サッワとココナツヒメの失脚と投獄とクレウ
―メドース・リガリァ魔ローダー格納庫。
先程またまた半壊したココナツヒメのル・ワンとサッワのレヴェルが瞬間移動して現れ無残な姿を晒していた。
「何だと! ココナツヒメ殿から頂いた五機の新型魔ローダー部隊が全滅だと!? しかもサッワが勝手に出陣して勝手に敵を挑発して、それで全滅だと!? なんたる事だっ!! 貴様何という事をしてくれた??」
「申し訳ありません……どの様な罰もお受けします……」
メドース・リガリァの事実上の独裁者である貴嶋に怒鳴られサッワは力なくうなだれた。
「サッワちゃんは悪くないのよ、わたくしが新型魔ローダーの実力を披露したいとサッワちゃんを誘ったのよ……それがあの憎き雪乃フルエレのメッキ野郎が出て来て……あんなの反則よ、あんな化け物誰も勝てないわよ!!」
ココナツヒメがサッワを庇って必死に弁解した。
「ココナツヒメ殿にはいつもご支援痛み入る。しかしこれはメドース・リガリァ軍の話、口を挟まないで頂きたい。サッワ、貴様には頭を冷やす為にしばらく牢に入ってもらう事になる。連れて行け!!」
貴嶋が指図すると衛兵達が頭をうなだれたままの無言のサッワを引き連れて行く。
(フゥー、フゥー死んでしまったのか……)
そのサッワの頭の中は、死んだ美女部隊とフゥーの事で一杯だった。
「どうか、サッワに御寛大な処置を……私は抱悶さまにさらなるご支援をお願いして来ますわっ!」
「それはそれは」
怒って良いのか感謝すれば良いのか良く分からなくなった貴嶋を後目にココナツヒメはそそくさとその場を後にして、ル・ワンの瞬間移動(単)を連発してまおう軍本拠に戻って行った。
「貴嶋さまお呼びですか?」
呼ばれていたスピネルが現れた。
「うむ、かん口令を敷いたがサッワの自慢の美女部隊が全て撃破された。同盟の女王雪乃フルエレが乗る蛇輪とか言う旗機が遂に動き出したらしい、それにやられたそうだ」
「ほうあの機体がそこまで強く……」
「勝てるか?」
「正直に申せば勝てる見込みは御座いません、が」
「が、何じゃ?」
「が、あの機体は乗る者がくるくる代わる体制の様です。つまり乗る者が弱い時に叩けば勝てるかと」
「なるほど!」
「今以上に密偵の報告を重視して誰が乗っているか把握するのが良かろうかと」
「うむ」
「それでは私は国境の警戒の為に出撃して参ります!」
「おお、結局頼りになるのはそなただけじゃ! 頼むぞ!」
「ははっ」
スピネルは慇懃に頭を下げて思った。
(また滅びの影が……もうここも長くは無いな……)
思いながら何故かまた弁当屋の娘の顔が浮かんだ。もしこの国が滅びればあの娘はどうなるのだろうか??
―炎の国まおう軍本国、まおう城。
「ふざけるなっ!! また魔ローダーを欲しいじゃと!? 一体貴様、何機魔ローダーを持ち出しているのじゃ! 持ち出しては壊し持ち出しては壊しと魔ローダーは玩具ではないぞよっ!」
まおう抱悶は玉座でふんぞり返り大声で怒鳴り散らした。
「申し訳御座いません……返す言葉も御座いません……」
言われてココナツヒメは跪いて顔も上げる事も出来ない。
「お怒りは重々御もっともですが、恐れながら今メドース・リガリァは危急存亡の秋、我らが支援しなければすぐさま滅びてしまう恐れが……」
「うるちゃーーーーーい!! まだ分からんのかじゃっ!! そんなメンド何国など知ら―――ん!! 勝手に滅びよと前も言うたじゃろうにっ!!」
「しかし……あの国が滅びれば我らは直接同盟と相対する事になりまする……」
「知らん知らんっ!! それはお前の役目じゃろがいっ!!」
抱悶は幼い身体で熊耳のついた可愛い頭ごなしに怒鳴り散らす。ココナツヒメは平身低頭で耐えに耐えた。
「わたくしがどれ程貴方様の事を考えているか……決して私心などこれっぽっちもありません!」
「ならなおさら知らん、全てそなたが全部やれば良いのじゃ! 今回という今回はもう許さん、メンド何やらに支援もせん! お主はしばらく牢に入るのじゃ!!」
「そんなっ抱悶さまっ……ああっ酷い」
「連れて行け!!」
そのままココナツヒメは牢に連れて行かれた。
「何故……何故抱悶さまは分かってくれないのかしら……」
「ココナ、大丈夫か?」
突然何も無い所から声がしてココナツヒメは辺りを見渡した。
「クレウです、目の前に居ます……」
「どうして貴方が此処に?」
「する事が無くて暇なので来てみました」
「まあやらしい……わたくしの身体目当てなのね」
「違います……帰りますよ、何か必要な物はありますか?」
「そうね、じゃあ手を繋いで頂戴な」
「は、はぁ?」
二人は牢の鉄格子越しに手を繋いだ。
「このままでしばらく居て頂戴な」
「はい……」
(猫呼さまフルエレさま、これも生きる為なのです、お許しを……)
(雪乃フルエレ……覚えてらっしゃい、何時か貴方の息の根、止めて差し上げますわ……必ず)
ココナツヒメはクレウの手を握りながら氷の様な暗い目でキッとあらぬ方向を睨んだ。




