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進撃、あっさりロミーヌ陥落 上

 その場で即日進撃する事と決まった。


「では皆さん、片腕を天高く掲げて下さい気合を入れます」


 突然砂緒が妙な事を言い出した。


「だから砂緒目立つなと言ったばかりだろーに……皆済まない言う通りにしてくれ」


 ぶつぶつ言いながらも砂緒の言う通り皆に命令してしまう大甘なセレネだった。衣図ライグや兎幸(うさこ)などごく一部にノリノリな者達も居たが、大半が同盟軍総司令官のセレネ王女に言われて仕方なく言う事を聞き片腕を掲げた。


「〇は〇一家ファイアーッッ!!!」

「ファイアーッ!!」

「……なんスかこれ……」


 最後のラフの言葉が皆の気持ちを代弁していた。



 メドース・リガリァ自体はもともと小国の一つであり、自慢の魔ローダー部隊が壊滅した今、野戦に出す兵も各地に散っておらず、同盟軍は文字通り無人の野を行くが如くで簡単にロミーヌ王国の都市国家を包囲する事が出来た。


「魔ローダー部隊出撃!!」


 残存していた魔戦車部隊を前面に押し出し、その背後から魔導士部隊が大型攻城魔法を撃ち始めてしばらくした後、セレネ自身が命令して背後にしゃがんで控えていた彼女と砂緒の乗る蛇輪と、メランのSRVが現れた。


「よし、軽く城壁に迫って脅しを掛ける!!」

「はいっ!!」

「兎幸、メランの機体に魔ローン展開です!」

「は~~い! 出てッ魔ローン二機展開!!」


 兎幸が命令すると、青い量産型魔ローダーSRVの背後の異次元から二機の魔ローンがガ〇ラの様に回転しながら出現した。


「うわあああああ魔ローダーが出ましたっ!!」

「良いから撃て撃てっ!!」


 現れた二機の魔ローダーに向かって、城壁の上から魔導士が魔法を弓兵が弩や魔銃を撃ちまくるが、当然ながら全く効果を発揮せずに全て弾き返される。特にSRVの方はわざわざ兎幸が魔法攻撃を浮遊する盾の魔ローンでわざわざいちいち弾いていたが、そんな事せずとも効果はもともと無かった。


「兎幸ちゃん、めんどくさいでしょうしいいですよ」

「ううん、面白いからやってるのっ!」

「ゲーム感覚なのね」


「敵軍三千から四千に魔戦車が二十両、それに魔ローダー二機、我らでは勝ち目がありません!」

「全て攻撃を跳ね返されています!」

「開戦前に軍使が開城を求めて来ていましたが、突っぱねて良かったのでしょうか?」

「メドース・リガリァから援軍の魔ローダーは来るのでしょうか?」

「派手に魔ローダーがやられたという噂が広がっていますが……」


 大混乱に陥るロミーヌ軍。それも仕方が無いだろう、なにせ元々スピネルとサッワの二機の魔ローダーだけで簡単に陥落した小国家群である、本来ならあっさりと降伏している様な国が今なんとか踏ん張っているのはメドース・リガリァから援軍が来るかも……という一縷の望みだけであった。


「王様、遂に同盟側にも魔ローダー二機が現れ城壁に迫っております!」

「本気を出せば一瞬で城壁を壊され、敵兵が城内になだれ込むかと!」

「なんと過去メドース・リガリァが攻めて来た時と全く同じ事がまた起きておる……悪夢を見ている様じゃ……如何すれば良いと思う?」

「もし今即座に降伏してその後にメドース・リガリァから大軍が攻めてくれば裏切者として我らまで攻撃されましょう、今しばらく援軍の到着を待ってみれば? 敵魔ローダーは積極的に城壁を壊す訳でも無く、もたもたしておりまする」

「うむう……」


 ロミーヌ国の王様ですらメドース・リガリァ軍の全体像は把握していなかった。実際には火の車であったにも関わらず、余りにも破竹の勢いで勢力圏を広げた為に敵味方双方から過大に戦力を評価されていた。その為に王様はもう少し待とうという結論に至った。


「ちっ多少脅したくらいでは動かんか……」

「城壁の一つでも壊してみますか?」

「いや、そうするとかなりの犠牲が出てしまう。同盟国軍最初の戦闘であるこの戦いではなるべく犠牲を出したくない。綺麗ごとでは無く、我々がメドース・リガリァの恐怖支配からの解放者というポジションを手に入れる為だ」

「あのーーお二人さん忘れていませんか?」


 セレネとメランの会話に砂緒が割って入る。


「あっ砂緒さんミサイル作戦ですね!」

「悪い魔法秘匿通信を切る!」


 セレネは魔法秘匿通信を切った。


「砂緒は頑丈だから大丈夫だと思うが、万が一にも気を付けてね」

「なんだ心配してくれてたんですか?」

「当たり前でしょ、心配しない訳ないでしょ」


 セレネが先程までの厳しい顔から一転、いつもの砂緒に見せる自然な表情に戻った。


「ほらほら、そんな感じで皆と接してみたらどうなんですか?」

「また言うの? 普通は……」

「普通は?」


 セレネが何か言いかけて恥ずかしそうにして黙り込む。


「普通は、自分だけに優しい面見せてくれるって嬉しがるもんだぞ……」


 セレネが照れに照れながら言った。


「あっなる程……私人類愛や博愛精神が強すぎてそういうの分かりませんでした……つまりこのセレネの表情は私だけの独占物という事ですか」

「だからそういう事いちいち言うなよ恥ずかしいだろ」

「じゃっそういう感じで行って来るんでセレネ空中投下お願いします!」

「あっさりしてんな~~」


 言われてセレネは人間形態のまま翼を広げると都市国家の上空に飛び上がった。


「いいですか、私を中心の曲輪の王城に投げ入れて下さいよ!」

「はいはい……じゃ、アレする?」

「え、こんな時にあんな事をしてしまうんですか? 尋常じゃないですね」

「違う! 行ってらっしゃいのアレだ」


 言われてみて砂緒は救出した直後とか特殊な状況でない場面でセレネと普通にキスするのは初めての気がして非常に照れて来た。


「手を」

「うん」


 操縦桿から片手を外し、指を深く絡めて手を繋いでキスをした。しばらくして二人共離れると照れて無言で砂緒は下の座席に移動した。


「セレネ、戻るまでに……」

「戻るまでに?」

「胸を大きくしといて下さいっ!」

「出来るかっ!!」


 バシャッとハッチが開くと下を確認せずに砂緒が飛び出るので慌てて受け止めるセレネ。怒ったままの勢いでそのまま城に向けて砂緒を放り投げた。


「オラアッッ!!」


 びゅーーーんと本当にミサイルの様にすっ飛んで行く砂緒は、空中で硬化して両手で両足を抱える。

 ドカーーーーーン!!!

そのまま砂緒は弾丸の様に城の石畳にめり込んで止まった。


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