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進撃 軍議で……

 次の日、ユッマランドの侍女が死亡し戦場となった地には既に陣地が構築され同盟軍が駐屯し既成事実化され、北部海峡列国同盟軍の前線司令部となった大型天幕が建てられており、そこに主要人物が集まった。当のユッマランド美魅ィ(みみい)王女も大急ぎで昨夜の内に帰国し、父王に謝罪と軍の再編をお願いしてUターンして戻って来ていた。


「それで、最初の攻略ターゲットはロミーヌで異存無いな?」


 皆の前に立つ、リーダー格のユティトレッド魔導王国の王女セレネが何時にも増して偉そうに地図に棒を差して皆に聞いた。この場で今後の方針を決める軍議が開かれていた。


「なあ砂緒、あの髪の長い女の子って、リュフミュランの冒険者ギルドにあった喫茶スペースで一瞬だけウロチョロしてた娘だよなあ? あんなキャラだったか?? ていうか眼鏡掛けてなかったか?」


 こそこそと小声で衣図ライグが砂緒に聞いた。


「あーーそうなんです、あの眼鏡の子がユティトレッドの王女だったのですよ、それが色々ありまして今では私の大切な彼女となっているのです……プライバシーの問題で詳細は言えませんが、あれで実は可愛い子なのですよフフフフフ」

「なにいい!? マジかよあの厳しそうな子が砂緒の女だって!? 信じられねえ、そういやフルエレ嬢ちゃんはどうなった? イケメン魔戦車司令官と帰っちまったぞ?」

「あーーーあれは私がお目こぼししてやっている精神的浮気の一つです。飽きたら私の元に帰って来るでしょう。私はフルエレもセレネも平等に愛しているのですよ……ふふ」


 ここまで聞いて来て衣図ライグは急激に砂緒の話の信憑性が低い気がして来た。


「ほーーーそりゃ大変だねえ、俺には無理だよすげえな砂緒はよ」

「ふふふ、このくらいの甲斐性は私にもあります……」


「そこっ! 何をこそこそ話しておいでか? 何か意見は??」

「分かりましたっ」


 砂緒は指を指されると何を思ったかすくっと立ち上がり、わざわざセレネの立つ壇上に上がって来た。


「いや、こんで良い、てか来るなっその場で何か言うなら言え」

「私とセレネの並々ならぬ仲ではないですか、遠慮しないで下さい」

「遠慮じゃねーって」

「ええっ、まさにこのままロミーヌに進撃し、さらにそのまま北上してオゴを陥落させ、メドース・リガリァ共の同盟首都新ニナルティナ侵攻の野望を挫く事が最も肝要だと思ってござる」

「ござる? どうだ、皆さん反対意見はあるか?」


 セレネが訊くが誰も意見しない。


「それで良いんじゃねえかな?」


 真っ先に戦場に舞い戻った西リュフミュラン軍の衣図ライグが同意した事で事実上の決定となった。


「一つお聞きして良いか?」


 ユッマランドの中堅幹部が訊いて来たのでセレネが応えた。


「何だろうか、どうぞ」

「はいありがとう御座います。では、先程からセレネ王女の横におられる砂緒さまとは一体どこ国の王族で王子なのでしょうか? 一体何故この場で幹部であるかの如く振舞っておられるのでしょうか?」


 何かとてつもなくどうでも良い事が気になるタイプの人物だった様だが、階級社会ではこの手の事を気にする者も実際多かった。


「……それは、詳しい事は言えないが新ニナルティナの重臣だ」

「あーーそれについては私自身から言いましょう、私はどの国の王族でも王子でも重臣でもありません。強いて言えば元リュフミュランの騎士でしたが、今は無位無官ですな」

「ほほう、何故その様な御方が我々を指導するかの様に振舞われるのでしょうか?」


 どうやらこの男は砂緒の存在が煙たかっただけの様だ……


「何故かと言えばそれは私が同盟軍の総司令官であるセレネ王女の愛人であり蛇輪の操縦者だからです!」

「なっなんですか」

「はははははは、そりゃいいやっ!!」


 聞いた軍人は絶句して、衣図ライグ一人が大笑いした。


「こらっ!! 今のは冗談だからな、皆の者本気にするな、しかし蛇輪の所有者である雪乃フルエレ同盟女王から蛇輪の管理を任されている、つまり専属パイロットであるのは事実だ。だから士官と同格である!」


 等と必死に弁解しているセレネの顔は、火が出そうな程に真っ赤になっていたので、皆なんとなく悟った……しかし、砂緒は魔力が一切無いので単独では操縦出来ないのだった。


「で、私が思うにただ単に魔ローダーの力で無理やりねじ伏せて開城させても意味が無いと思うのですよ」

「というのは?」


 仕方なくセレネは話を聞いた。


「メンドなにがし国が魔ローダーが無い小国群を力でねじ伏せたのと同様、再び敵の魔ローダー不在を狙って同じ事をしても徳を示す事は出来ません。それならば我々は徳を持って開城を迫れば一層同盟の評判は上がり、その後の統治にも有益となるでしょう」

「なんと……砂緒の癖に立派な事を言うな……」

「癖には無いでしょう」

「では徳でもって開城を迫るとは具体的にどうするのだ?」


 セレネが横に立つ砂緒に尋ねた。


「そこで砂緒ミサイルの登場です、セレネ一尉。ある程度手抜きで城攻めをした後にセレネ一尉が上空の蛇輪から砂緒ミサイルを投下して待っていて下さい、軍使の私があっさりと開城を成功させましょう」

「………………」


 すると先程砂緒にケチを付けた軍人が再び発言する。


「すいません、セレネいちいとは何ですか?」

「ああ、セレネ一尉とは私とセレネが二人で居る時によくやるプレイの一環で役職で呼び合う事があるのですよ」

「……ぷれい?」


 男が怪訝な顔をする。


「はいはい、プレイとは二人で色んなコスプレをしたりして楽しむ事です!!」

「はぁ?」

「こらーーーっ! 皆が本気にするだろが?? 今は全軍の司令官として厳しき王女をやってるんだ、旅の間の変なノリを今出すなって」


 セレネが砂緒の首を掴んで小声で叱った。


「……もしかしてセレネ、照れてます? そんなセレネに萌えて来ました……」

「燃え?」

「今セレネは衆人環視の中、激しい羞恥に身悶えているのですね? 私興奮して来」

「うるさいわっっ!!」


 ガスッ!!

セレネは砂緒を殴り飛ばした。


「あの良いでしょうか?」

「メ、メランさんど、どうぞ」


 セレネの普段を知るメランに急に緊張するセレネが指し、メランが立ち上がった。


「砂緒さんの計画で私も良いと思います。しかしその為には脅しとして蛇輪一機では心許ない。そこで私のSRVを片腕のままでも出撃させて下さい。それにニナルティナには速き稲妻Ⅱが修理完了次第送ってもらえるようにお願いしたいです」

「おお有難い!! 是非に頼む」

「むむ、それだともし万が一仮にメドース・リガリァの敵魔ローダーが出て来た時に危ない、青いヤツにはメランと兎幸(うさこ)を乗せれば良いと思います」

「わーーい! 私も砂緒の為に戦うよっ」

「そ、それは有難いです……」

「では決まりだな……」

「あの……王女さま、恥を忍んでお願いしたい」

「ああ、どうぞ」


 美魅ィ王女が恐る恐る手を上げて、セレネが急に恐ろしく冷たい目で発言を許可した。


「私も是非に戦いたい、ユティトレッドには魔ローダーをさらに送ってもらえる様お頼みしたい」

「よかろう……私から伝えておこうぞ」

「ははっ有難き幸せ……」


 セレネ王女はふんぞり返り、ミミイ王女は平身低頭して礼をして座った。


「何故セレネはそうして時々とてつもなく冷たく偉そうにするのですか? 二人きりの時はあれ程可愛い子なのに……」

「うるっさいわっ黙れそういう役割なんだよ」


 そのまま軍議は閉会となった。結局砂緒の提案通りに進める事となり、皆は総司令官の愛人パワーだとひそひそと噂し合った。


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