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捕虜美少女、フゥーの取り扱い

「そいつが、その子が璃凪(りな)の命を奪った、殺した連中の仲間……許せないっ死ねえええ!!」


 魔法詠唱出来ない様に口にまで全身に拘束輪が掛けられた捕虜フゥーを見た途端に美魅ィ(みみい)王女が激高して剣を抜き切り掛かる。その様子を見たラフはびくっとして飛び上がるが、フゥーは身動ぎ一つしないでじっと自分に切り掛かろうとする王女を他人事の様に冷たい目で眺めていた。


「ちょっこれどうしたらいいんスか? 俺一緒に斬られそうなんだけどな~~」


 カーーン!!

あたふたするラフの目の前で久々に硬化した砂緒が大理石の乳白色の腕でミミイ王女の剣を叩き折った。


「何ですかこの騒ぎは? エセフェミニストであるこの私の前で美少女を斬る事は何人たりとて許しませんよっ」

「エセなんだ? しかしいきなり捕虜を斬るとは何事か! この捕虜は同盟の物だ、ユッマランドの美魅ィ王女の私有物では無いぞ! 勝手に切り捨てるなど言語同断、この少女は然るべき厳しい詮議を受ける事となる!」

「は、申し訳ありません……」


 セレネに厳しく注意され、急にショボンとするミミイ王女だが、一瞬フゥーをキッと睨んで視線を逸らした。


「セレネ、この少女は私が責任を持って素敵なレイディになって社交界デビューするまで育て上げますゆえ、ご安心を」

「それが一番危ないわっ、お前は兎幸(うさこ)先輩で前科があるだろが! それに捕虜だって言ってるだろうが! 社交界デビューさせてどうする……」

「セレネッ、それは人前では言ってはいけないヤツですよ」


 急に砂緒がキョロキョロして世間体を気にする。


「バカッ! さっきあれ程注意したばかりなのに、カッとなって今日大失敗した事もう忘れたの? 死にかけたんだよ? そんなミミイだと私友達にはなれないよ」

「済まない……今後は気を付けよう、機嫌をなおして欲しいメラン」


 メランにまで注意されてさらにショボンとするミミイ王女だった。


「凄い、メランちゃんあの強情な王女を操縦してやがるぜっ! さすが魔ローダーの操縦者だなあ」


 衣図ライグが変な感心をした。


「ふぅーどうやら私が素敵なレイディに育てあげるしか無い様ですなあ」

「どうしてそうなる?」


 今のふぅーはため息であり、フゥーの名前を呼んだ訳では無い。それは兎も角再び砂緒がフゥーを奪おうとした時、騒ぎを聞きつけて雪乃フルエレがシャルを引き連れて乗り込んだばかりのリムジンタイプ魔車から出て来た。


「一体何なの? その少女が捕虜の子なの? 私砂緒っててっきり年上のお姉さん好みだと思っていたのだけど、そんなちっちゃな子にまで執着するのね、意外だわ……」

「おや貴方光源氏を御存じ無い?」

「誰よそれ」

「普通に変態で犯罪者なだけだろ、フルエレ早くこんな危ないヤツと縁切った方がいいぜ!」

「はぁ? この目付き悪いガキも来てたんですか? 仕方ありません戦場の事故という事で抹殺して差し上げましょう!」

「おお、やれんのかコラ??」


 砂緒の掌から電気がほとばしり、シャルが戦闘でどう使うのかは不明だがギルティハンドを地面に伸ばした。


「なんと!? それはゴムのアレ的な人がグイーンと伸ばすアレではないですかっこの目で実際にお目に掛かれるとは……!!」

「へへっお前にかわす事が出来るかな??」

「ちょっといい加減二人共やめてっ!! どうして仲良く出来ないの?? お願いよ……」


 二人の間にフルエレがバッと割って入る。


「はいはい、私の為に喧嘩しないでですか? フルエレさん結構なご身分ですよね。丁度良いです、注意してその捕虜を新ニナルティナまで連行して下さい」

「えっ私が?? 何でそんな事しなきゃならないの?」

「少しくらい役に立って下さい!!」

「仕方ないわね、シャルその子をトランクに詰め込んでちょうだい」

「フルエレ、冗談だよな?」

「冗談よ」

「おらっキリキリ歩け!」


 シャルがこれ見よがしに拘束輪が足首まで掛けられて歩き辛いフゥーの背中を軽く小突く。


「こらっ! レディーには優しくせんかっ!」


 何故か偉そうに怒鳴る砂緒。しかし同世代のシャルを見ていて、フゥーはサッワの事を思い出してしまう。フゥーは特に彼に優しくされた訳では無いが、どうせならサッワと居た方が良かった。


(サッワさま……)


 それまで無表情でいたフゥーが突然ポロポロと涙をこぼした。


「あー、砂緒女の子泣かしたーーー!!」

「何故??」


 兎幸が嬉しそうに砂緒に指をさした。そしてフルエレとシャルはフゥーを連れて、アルベルトと猫呼(ねここ)が待つ車内へと戻って行った。


「今思ったんだけどさ、砂緒のハーレムにフルエレさんが居るんじゃなくて、フルエレさんの逆ハーレムの一番下っ端要員が砂緒なんじゃないか?」

「……セレネ何ですかそれ、少なくともあのシャルとかいうガキよりは地位は上のはずです!」

「望み低っ! ていうか否定しないのな……」



 猫呼のイケメン運転魔導士が運転するリムジンタイプ魔車の長い車内では走りだした景色を見ながらフゥーが遠い目をしている。


「変な気を起こさないでね、悪い様には扱わないわ。そうだ、喫茶店で働く??」

「冗談でしょ??」

「ふんっそんな奴ほっとけよ」


 またシャルが突き放してフゥーは遠くを見る。


(サッワさま……)


 車内の会話など耳に入らず、フゥーはずっとココナツヒメやサッワの事ばかり考えていた。


「ねえ、フルエレくん僕の傷なんだけど君の回復のお陰で随分良くなってるみたいなんだ、だからさ、二三日したら此処の戦場に舞い戻りたいんだけど……」

「ええ? 冗談でしょう?? 許せないわ、訓練だけって言っていた物が戦闘になってアルベルトさんは瀕死になった、それは事実だわ」

「う、うんそうだね」

「前にアルベルトさん私に言うべき事は言うとか言ってたわよね! それで頬まではたきましたよね、その事は別に良いのよ気にして無いの、だけど今度は私がアルベルトさんをしばらく監督下に置きたいと思うの」

「監督下!?」

「そうしてもらうから!」

「う、うん……ああ」

「あらあらフルエレも厳しい事言うわね」


 猫呼は嬉しそうに笑いながら紅茶を飲んだ。この時ようやくアルベルトは雪乃フルエレが天使の様な可憐な容姿にほわほわとした普段の行動とは別に、誰にでもある大袈裟に言えば裏の顔とも言うべき、頑固で頑な我が強い一面がある事を悟った。


(でも……いいかフルエレくんになら)


 アルベルトは車内に居て、死んだ仲間達に心の中で礼をして、今生きて皆に囲まれている事を感謝した。

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