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帰郷クラウディアへ、聖都ナノニルヴァから離れる

 コンテナに放り込まれタイヤとサスペンションの力でバウンドする魔輪。


「うわっ強引ですね、壊れたらどうすんでしょうか」

「あっ砂緒さんお帰りなさいっ!!」

「伽耶ちゃん砂緒くん、早くベルトで魔輪を固定するんだ! 蛇輪が飛び立つと揺れて危険だ!」

「はい!」


 三人が慌てて魔輪を固定している最中にコンテナがひょいっと浮いた。外から蛇輪が片手で持ち上げたのだ。


『空中にコンテナ放り投げて、変形して掴んで飛んで行く! みんな何かに掴まってて!!」

「どうした?? セレネちゃん乱暴だな?」

「きゃーーーっセレネさま何かあったの?」

「さ、さあ? どうしたのでしょう……」

『うりゃーーーーーーーー』


 セレネは言葉通り、持ち上げていたコンテナを思い切り放り投げる。なにやら恨みが籠っている様な投げ方だった……


「うぎゃーーーーーいきなり投げるなセレネっ!!」


「ふざけた真似を!!」

「逃がすか!!」


 それぞれ手首を斬り落とされた金輪(こんりん)桃伝説(ももでんせつ)が、壊れたまま何とか蛇輪を逃すまいと襲い掛かる。


「そんなんで何する気だよ?」


 奪っていた金輪の黄金の剣を桃伝説の頭に投げ付けると、そのまま少し助走しジャンプして、一瞬で鳥型に変形し、落下中のコンテナを鳥の足で掴むと飛んで行った。


「何……だったんでしょう、アレ」

「砂緒……もしかして、砂とか自称してたそっくりな子供の事か?」


 金輪に乗る貴城乃(たかぎの)シューネは蛇輪が飛び去った方のうっすら明け掛けの夜空を見上げ続けた。



「砂緒くん、このまま東に飛ぶんだ! 決して西に向かってはいけないよ……とセレネちゃんに伝えて欲しい」


 飛び立った蛇輪に掴まれるコンテナの中で、猫弐矢(ねこにゃ)が砂緒にいつになく切羽詰まった声で話し掛ける。


「え、何故? 西に飛ぶ方が早いでしょうに」

「いや、内海を辿るのも、スィートスを横切るのも危険だ! 内海には高所に砦が方々にあるし、スィートスは魔ローダーを多数保有する、神聖連邦内でも有数の軍事強国だ、だから一旦東に飛んで元来たルートを進む様に伝えてくれ!」

「伝えるて無茶言いますね……」


 砂緒は少し不服顔をすると、空いたままのコンテナハッチからなんとかコンテナの上によじ登る。猛烈な気流が砂緒に襲いかかるが、軽く体を重くして気圧を防ぐ。


「おおおいーーーセレネさんやーーーーーおーーーーい! 入れて下さ―い!!」


 砂緒は思い切り大声を出して片手を振る。すぐさまセレネと兎幸(うさこ)の魔法モニター画面に砂緒の姿がピックアップされる。


「およ、砂緒があんな場所で手を振っているぞ、変わった子だなあ」

「兎幸先輩、あれは何かを伝えたいんでしょー軽く一時間程無視しときましょう」

「駄目でしょ! 何でそんな意地悪言うの? そんなんだからいまいち仲良くなれないの!」

「仲めちゃくちゃ良いですけど、兎幸先輩何を知ってるんですか??」

「とりあえず助けない? 飛ばされて行っちゃうよ!!」


 そう言って兎幸はコンテナの上で猛烈な気流に耐える砂緒を回収した。


「おかえりん~~砂緒! ささっ苦しゅうない、疲れたでしょ兎幸の膝の上に座りなさい」

「それじゃお言葉に甘えて……てだめでしょ、兎幸体が急成長してても女の子の上に座る訳にはいかないでしょ、私が下に座るので、兎幸は上にちょんと乗りなさい!」

「ほいほ~~い!」

「待てい! 上でも下でも兎幸先輩と砂緒が一緒の椅子に座るのはだめです!」

「……と、そんな事はどうでも良いのです、西に飛ばずに東に飛んで下さいとの兄者からのお達しです」

「……そんな事かよ、もう最初から東に飛んでるわ。日の出を見たら分かるだろうに」

「窓小さいから分からないのですよ」



 蛇輪は慎重に聖都の東の山脈にぶち当たると南に沿って飛び、さらに人口密度が低いツリーの国沿いに南側から回り込む様に進み、旧都の栢森(かやのもり)のさらに南の大森林の中に一旦着地した。


「ありがとうセレネちゃん、砂緒くん。西に飛ぶと危ない所だった」

「いやーそこまで気にしなくても大丈夫じゃないか? 結構弱い敵だったしな」

「いや、聖都とナノニルヴァの宮は元々武器が少ないんだ。多くの国々が集まって出来た神聖連邦帝国を舐めてかかってはいけないよ」

「ふーーん? まあいいいけどね」

「所で猫弐矢さま、これからどうするのですか?」

「そうだね、セレネちゃんも兎幸ちゃんも結局徹夜してしまったから、ここで軽く仮眠してから出発しよう……もう旧聖都に飛んでって宿泊する訳にも行かないしね」

「おっけー、じゃああたしは操縦席で寝るわ。砂緒は女性チームから十Nメートル以上は離れて地面で寝ろよ」

「何故? せめてコンテナで寝かせて下さい……」

「じゃあ兎幸は砂緒に足とか胸を貸してあげて寝るよ! 一緒に寝よっ」

「……いいんですか?」

「駄目に決まってるだろがっ! いいんですか? じゃねーわ」

「いきなり胸の成長で抜かれたからってぴりぴりし過ぎですよ……」

「なっ!?」

「猫弐矢さま大丈夫なのですか? また今度旧聖都に行った時に逮捕されたりしませんか?」


 伽耶がとても心配な顔をする。


「あははは、それは大丈夫! 旧聖都の人達はやっかい事には関わらない性質の人が多いからね。今日見た蛇輪の事も誰にも言わないと思うよ」

「そんな物でしょうか……」


 そしてそれぞれスペースを作り、仮眠を始めた。



「どうしたの? 寝れないのかな?」


 一人で真面目にコンテナと蛇輪を守る様に、三角座りで見張りをする伽耶に猫弐矢が話し掛ける。


「え、違います……余計な事かも知れないけど、皆が寝てしまうのは不用心かなって。荒涼回廊に住んでた時は、時々異民族やモンスターの襲撃を受けてたので癖でつい……」


 猫弐矢は伽耶が片手に拳銃タイプの魔銃を握りしめている事に気付いた。


「じゃあ僕が代わるよ、少しでもお眠り伽耶ちゃん」

「あ、有難う御座います……でももう少し一緒に居たいかな、なんて……」


 思い切って伽耶が言ったにも係わらず、一切気の利いた事を言わず、にこにこ顔で遠くの森を見続ける猫弐矢。


(あれ、今の私の言葉ちゃんと聞こえてない?)


「そうだ伽耶ちゃん、良い事を思い付いたよ!」


 沈黙の後、突然話し掛けられてドキッとする伽耶。


「はい!? な、何でしょうか……」

「伽耶ちゃん学校なんて行きたくないかな?」

「へっ学校!?」

「うん、旧聖都にはアラスカディア村立女学校という立派な学校があるんだ。伽耶ちゃんもそこに入学すれば良いよ! 僕は学長とも知り合いだから君なら簡単に入学出来るよ」

「アラスカディア……? 私が女学生さんに……何故ですか?」

「おお女学生さんですか? ハイ〇ラさんが通るですなあ。しかしアラスカ? なんだか寒そうな名前です、トナカイさんがわんさかいそうです」

「わあ!?」


 伽耶が突然砂緒の声を聞いて飛び上がる程に驚く。


「す、砂緒さん居たんですか!?」

「ふぉっふぉっふぉっ、良い感じの二人を見るとついつい邪魔をしたくなったのじゃ」


 とても駄目な事を平気で言う砂緒。


「おやっ砂緒くんも起きてしまったのかい。あははトナカイは居ないよ」


 猫弐矢は嬉しそうにいつもみたいに、にこにこしている。当然伽耶は内心ムッとしていた。


「何故って……いつも銃を握りしめていた様な殺伐とした生活をしていた伽耶ちゃんに、この何も無いド田舎む、いや自然豊かなアラスカディア村でいろいろな事を学んで欲しいんだ!」

「兄者今、確実に何も無いド田舎村って言いましたな?」

「あはは、砂緒くん酷いなあ、そんな事言ってないよ!」


 伽耶は猫弐矢の提案を聞いてしばらく黙り込む。伽耶の赤毛のアン的な深紅の髪が昇って来た太陽の直射日光に照らされる。


「それはつまり……クラウディアから離れて寮か何かに入るって事ですね?」

「うん、クラウディアにはお金が有り余っているから、伽耶ちゃんの学費や何もかも全部費用は負担するよ」

「そんな事……いきなりクラウディアにやって来たばかりなのに、受け入れてもらった上に、今度は学生さんにしてもらうだなんて……申し訳無さ過ぎです。それに……今は私しばらくクラウディアから離れたくありません……何かお手伝いさせて下さい!」


 今度は猫弐矢が一瞬黙り込む。


「そうかっ! ごめんごめん早とちりだったね、てっきり皆学生さんに成りたい物かと思い込んでしまったよあはは」

「い、いええ、贅沢言ってしまって、折角のお話しなのに本当にすいません! 私の事嫌わないで下さい!」

「嫌う訳無いじゃないか……」

「ねえねえ兄者、わらしもいつか学生さんになりたいナ~~~」


 砂緒が折角の良い雰囲気をぶち壊す。


「お、砂緒くんも勉強したいのかい? 砂緒くんなら大歓迎だよ、ニナルティナのお仕事が終わったならいつでも家に相談に来てよ。でもちゃんと妹を連れて来てね」

「わ~~~い、兄者大好き~~~」

「あははははははは」


 砂緒は猫弐矢に抱き着いた。


「え? 砂緒さま女子校って言っていますが……」

(誰でもいいんかいっ)


 抱き着いて来た砂緒の頭を優しくぽんぽん撫ぜる猫弐矢を見て、伽耶は言葉を失った。


「え……何これ?」


 セレネが木の影から異様な光景をこっそり見ていた。女子高と言われ、セレネはすっかり忘れていたユティトレッド魔導学園の事を思い出していた。


挿絵(By みてみん)

自分の小説を読み返してみて、時々凄く読み難いな等と思っていたのですが、その理由が所々主語述語の順番がおかしいという事に気付きました。これは小学生の国語レベルの問題なので改善しなければいけません。少数の有難い方、こんな小説でも今後も広い心で読んで下さると幸いです。

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