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美魅ィが見た空 

「回復! 回復! 回復! 回復! 回復!! お願い治って!!」


 捕虜の少女はセレネが拘束輪をかけて地上に置くと、砂緒に促されて雪乃フルエレは全力で蛇輪が習得した魔ローダースキル回復(強)を為嘉(なか)アルベルトに向かって重ね掛けした。

 シュバッッ!!

キラキラとした光る粒子がアルベルトの体に降りかかり、身体全体が白く発光した。


「うっっ……あれ……骨折が治ってる?? 信じられないよ」


 アルベルトは先程までの尋常じゃ無い身体全体の痛みが消えた事に驚いて、むくっと上半身を起き上げた。


「ああっ見て! 砂緒見てアルベルトさんが治った!! 貴方のお陰よ、ありがとう!!」


 フルエレは泣き声で砂緒に感謝を述べた。


「あーーーーそれはどー致しましてっ! 良かったですなあ」

「心籠って無さ過ぎすぎだろ」


 今度はフルエレ自ら操縦席に掌を添えて、オートでアルベルトの場所まで降りて行った。


「ああっアルベルトさんっ!!」


 今度はフルエレは全力でアルベルトを抱き締めた。


「ははっフルエレくんのお陰だよ、あと砂緒くん達にも……でも少し痛い、ちょっと緩くして」

「まあっごめんなさい! 大丈夫かしら??」

「あはは、大丈夫大丈夫!」

「うふふ」


 フルエレとアルベルトは離れて笑顔で見つめ合っている。


「なんすかこれ……なんで私フルエレのこんな場面見なくちゃいけないんでしょ、むしろ私がフルエレと抱き合ってる予定だったんですが……」


 砂緒は座席の上で三角座りしてぼそぼそと言った。


「狭いって座れんだろうがってかお前泣いてるのか?」

「泣いてません! でもセレネが居なかったら私即死してたかもしれません」


 言われて思わずセレネは砂緒の頭を胸に抱き抱えた。


「おーよちよち頑張ったでちゅね~~~」

「……しかしこれでもう少し胸があれば完璧だったのに、惜しいですね……」

「うるさいわ」


「フルエレくん、こうしている場合じゃないまだまだ怪我をした仲間達が居る! 済まないが出来る限りさっきの回復をして上げて欲しいんだっ」


 アルベルトはフルエレの華奢な肩に手を置いて訴えた。


「分かった! アルベルトさんはそこで休んでいて!!」


 フルエレは蛇輪の掌に乗るとオートで操縦席に戻った。


「兎幸、砂緒(すなお)セレネ、ここら辺の怪我人を出来る限り回復するわよっ!」

「へいへい」

「はぁ~~~い!」


 兎幸のみ元気に答えた……


「回復! 回復! 回復!!」


 次から次へと倒れている主に魔戦車隊の隊員達を助けて行くが、中にはユッマランド軍の兵達も回復して行った。


「はぁはぁ……生き返った!? 何故??」

「女神さまだっ! 同盟女王さまが回復して回っているらしい!!」

「聖女さまだっ!!」


 瀕死から息を吹き返したり大怪我が治って立ち上がった兵達が回復を続ける蛇輪に手を合わせて感謝する。


「おおおおおーーーーーーい!! 砂緒ぉ嬢ちゃん!! 戻って来たぜ!!」

「ありっ大将、敵の魔ローダーがいやせんぜ~~」

「よく見やがれ、もう全部砂緒達が倒しちまったんだよ!!」

「マジですか!?」


 ようやく衣図ライグ率いる西リュフミュラン軍が戦場に引き返した時には既に決着がついた後であった。


「衣図ライグが戻って来ましたね」

「ふんっ今頃戻って来てどうするのか!」

「セレネさんや生身の兵達なのです、魔ローダー相手にはどうにもなりません」

「砂緒の癖にまともな事言うなよ」

「セレネまだまだ回復して回るからね、協力してっ!」

「はいはいはい」


 蛇輪が回復して廻った後に衣図の西リュフミュラン軍が兵達を介抱して廻る。殆ど脳筋の連中だが、一通りの戦場救命の知識はあった。



「ハッ……」


 目を開けると一面の空が見えた。そして周囲には慌ただしく走り回る兵達に、介抱される人々。さらには戻って来た魔戦車隊に陣地を構築している人々やテントを設営している人々も見える……魔ローダーの爆発する白い閃光に巻き込まれた後、目覚めるとそんな状況になっていた。


美魅ィ(ミミイ)の馬鹿っ!! 最初から死ぬつもりだったの!? 貴方バカよっ」


 いきなりメランに抱き着かれる。無意識で腰にぶら下げた璃凪(リナ)の遺骨が入った小袋を握ろうとするがどこにも見当たらない。恐らく爆風で吹き飛ばされたのだろう、もはや探す事など不可能だった。


(ごめんなさい……リナ、生き返っちゃった……ごめんなさいね、もう少し生きさせて)


 気付くと美魅ィ王女は自分が涙を流している事に気付いた。


「何か言いなさいっ!」

「ありがとう……ごめんなさい……ううっ」


 メランとミミイはしばらく抱き合って泣いた。



「回復っ回復っ!!」

「げはっ!!!」

「ヒッ、魔法自動人形の兎幸が血を吐いたわっ!」

「ヒューヒュー、兎幸まだまだ大丈夫だよっゲハッ」

「わーーーやめやめ、兎幸の体が持ちません」

「あたしも正直言ってもう限界だ……」

「フルエレ、ここらへんで終わりとしましょう、貴方も疲れてるはずです」

「そ、そうさせてもらうわ……」

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