 逃げる気かくそっ」

「はぁーーーーーアイツはいつもいつもこんな戦い方を……と、アイツはいつもいつも??」


 砂緒は自分の発言に何故かしばし考え込む。


「砂緒、雷さらに強く出来る?」

「ええっやります」


 セレネは魔ローダー蛇輪の目や肩や膝小僧等のもともとの魔法サーチライトの他に、砂緒の光り輝く魔法剣も明かりにしようと考えた。


「馬鹿めっ! そちらからこちらは見えず、しかしこちらはそちらが丸見えだっ!!」


 スピネルは暗闇と白煙の中、派手に光り輝く蛇輪に向けて二刀流で切り掛かる。


 カキーーーン!!


「うっわっ危なっ」


 セレネが寸での所で剣でかわす。相手は二刀流なので第二攻撃もあるがいつも魔法剣でかわしている。


「さあいつまで持つかな?? そらそら」


 暗闇の中からデスペラードが神出鬼没で襲い掛かって来る。その度にセレネが寸前でかわしたり剣で弾いたりを繰り返す。その隙にオゴ砦の中から主にメドース・リガリァ兵達が粛々と撤退作業を進めていた。破竹の勢いでセブンリーフ大陸中部小国群を併合して行ったメドース・リガリァ軍は各小国の現地兵の他は、メドース・リガリァ本国兵の総数は驚く程少なかった。その少ない兵数で各国の軍隊を指揮していたので、一度旗色が悪くなり撤退ともなると反逆されて襲われる可能性もある。撤退する兵達は緊張感の中、スピネルの戦いを無言で応援しつつそそくさと逃げて行く。


「うーーーーん、動きが変だな」

「ですねえ、時間を稼いでいるというか、もう勝つのを諦めたというか」

「どうする?」

「じゃあ、もう砂緒ミサイル投下して下さい!」

「どこに?」

「今度奴が切り掛かって来た時に、私をワーム〇ン見たいに敵に張り付けて下さい。顔でも殴ってから砦に突入します」

「ワーム〇ンが分からんわ!」

「分かりませんか? 不思議なペットですよ」

「だから分らんて!」

「じゃあスライム的に貼り付けて下さい」

「まあなんとなく分かった。でも……気を付けてね」

「当たり前です……またセレネに会いたいですからね、絶対に死ねません。セレネも魔法剣が消えますが大丈夫ですよね」

「……砂緒……あたしは大丈夫だ」

「私もセレネの胸が大きくなるのを見届けるまで死ねません」

「しつこいわっ!! 行けっ」


 下のハッチを開き、砂緒を握ると敵の攻撃を待ち構えた。


「来たっ!! 剣を避けて……貼り付ける!!」


 ビターーーン!! 

 割と勢いよく砂緒を投げつけてちょっと後悔するセレネだった。


「大丈夫……だよな」

「むっなんかを投げた?? まさかっ……またアイツか??」


 砂緒は上手くデスペラードの肩甲骨当たりに着地していた。しかし何時振り落とされるかも分からない。


「早速行きますか! はぁあああああああああああ!!!」


 最大限拳を硬化させ白く輝かせると、首の付け根を思い切り殴り倒す。

 ゴキーーーン!!

何かの装甲かフレーム的な物が鈍く歪む音が響く。


「つううう。やはり砂緒が張り付いている??」


 スピネルは激しい痛みを感じながらも即座に痛点を掌で叩く。


「危ない危ない、あと一発くらいですか? はああああああああ!!」


 ガツーーーン!!

後頭部に廻りこんだ砂緒は後ろの首辺りを再び思い切り殴りかかる。

 グキーーーーン!!

衝撃音とは別に、内部構造が完全にいかれた音がした。


「首が……動かない……視界が」


 致命的な損害だった。いくら剣が巧なスピネルでも首が同じ方向しか向かないのでは実力は半減してしまう。しかしオゴ砦内の完全撤退を確認する方法が無い為、白煙が消えるまでは全力で引き延ばすしか無かった。


「むう……砂緒の攻撃が決まったか? 動きが無い……しかしあんなに胸小さい小さい言わなくてもいいのに……」


 以前に砂緒が小さい男の子は好きな女の子に意地悪をすると言っていたが、砂緒自身がそんな状態になっている事に気付いていなかった。


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