美魅ィ王女魔ローダー・ザンザスの危機
「早くしろ!」
どうして良いか分からず、ぼーっと立ち尽くすフゥーにサッワが発破を掛ける。
「あ、あのどうすれば良いのですか?」
「それくらい自分で考えろバカ!!」
「サッワ様、まだ相手は弱っているとは言え機体は健在、私達が支援しても良いでしょうか?」
「ふん、好きにしろ!」
「はいっ!」
サッワとフゥーのやり取りを見ていたアウララが助けに入った。この場では最強のココナツヒメのル・ワンは何もせずに少し離れた場所でじっと見ているだけだ。
「フゥーちゃん良い? 皆で一斉に切り掛かるから、その時に意図的に隙間を開けるわよ! そうすると必ずそこから逃げ出そうとするから、その時にあたしがコカすから、後ろからザクッと足を切り落としなさい! サッワさまもご協力を!!」
「おおーよ」
「はいっ!」
「いくよっ!」
美魅ィ王女のザンザスとメランのSRVを取り囲むだけで、一瞬動きが止まっていたメドース・リガリァ側の機体が一斉に同時に切り掛かって来た。しかしココナツヒメは相変わらずじっとしているので、それぞれ二対一の構図となっている。
「きゃーーー切り掛かって来た!」
「ちっ弄ぶ様にっ!」
それぞれ片腕を切り落とされた状態で、前後からの攻撃を必死にかわすザンザスとSRV。王女が言う様に本気で同時攻撃をすれば一瞬でカタが付くだろうに、微妙に攻撃の時間をずらし本当に弄ぶ様に攻撃を続けて来る。しかしその動きが微妙にメランと王女から見て、自国内への退路が開けた様に見えた。
「ミミイ、敵さん油断し過ぎて隙が出来始めてない?」
「メランちゃん、いっせーのっで領地に走るわよっ!」
「うんっ!」
「いっーせーのっ!!」
声を合図に王女とメランは敵を無視してダッシュで走り出した。
「作戦通り、フゥーちゃん!!」
「あ、ハイッ!!」
走り出した二機の内一機にアウララの搭乗するレヴェルがスライディングで足を掛けると、掛けられた王女の機体は簡単に転んだ。凄まじい土煙を上げてコケる、プレートアーマーを全高二十五Nメートルに引き延ばした様な魔ローダーの機体。
「キャーーーッ!!」
「ミミイ!?」
「行って!!」
「くっ」
一瞬躊躇したが、メランはここで死にたく無いと思い、よくある貴方を置いて行ける訳無いじゃない的な台詞を言う事も無く逃げ出した。
「しまった!」
「もう少し!!」
メランの目の前には二手に別れて魔戦車を攻撃しまくる敵魔ローダー二機がいる、自国領土が迫った。
「あらあら、味方を置いてっちゃうの?」
と、思ったのも束の間、じっとして動かなかったココナツヒメのル・ワンが瞬間移動(短)でメランの機体の前に現れた。
「ちぃいい!!」
ビシッ!!
ル・ワンは剣を使う事無く、手刀で簡単にメランのSRVから剣をはたき落とすと、腕を掴んでくるりと回し締め上げた。
「貴方は此処であの機体がどうなるのか見ておくのよ、うふふふふふ」
「ひっ」
量産型魔ローダーSRVの体は、伝説のいにしえの魔ローダール・ワンに締め上げられると全く動けなくなった。
「ココナツヒメさま有難う御座います!!」
「いいのよサッワちゃん、恨みを込めて存分にその機体を分解しちゃいなさい!!」
「はい! やれフゥー!!」
「は、はい……」
フゥーのレヴェルはコケて立ち上がろうとして、すぐさまアウララに蹴られてもう一度コケた王女の機体の右太ももをいきなり剣で切り落とした。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーっ」
「ミミイ!!!」
「残りの腕と足も斬れ!!」
「はいっ!!」
「ハッ!」
サッワに命令されて、アウララとヘレナが無造作に残りの腕と左足を切り落とした。これで完全に美魅ィ王女の機体ザンザスはダルマ状態にされてしまった。
「ミミイーーーーーーーーーーーーー!!」
「くふくふふふふ、あはははははは」
「ミミイ!? どうしたの!?」
絶叫するどころか笑い出したミミイにメランが驚く。
「く、い、痛い全身が痛い……よく昔璃凪と戦闘になったら二人一組で敵をめった刺しにしようねなんて言ってたけど……リナは死んじゃって、今度は私がめった刺しにされちゃった……王宮であれ程大事にされて育てられた私がこんな風に死んじゃうのね」
「何を言っているの?」
一瞬メランは王女が恐怖のあまり狂ったと真剣に考えた。
「連中の行動からみて、今度は私のコクピットハッチをこじ開けて必ず私を引っ張り出そうとするわ! その時に派手に自爆するからその時が最後のチャンスよ、必ず自領内まで逃げて……」
「何を言っているの!?」
王女を救いたいという一心では無く、例え走って逃げおおせたとしても、今度はユッマランド領内に敵魔ローダーが侵入して来て同じ結果になるだけだろうと思った。
「よし、全機で機体を抑え付けろ! そらっ!!」
「あああぁミミイッ!?」
ガシャーーーン!!
手足が切り取られ動けない状態のザンザスをアウララとヘレナとフゥーがなおも抑え付け、その状態でサッワがハッチを蹴ると、面白い様にハッチがぽーんと飛んで、遠くの地面に土をえぐって落着する。メランは恐怖のあまり両手で顔を覆った。
「げっ……お、女だ……しかも上玉……」
サッワのレヴェルが覗き込んだ瞬間、操縦席から外を睨み付ける王女と目が合った。
「サッワちゃんどうしちゃうの? そうだ捕まえてサッワちゃんの奴隷にしちゃえば? どんな事をしてもいいのよ、ンフフ」
「そ、そんな事してもいいんですか?」
「当たり前じゃないの、サッワちゃんは牢屋で酷い目に遭ったのよ、今度はその女を牢屋に入れて好き放題いたぶって、やらしい事してもいいのよ……」
「ごくり……」
僚機の各操縦席に魔法秘匿通信で聞こえそうな程大きく唾を飲み込んだ。




