どきどきの相部屋、花火の夜
「ふわ~~~だめだめだめ」
「ふんっ、まあいいですわ。それにしても……南からは魔王軍が攻め上り辺境の村々や国々が侵食されつつある時に、何故我々セブンリーフ大陸の人間達同士で戦争をしなければいけないんでしょうか? 魔王を倒す勇者は現れないのですか? 戦争を止める聖人は?」
フルエレの顔に滝汗が流れる。今度は突然演説を始める七華王女。その場にいる全員が『早く帰れ』という凄まじいオーラを発している。
「フルエレ様、砂緒様、貴方達は現下の世界情勢をどの様にお考えですか? よろしければお考えをお聞かせ願いたいですわ」
「知らん」
「え、ええ? え、わ、私、えーーとすいません、分かりませんあはは」
秒で返事した砂緒に対して、いきなりの指名に困惑するフルエレ。真面目に答えようとしても答えが出ない。笑ってごまかした。
「うるっせえな。お前ら王都の連中が援軍も出さず何してた? 今頃ノコノコ出て来て高尚なお説教かあ?」
さっきまで死闘を共にし、戦場に勝利をもたらした女神への侮辱にぶち切れかける衣図。
「やめてっ」
「私は本当に大丈夫ですよっ! 本当に勉強苦手、えへへ」
フルエレが必死に和まし、今度はリズが駆け寄って来て制止する。
「ふんっ、いいですわ。変な邪魔が入りました。お二人には正式にお礼をさせて頂きますわ。それとささやかながら、みなさんにも心が穏やかになる贈り物をお届けしますわ」
二人には軽く礼をしたが、絵にかいた様にふんっと衣図の前で顔を横向くと、そそくさとお付きの美形騎士と共に馬車に乗り込んで去って行った。
「おい、魔戦車の警戒、怠るな。あいつなら本当に火を付けかねんからな」
衣図は真顔で指示をした。
リズはすっかり不機嫌になった衣図から二人を引き離し、先程話題に上った村の中心にある、閉鎖中の旧冒険者ギルドに案内した。
「す、凄い大きなお屋敷! これ本当に貰ってしまって所有権主張してもいいんですか!?」
「え、え、上げるとは……」
控え目なのか図々しいのか測りかねるフルエレに困惑するリズ。