結集、集まる仲間たち
パシッ!!
いきなり雪乃フルエレが美魅ィ王女の頬をはたいた。
「ふ、フルエレくん!?」
「………………」
頬を押さえ黙り込む王女。
「貴方の為に皆がどれ程大変な事になったか分かっているの?? もう完全に死んでしまって戻ってこれない人も大勢いるのよ??」
「申し訳ありません、この責、どの様な罰も受けましょう」
美魅ィ王女はフルエレの前で跪いた。
「ただこの美魅ィ、命を拾われた以上は今後はフルエレ女王陛下に命を懸けてお仕え致します! 私を道具とお思いなんなりとお使い下さい」
「嫌よ気持ちわるいっ」
フルエレはミミイからそっぽを向く。終始フルエレはミミイ王女が苦手な様だった。
「気持ち悪い言うな」
セレネは二人のやり取りを冷めた目で見ていた。
「で、王女は今後はどうするのだ?」
「はっセレネさま発言が許されるのであれば……」
「許す、言えば良い」
「セレネさんや偉そうですね」
「うるさいわ」
美魅ィ王女がゆっくり立ち上がる。
「私は今から急ぎクラッカ城に戻り、全軍率いて休みなく間髪入れずにこのままロミーヌを陥落させたいと思います」
「な、この期に及んで何を言っているの? 反省してないの? もう一回叩かれたいの?」
フルエレが信じられないという表情でミミイ王女を睨み付ける。
「お怒りはごもっともです、後でどの様な罰でも受けましょう、しかし敵魔ローダー部隊を壊滅させ、敵地上兵も居ない今、メドース・リガリァに従う小国を一つでも陥落させる事が我ら同盟の気概を見せる事になるかと思います」
「ふざけないでっ! ねえ、皆!」
フルエレが同意を求めようと皆を見るが……
「あたしも美魅ィ王女と同じ意見だ。さらにはあわよくば、このままロミーヌの北にあるオゴも落としたい。さすればメドース・リガリァどもは同盟国への侵入経路を完全に失うだろう」
「セレネッ貴方って人は!? いつもいつも私の反対ばかり言って、こんな時にまで!?」
今度はフルエレはセレネまで睨み付ける。とにかく戦線が広がる事でアルベルトがまた戦いに出る事を恐れていた。
「恐れながらセレネさま、我が軍はさらにセブンリーファ後川南側の地域一体、出来れば唯一メドース・リガリァに含まれない海と山とに挟まれた小さき王国まで到達したいと願っております!」
「………………」
海と山との名前が出た途端、フルエレが元気を無くし黙り込む。
「うむ良いだろう、あたしも大急ぎでSRV部隊の派遣を行うようユティトレッド本国に命令する!!」
「有難き幸せ……」
美魅ィ王女が胸に手を当てセレネに跪いて頭を下げた。
「こんな偉そうですが、この子二人きりになると途端にデレッデレになるんすよ」
「ややこしい時に要らん事言うな」
「は、はぁ……所で砂緒さま璃凪の事はお聞きしましたか? 璃凪から貴方との関係は聞きました」
皆が一斉に砂緒の方を見る。
(要らん時に要らん事を言う女だな)
「は、はぁ……き、聞きましたが」
「お願い、璃凪の為に悲しんであげて、最後に肌を合わせた男として泣いて上げて欲しいの」
「わーーーーーーーーーーー!!」
「今なんつった?」
「何でもありませんから、本当に何でもありませんから」
「今なんか王女が凄い事言った気がしたが?」
「ははははははははは、気のせいですよセレネ」
「砂緒さま、心の中ででも良いので祈りの一つでもあげて下さい」
「は、はい……それはもう」
キキキーーーーーーッッ
突然皆の前に猛スピードでリムジンタイプ魔車が乗り付けて急ブレーキで止まる。
ガチャッ!!
開くドア。
「ああーーー間に合ったわっ! 皆生きてる生きてる良かった良かった! 走り通しでわたしのイケメン運転魔導士ちゃんがヘロヘロよっ」
「猫呼さまっこれしきの悪路など平気で御座います、どうぞなんなりとご命令を」
「猫呼っ! あんた一体何人イケメン囲ってるのよ……」
「お兄様に会えない心の隙間がわたしにこんな行動に走らせるのね……」
「違うだろう、ただ単にイケメンが好きなだけだろう……メンと言えばここら辺にグルメタウンがあって麺料理が盛んな様だな、よって私も戦いがあれば参加するぞ!」
「なんという不純な動機……というかイェラも来てたのか」
(しめしめ話を誤魔化せる)
「おお砂緒、私も戦うぞ!」
イェラがカチャッと剣を見せるが料理道具も持っていた。
「おおーーイェラじゃねえかっ! 久しぶりだな急に女らしくなってないか? 戦えるのか俺の下で」
「ハッ喜んで」
イェラは久しぶりに衣図ライグと再会して頭を下げた。
「知らないわ、皆して戦う事ばかり……私はアルベルトさんを連れて帰りますからっ」
「えっ僕まで?」
「どうぞお好きに女王陛下はニナルティナでどんと構えておいで下さい」
セレネが冷たく言い放つ。
「そうさせて頂くわよ」
「フルエレ……覚えていますか? 何か嫌な事があったら全て放り出したくなったら私はフルエレだけを守って漁村でも農村でも二人で隠れ住むと言った事を……」
リムジンに乗り込もうとするフルエレに砂緒は小声で言った。
「……覚えているわ……でも今はもう少し頑張ってみるつもりよ……」
「そうですか……でも私はいつでもフルエレを待っていますよ」
「ありがとう……砂緒はいつも私の味方なのにね」
「はい」
フルエレはリムジンタイプ魔車のドアを閉めると窓を開けて砂緒に手を振る。
「砂緒はどんな事があっても死なないけど気を付けてね」
「もちろんですとも」
砂緒は窓ガラスが閉まるのを見届けてセレネの方に歩いて行った。
「あの~~皆さん、盛り上がってるとこ悪いんですが、この拘束輪がかけられた捕虜の女のガキはどうしやがるんですか~~?」
スリかコソ泥にしか見えないラフが押し付けられて忘れ去られていたフゥーを持て余して皆に相談する。まさにヤバイ犯罪者にしか見えない構図だった。




