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夜襲! オゴ砦奪取作戦 下 デスペラード改スピネル

「ちょっと代わりなさいって! そういう手はずだったでしょう!!」


 メランが操縦席に座る美魅ィ王女に席を代わる様促すがミミイは頑として代ろうとしない。


「あーーもーーー貴方本当に腹立つ! 自分勝手が過ぎるわよ、いい加減に反省したら?」

「ごめんなさいメランちゃん嫌いにならないで、でもどうしてもアイツだけは倒したいの!」

『メランさん何をやっている? 兎幸先輩に魔ローン展開してもらって!!』


 セレネが異変に気付いて急いで魔ローン展開を指示した。


「オッケー行くよ! 出て来て魔ローン二機展開!!」


 兎幸が念じると片腕の青い量産型魔ローダーSRVの背後の異次元からシュルシュルと浮遊する盾、魔ローンが出現した。


「先手必勝!!」


 スピネルは迷い無く片腕のSRVに切り掛かった。

 バシーーーン!!

隙無く瞬時に魔ローンがデスペラードの剣を弾き返す。


「これが浮遊する盾!? しかしフルエレの専用装備ではないのか?? 今は誰が乗っている??」


 すかさず後退して体勢を立て直すデスペラード改。


「お前の相手はこっちだ!!」


 セレネが間髪入れずにデスペラードに切り掛かる。

 カキーーーン!!

スピネルもそれを余裕で弾き返した。


「この動きはフルエレでも砂緒でも無いな……剣の巧みな者が乗っている、ならばっ」


 スピネルはこの時の為にかねてより用意していたもう一本の剣を抜いた。


「二刀流でお相手いたそう!!」

「むっ二刀流か面白い」


 スピネルのデスペラードが先手を取って二本の剣で次々に攻撃を繰り出した。

 カキーーン、コキーーーン!!

しかし全てセレネの巧みな剣捌きにかわされてしまう。


「この操縦者やるな……あたしが並の操縦者なら圧倒されていただろう」

「そんな凄いですかセレネ?」

「ああっ強いと思う」


 剣を交わしながらセレネは相手が並の者では無いと悟った。スピネルは何度も魔ローダーの戦闘を繰り返す内に元々の持っている素養以上にさらに強い剣士として覚醒しつつあった。


「どうだっ!!」


 カーーーーーン!!


「あっ」


 感想を述べるという一瞬の油断の隙の足元をすくわれ、セレネが剣を弾き飛ばされた。くるくると回転した剣は夜陰の中遠くに飛んで行ってしまう。


「やばいです、あの魔法剣無くしたら替えが効きませんよ! 探しに行くんです!!」

「わ、分かってる。メランさん済まない、すぐに戻る」

『ええっ!?』

『望む所です』


「今の内にっ!!」


 スピネルのデスペラードは非常に速く強い蛇輪への止めを潔く諦め、蛇輪が剣を探しに行く隙を突いて間髪入れずに片腕の青いSRVに向かって行く。


「だから代わりなさいって!」

「嫌ですっ!!」

「きたーーーー!!」


 バシーーーン!!

やはりスピネルの巧みな剣捌きでも浮遊する二機の魔ローンに全て弾かれてしまう。


「こっちからも、ほらっ!!」


 弾き返した魔ローンの隙間からミミイ王女が剣を突き出す。


「おっと危ない!!」


 さっと避けるスピネルのデスペラード改。


「むう、あの浮遊する盾……どうすれば良いか?」

「そらそらそら、うかうかしていると死ぬわよっ!!」


 浮遊する盾に余裕を感じてミミイ王女が攻勢に出る。片手で器用に何度も何度も剣で切り掛かりさらには突きを出すが、全て余裕で交わされてしまう。先程からメランが代われ代われと言っているが、単なる魔導士であり剣の達人でも何でも無いメランは、はっきり言えばミミイ王女よりも操縦の腕は下である。つまりこの場でミミイ王女が操縦中で幸運であったと言える。


「どうすれば良いか……あの浮遊する盾に弱点はないのか? こうすればどうかな??」


 スピネルは二本の剣を巧に使い、SRVに間合いを詰めると、なんと器用に浮遊する魔ローンの裏側に剣を廻りこませて、裏面から剣を突き立てた。

 ドカーーーーン!!


「きゃーーーーーーーっ!!」


 いきなり一機の魔ローンが爆発して兎幸が叫び声を上げる。操縦者に痛みが伝わるという魔ローダーの仕組みが何故か兎幸の魔ローンにも適用されていて、兎幸が激しい痛みを感じていた。


「兎幸さん!?」

「大丈夫!?」

「いたいよ……」


 一機の魔ローンを撃破して満足気にスピネルは一瞬後退する。


「うむ……あの浮遊する盾、表面は硬いが裏面はカブトガニの腹面の様に柔らかい様だ……潰せるではないか」

「おおーーーーっ!! スピネル様は天才か!?」


 砦の上で松明や魔法ランプを付け、固唾を飲んで魔ローダー同士の戦闘を見守っていた城兵達が歓声を上げる。ちなみにスピネルの言うカブトガニとはこの異世界のモンスターの話であり、我々の現実世界のカブトガニの腹が柔らかいかどうかは不明である。


「メランさんの機体で何かあったみたい!? 剣は諦める??」

「いや、あの機体相手に剣が無いと難しいでしょう、とにかく探しましょう、この辺りに落ちた気が」

「誰だよ! 夜襲なんてしようって言ったのは……」

「セレネでしょう……」

「うん」


「では止めを刺させてもらう!!」

「わーーーーーっ来た!!」


 スピネルは一瞬後退して呼吸を整えるとすぐさま第二撃を加えた。

 バシーーーン!!

その攻撃は魔ローンが受け止めたが……


「二刀流が効果をっ!!」


 スピネルは剣を受け止めた魔ローンにほぼ同時にもう一本の剣で器用に裏側を刺し貫いた。

 ドカーーーン!!


「キャーーーーーッ!!」


 残っていたもう一枚の魔ローンまであっさりと破壊されてしまった。


「い、痛いよ……フルエレ助けてっ」

「兎幸ちゃん!?」


 兎幸は初めての魔ローダー戦闘で感じる痛みにショックを受けている様子だった。


「悪いが容赦はせんっ!!」


 二機目の魔ローンを破壊したスピネルのデスペラードは一気に畳み掛ける様に二本の剣で切り掛かった。


「このっさせるかっ!!」


 ミミイ王女も必死に片腕で応戦するが、スピネルの敵では無かった。

 ザシュッ!!

あっさりと剣を持つ、残りの腕まで切り落とされる。


「ぎゃーーーーーーーーっ」


 今度はミミイ王女が肩口を押さえて絶叫する。


「ミミイ!? 逃げてっ後退よっ!!」

「はいっ!」


「させんっ! とどめっっ」


 スピネルは容赦なく操縦席に二本同時に揃えて剣を突き立てようと迫った。


「いやーーーー!!」


 ミミイとメランが恐怖で目をつぶった瞬間、カキーーーンとデスペラードの剣は上から叩き落とされた。蛇輪が剣を発見して戻って来たのだった。


「砂緒さんっ!」

「セレネさまっ!」

『済まない! ここは任せて後退!!』

「はいっ」


 魔ローンを破壊され、両腕を落とされ今度こそ戦闘能力を失ったSRVが遠慮無く後退した。戦場に到達した同盟軍側の魔戦車隊が両腕を失ったSRVの後退を見て声を失う。


「ちっもう少しだったのにっ!」

「だが、負ける気もしないっ!!」


 スピネルは素早く拾った二本の剣で猛烈に蛇輪に攻撃を再開し始めた。同様再び巧にかわすセレネの蛇輪。


「砂緒、雷! 魔法剣使うよ!!」

「お前さん今夜もかい? あたぼうよっ!!」

「なにそれ??」


 既に下の座席に移動していた砂緒が操縦桿を握り雷を出すと、暗闇の中蛇輪の剣が妖し気にぽうっと青白く光り、剣に無数の稲妻を纏わり付かせた。


「いっくよ~~~!!」


 セレネは闇夜で妖しく光る剣を高く構えた。


「これはっ!!」


 スピネルは一瞬で魔法剣の危険性を察知して距離を取る。


「スピネルさま押しています! 凄いです!!」


 オゴ砦のメドース・リガリァ軍駐留部隊から応援の通信が入った。


「よし、貴様達は速やかに砦を放棄して撤退しろ! 私が出来る限り時間を稼ぐ!!」

「へっ?」


 押していると思っていた通信兵は声を失った。


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