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サッワの為の美女部隊と、けなげな美少女フゥー

「な、何だなんだ、何故ここに魔ローダーが!?」


 拷問係が腰を抜かしながら叫ぶが、突如現れた魔ローダーの上半身は激しい振動と共になおも上昇を続け、遂には頭が高い天井を突き破り見えなくなり、魔ローダーの操縦席がある胸部がサッワと拷問係がいる床と同じ高さになってようやく止まる。


「……ココナツヒメさま?」


 サッワにとっても見た事が無い新型魔ローダーであり、もちろん愛しのココナツヒメの半透明な魔ローダーでも無かったが、一縷の望みがその名前を呼ばせた。

 バシャッ

突然開いたハッチから数人の人間が飛び出して来た。


「サッワさまですかっ?」

「サッワさま確認っ!」

「魔法で鎖を断ち切ります!!」


 操縦席から飛び出て来たのは、知らない二人の美女と一人の美少女だった。しかし名前を呼ばれてサッワはココナツヒメの手の者だと瞬間的に理解した。


「何だ? 何なんだこの女達は!?」


 突然現れた美女達にたじろぐ拷問係。しかし魔ローダーが狭いスペースに無理やり入り込んだ為に、扉も階段も全て壊され、もはや脱出する術は無くなり残る壁に背中を貼り付けて経緯を見つめるしか無かった。

 パキパキンッ!!

サッワを繋ぎとめていた、金属の冷たく重い手枷足枷と鎖が断ち切られる。


「こ、こらお前達……何をする……?」


 拷問係は勇気を振り絞って声を上げた。


「サッワさま、下でココナツヒメさまがお待ちです。お早いご搭乗を」

「サッワさま、応急処置として回復魔法を掛けさせて頂きます」

「サッワさま、御足もとにお気をつけ下さいませ」


 拷問係を軽く無視して、サッワは突然現れた美女達に隙間無く立て続けに話し掛けられ、救助される嬉しさを越えてポカーンと混乱した。混乱しているサッワに美少女がすかさず回復魔法を掛ける。その様子を拷問係が同じようにポカーンと見ていた。


「ちょ、ちょっと、お姉さん達は何者なの? ココナツヒメさまの部下なの?」

「サッワさま、お水で御座います」

「あ、ありがと」


 水を飲み回復魔法を掛けられ元気が出て来ると、疑問が次々浮かぶ。


「申し遅れました、私共はサッワさまの為に我が主ココナツヒメ様が創設された、サッワさまの好みの女ばかりを集めた部隊でございます。初出撃でサッワさまの救出を仰せつかりました」


 女はさらりと凄い事を言った。


「ぼ、僕の大好きな……綺麗なお姉さんばかりの部隊……」


 確かに二人の大人の女性は、抜群のスタイルを誇った美女で、どうやって調べたのか顔や髪型もサッワの好みその物だった。


「私共はサッワさまと寝食を共にし、如何なる命令も絶対服従を定められております……」

「寝食を共にし……如何なる命令をも……?」

「はい……」


 サッワは辛い牢獄での拷問生活から一転、突然降って湧いた異常に幸運な状況に生唾を飲み込む。その途端にグラマラスな戦闘スーツに身を包んだ美女二人の大きく張り出した胸に目を奪われた。サッワは無言ですーっと無造作にその大きな胸に手を伸ばした。異様な状況に目を見張る拷問係。


「あっんっ……サ、サッワさま、作戦中はお控え下さい……ご帰還後にはいくらでもお相手します」


 夢遊病者の様に美女二人の胸を触り始めたサッワをなんとか制止する二人。


「くくく……くっくっくっくっくっあーーーはっはっはっ、どうだ拷問? お前にこんな事が出来る美女が二人もいるか? 羨ましいだろう?? 今日は城に帰ってこの美女を相手にしてやるんだ、くふふふ」


「チッ気味悪いガキだぜ……」


 正直内心凄く羨ましい拷問係はなんとか負け惜しみを言った。


「サッワさま……お早く」


 放置されていた美少女がサッワを急がせる。この細身のサッワと同年代の少女はグラマラスなお姉さん好きのサッワの好みから大きく外れていた。


「君は……?」

「フゥーと申します……」


 仕方なくサッワは美女二人とフゥーと共に魔ローダーの操縦席に乗り込む。ハッチが閉まり崩れた地下牢の様子が魔法モニターに映し出される。サッワにとってはもう戻る事は無いと思っていた自分の城に帰還した気持ちになった。


「お、おいコラ、逃げるんじゃねえ……馬鹿ガキが」


 拷問係が再びなんとか声を上げた。


「馬鹿が……忘れてやっていたのに……お姉さん達、やっちゃって!!」

「はい、サッワさま」


 無造作に美女が操縦桿を握ると、魔ローダーの巨大な手がガラガラと壁を落として引き出され、驚愕している拷問係を一瞬で押し潰した。巨大な指の間から血が染み出る。その瞬間にフゥーは顔を両手で覆ってビクッとした。


「くくく、下でココナツヒメさまが待ってるんだ?」

「はい、急ぎましょう」


 ごぼっと突っ込んだ頭を引き抜き、魔ローダーが再び地下に潜り込んで行くと、丁度全高約二十五Nメートル程の魔ローダー二機が入り込める巨大な空洞が作られていた。


「ああっサッワちゃん、サッワちゃんなのねっ!? ごめんねごめんね辛かったのね」

「わぁーーーココナツヒメさまーーーわーーー怖かったです、わーーー」


 ココナツヒメはシースルーのドレスの大きな胸でサッワを抱き締めて泣き続けた。釣られてサッワも年齢に似合った感じで泣き続けた。


「あの……姫、急ぎませんと……」

「そうね……ごめんねサッワちゃん。工作員によって貴方の監禁場所を知り、対瞬間移動結界が地下では効かない事を突き止めて、ゴーレム達に此処の空間を作らせるのに相当な時間が掛かったのよ……待ちわびたでしょう……」


「いいえ、ココナツヒメさまに迎えに来て頂いただけで僕はもう死んでも良いです。僕はココナツヒメさまの命令で死にます」

「まあっ嬉しいわ……でも今日はもう帰るのよ、ふふ早く貴方の為の部隊と仲良くしたいでしょう?」


 ココナツヒメが悪戯っぽく笑った。


「有難う御座います。必ず使いこなしてみます! けどフゥーは一体?」

「ああ、ごめんねサッワちゃんの好みのむちむちお姉さんじゃ無いわよね、どうしても数が揃わなくて……でもとても良い子よ」

「い、いえ……もう少しすれば成長するかもしれないし……」

「まあやらしい子ねふふ」


 サッワはおどおどする美少女のフゥーに何故か興味が湧いたが、あとで意地悪してやりたいという気にもなっていた。


「あの、少しお時間頂いて良いでしょうか? もう少しだけ城を壊して行きたいです」

「あら、恨みが籠っているのね!? 良いわよ、好きなだけ壊して来なさいふふふ、良い子ね」

「はいっ! 行って来ます!」


 サッワが操縦する魔ローダーが地下空洞から再び上によじ登ると、辺り構わず滅茶苦茶にハルカ城の内部から壁や柱を壊し始めた。



 ガガガガガガッ

突然ハルカ城の中に激しい振動が起こり、慌てふためく数少ない城中の人々。


「ライスさまっ大変です!! 突然地下から所属不明の魔ローダーが現れ、城の一部を破壊しています!!」

「何だと……」


 実質的な蟄居謹慎としてハルカ城の城代に任命されていたライスは突然の報告に驚く。


「ふぅ……何事も無く過ごせれば良いと思っていたが、何故こうも色々な事が起こるのか。城兵に被害状況を調べろと命じるのだ。それと侍女達の避難だ!!」

「ハッ」


 司令官が慌ただしく走って行く。城兵は全て実質的にライスの監視役だが、ライスの謹厳実直な性格と徹底した同盟女王への恭順の姿勢で誰もライス及び家族を酷い扱いはしていなかった。

 ガガッ……

しばらくして振動は止んだ。しかしそもそも魔ローダーが配備されていないハルカ城には、どうする事も出来なかったので待つ以外には無かった。


「止まったか? 行ってくれたのかな? しかしここまでコケにされ続けて女王陛下はまだ何も為されないのだろうか? いい加減目覚めて欲しい物だ」


 ライスは慌てて立ち上がった木製の彫刻が入った立派な椅子にゆっくりと座り直し部下の報告を待った。



「サッワさま……もうそろそろ……」


 サッワが内部からハルカ城を夢中になって壊している最中にフゥーが帰還を促す。


「何? 君は僕の家来なんだろ? 何で命令するの??」


 サッワがキッとフゥーを睨む。


「い、いいえそういうつもりは。申し訳ありません」


 フゥーはおどおどして俯いて謝罪する。


「じゃあ何でも命令を聞くなら、いますぐお前のおっぱいを見せろ」


 調子に乗って滅茶苦茶小学生的な命令をするサッワ。フゥーの胸は他の美女達みたいにまだまだ大きくは無かった。


「ほら、フゥー早くなさい!」

「フゥーちゃん恥ずかしくないのよ!」

「そ、それは……お許し下さい……」


 震えながら泣き始めるフゥー。


「ふん、泣くなら何でも命令聞くとか言うなよ……」

「も、申し訳ありません……見捨てないで下さい、うぅ」


 目をこすり、しくしく泣き続ける美少女のフゥーを見て、サッワは全身にゾワゾワと何かおかしな感覚が走る事に気付いた。

 ごくり


(も、もっとこの子に意地悪したい……今度はスカートをめくってやろう……)

「もう良い、帰るぞ!!」

「は、はい……」


 奇跡の生還をした直後なのに、もう増長しているサッワは新しい部下達に偉そうに命令した。


「さあっサッワちゃん、ル・ワンの手を握ってちょうだい」

「はい、ココナツヒメさまっ」


 地下空洞に降りて来たサッワの新型魔ローダーが、ココナツヒメの半透明のル・ワンの手を握った途端、魔ローダースキル、瞬間移動(長)が発動して二機はパッと消えた。

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