進撃、あっさりロミーヌ陥落 下
「わーーーーーーーっ何だ!? 何か落として来たぞっ!!」
「ふしゅ~~~~~ふーい、着地成功!」
むくっと砂緒が立ち上がると、城兵の只中に居た。
「拙者、軍使でござ」
「撃てーーーーー!!」
躊躇無く周囲から魔法や弓矢、魔銃を滅多撃ちにされる砂緒。ドカンドカンという爆音と共に爆炎と白煙が立ち込め何がなんだか分からないくらいに見えなくなる。
「撃ち方やめっ! 何か分からんが跡形も残っておらんだろう……」
「いきなり撃つとは無礼では無いですか、私は軍使ですぞ」
煙の中から服がボロボロになった砂緒が笑顔で現れた。
「うわーーーーーっ!! 生きてる!?」
「化け物だ!!」
「撃て撃て!!」
「またれい!! 私は丸腰の軍使、話くらいは聞かれい」
今度ははっきりと軍使という言葉が聞き取れて城兵達は相談し、より上の者に報告する事となった。
「そうだ、上官の判断が出るまでにそなた達城兵にコーヒーでも振舞おうぞ! 一座建立の精神で和平も進もうと言うものじゃ! お湯を所望いたす」
砂緒はかねてより計画していた千利休の映画で観た戦場での厳しき茶会を真似しようとして、腰にぶら下げて来た何の拘りも無い粉のインスタントレギュラーコーヒーを入れようとした。
「ありっありっ? 無い……」
腰にぶら下げて来たコーヒーカップと粉のコーヒーは着地時の衝撃とその後の滅多打ち攻撃で欠片も無く消え失せていた。砂緒の一座建立計画はあっさり頓挫した。
「上官どころか王様からの返答が来たぞ、帰れ! とのお達しだ」
砂緒に向けて無情な返答が来た……皆の前で大口を叩いたにも関わらず完全な失敗、それだけは避けたかった。
「仕方ない、こうなれば最後の手段、暴力解決ッッ!!」
砂緒は両掌をわしっと獣のポーズにするとバリバリと眩い稲妻を放出し始めた。
「ハハハハハ、逆らえば黒焦げになるぞ! どうだハハハハハ!!」
徳の欠片も無い悪に成り下がっていた。
「撃て撃て!!!」
再び凄まじい攻撃が再開されるが砂緒はものともせずに突き進んだ。
「なんと……セレネ此処はまだまだお城の端っこではないですか……仕方ない」
砂緒は攻撃を無視して突き進み、前に立ちはだかる敵兵達を手を抜いた電撃で攻撃して気絶させたり、力を込めた拳で飛ばしたりしながらどんどん城の中心に向かって行った。
「はあぁあああああ!!!」
城壁にぶち当たったので、最大限硬化させた拳で壁をぶち壊す。この行動を何度か繰り返すと、とうとう王城の中心に辿り着いた。
「王様っ! 軍使と名乗る尋常でない頑丈な人物が攻撃を物ともせず、壁を壊しながら突き進みとうとうこの王の間直前にまで迫っております!!」
家臣が慌ててロミーヌ王に伝えた。
「おお、なんという事じゃ!? 誰かどうすれば良いか分かる者はおるか??」
「王の前で恐れながら、その迫って来ている者とは銀髪に三白眼に虚ろな目をした色白のヒョロっとした子供ですか?」
突然王の間を守る下っ端城兵が家臣に尋ねる。
「おお、正にそんな感じの子供だ!! 知っておるのか??」
「あああああーーーーゴーーレムだ!! 銀髪に三白眼に虚ろな目、アイツだ!! うわああああああああああ」
初回で砂緒に仲間が殺されてじっちゃんがーと言いながら逃げたニナルティナ兵が流れ流れてこんな所に居た。
「王様、奴は恐ろしく堅い上に雷が出たり大岩をぶち抜いたり人間では勝てません。きっと王様を殺しに来たので御座います!!」
さらにその後の活躍の情報まで仕入れていた。
「あわわわわわわわ、なんたる事じゃ……」
「王様、あ奴は軍使と自称しております、正式に会われて見ては?」
「うむうう、そうじゃな」
そうして軍の使いが砂緒に一時戦闘停止を申し入れ、玉座の間で会談が行われる事となった。
「おお、ようやくロミーヌ王にお会いできて光栄でござる、拙者同盟軍の軍使、是非とも同盟国との和平を申し入れたい」
「うむうう……一体どの様なメリットが我らにある?」
「はい、王様及び全国民の安泰、領土の安堵さらにはメドース・リガリァからの侵略の防衛義務と至れり尽くせりにござる!」
「うむうう、いい事ばかりだが、そなたらには何のメリットがあるのだ?」
「はい……ここロミーヌをメドース・リガリァ侵攻の拠点と致したい。それだけにござる」
「民に……迷惑は掛けぬな?」
「ええ、織田信長方式で民に乱暴働く者おれば、首をばさっと切り落としますぞ!!」
「……先程からそなたはゴザルだのノブナントカだの、何を言っておられるのだ?」
「独り言でござる」
「ふざけておるのかっ!!」
「大真面目にござるっ!!」
王様は砂緒の迫力と断言に押され長考に入った。しばらくしてようやく口を開く
「北部海峡列国同盟か? それはメドース・リガリァに勝てるのじゃな?」
「もちろん大勝利間違いなす!」
(なす?)
しかし元々の国力差においては旧ニナルティナを中心とする同盟の方が圧倒的なのは自明であった。ニナルティナが国力回復したならメドース・リガリァに勝ち目は無いと王様も判断した。
「よかろう……それでは我らロミーヌ王国は同盟に降ろう……皆の者分かったか?」
「ははっ」
「王様に従います」
重臣達は頭を下げた。こうして砂緒の活躍によりロミーヌは、ほぼほぼ無血開城となった。
「そこっ! そこの槍持ってる兵隊さん、君会った事ありますかね?」
(ヒッッ覚えてるッ!?)
砂緒はじっちゃん言ってた兵隊に指を指した。男は心臓が止まりそうな程ドキッとして死ぬほどに冷や汗が出た。
「き、ききき気のせいでは無いでしょうか……」
「そうかもね」
砂緒はくるりと踵を返すとあっさりと玉座の間を後にした。
157部分が約五千文字になっていて長すぎるので二つに分割しました。
 




