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超超大型魔ローダー・ヌの話  出発、栢森へ

 もはやもたもたせず、即刻皆で聖都への旅に出発する事とした。


「と早く行く事にしたのに、一体何故神殿建設予定地の北の浜に連れて来たのですかな兄者」

「うん実は此処から見える山々には僕たちクラウディア人の真の魂が埋まっているんだ……」


 猫弐矢(ねこにゃ)兄者の意味深な言葉に一同視線が集まる。


「魂とは何ぞ?」

「凄い知りたい」

「魂ッ・魂ッ!!」

「それは超ゝ大型魔ローダー・ヌの事なんだ」

「ぬっとな?」

「そう、超超大型魔ローダー・ヌの全高は約十Nキロメートル、その巨体ゆえ普通の人間には操縦する事は出来ず、神の魔ローダーと呼ばれているよ」

「神の魔ローダー……」

「十Nキロって魔ローダーって大きさじゃないだろ」

「一国ぐらいの大きさだね!」

「そう、その魔ローダー・ヌは此処クラウディアが元々小さい事を嘆き、北の荒涼回廊やさらに東のジ・フブキの国から陸を引っ張って来て面積を広げてくれたんだ……」


 一同壮大な話過ぎて言葉を失う。


「北の荒涼回廊から地面を引っ張って来た……ジ・フブキと言えば角ガール伝説のガ・アルがある北東の国ですね」


 伽耶が息を飲んだ。


「そうだよ詳しいね! 流石伽耶ちゃんだね!」

「えへへ」


 猫弐矢に褒められて伽耶は赤面して喜んだ。


「しかし陸を引っ張って来た等とは、ほら吹き男爵もびっくりの話ですなあ」

「こ、こら余計な事言うな!」

「はぁ? ほらだって!? 超超大型魔ローダー・ヌは実在したんだい!! ヌ様にケチ付けるとぼ、僕が許さないぞ! プンスカ!!」

「猫弐矢さま!?」


 突如メガネ優男の猫弐矢がキャラ崩壊して怒りだし一同があっけにとられた。


「すすすいません兄者、兄者がそこまでヌに思い入れがあるとは露知らず、この砂緒謝罪致す」


 突如キャラ変した猫弐矢にびっくりしたのか、砂緒がやけに素直に謝罪した。

 ガガガガガガガガ。

砂緒が素直に謝罪した直後、地震の様に地面が揺れ出した。


「きゃっやばいやばい地震だ地震、砂緒怖いぃ」


 実は怖がりなセレネが左右を見つつ砂緒に抱き着く。


「セレネ落ち着きなされ、可愛いやつじゃのう」

「い、いやこの地は地震は少ない……そ、そうだ! ヌ様が存在を示そうと地鳴りを起こしておられるのだ! わははははは!! おおヌ様はご健在だ!!」

「……猫弐矢さまっ!?」


 一同猫弐矢の尋常ならざる様子を見て、今後は絶対ヌの事は触れない様にしようと固く決心した。

 キィーキィー。

一同が地鳴りが止むのをじっと待つ中、突然緑色した謎の小さい生物が走って行った……


「兄者な、何ですかな? 今緑色したえのき茸的な物が走って行きましたぞ!!」

兎幸(うさこ)も長い人生あんなの見た事無いよ!!」

「……何だろう? 確かに緑色したえのき茸的な生命体だったね……僕もあんなの見た事ないよ」

「あ、知らない内に地鳴りが止んでる……」

「今の放って置いて良いのでしょうか?」


 伽耶が後ろを振り返りつつ、皆で魔ローダー蛇輪に乗り込んだ。



 ミスリルとオリハルコンを降ろしたコンテナ内には兎幸が一人で乗っかる魔輪だけが搭載され、簡易宿泊施設は時間の制約上再建されないまま出発していた。しかし当然食べ物や飲み物は搭載していて、兎幸はサイドカーの中で一人でぽりぽりお菓子を食べ続けた。


「すみません猫弐矢さま、私だけ椅子に座り、貴方を立たせる事になってしまって……いつでもお代わりしますので」

「あはは、いいんだよ! 半日や一日くらい立ってないと!」


 伽耶は猫弐矢がいつもの様子に戻ってホッとした。


「おらおら、早く焼きそばパン買ってこいよ、オラオラ」

「ひっあうう、すいませんセレネ様、殴らないで下さい……」


 砂緒は両手を顔の前に出して怖れの表情を演じる。セレネは強制的に前と同じ遊びを砂緒にやらされていた。


「すまん、本当にこれの何が面白いのかさっぱり分からん。もう止めたい」

「えーーー? この楽しさが分かりませんか??」

「……私の誘いは全部逃げて行く癖に、こんな偽りの女王さまごっこ面白く無い」

「うっ……」

「セレネくん、ルートは理解出来たかい? もう一度言おうか?」


 突然魔法モニターの端に猫弐矢の顔が映る。


「あ、はい、お願いするよ」

「うん、えっと今東に東に海岸沿いに飛んでいるけど、このまま行くとバウアーの国、ジュベーの国と進んで、ワルツ半島にぶち当たる。そのまま大きなへこみを一直線に東に飛ぶと、ジ・フブキの国のガ・アルの半島に到達する」

「ややこしいな」

「ややこしく無いよ、要はとにかく東に飛べば良いだけ」

「お、おう」


「お、バウアーの国の海岸線には砂漠がありましたぞ!!」

「あー本当だー」

「あれは砂漠じゃないよ、砂丘だよ」

「ほほう」



「うん兄者! ワルツ半島を抜けて大きな湾に入った。もうすぐガ・アルの半島にぶち当たるぞ!」


 とうとうセレネまで兄者と呼び出した。


「うんじゃあ、今度はそのままぐいんと九十度南に曲がって、そのまま南に降ると泡海という巨大な淡水湖があるから、その真ん中を沿って南に降りて行って、泡海が尽きるとさらにそのまま南に下って行くと、巨大な盆地があるから、そこが旧聖都だ。南側の山際に降りると良いよ。聖都が移転してからは人口が減少したド田舎村だから魔ローダーも目立たないと思う」


「ド田舎村って怒られますよ……」

「あー分かり易いわ。兄者の言う通りに飛んだら着けそうだわ」


 今度はセレネが椅子に座り、後ろから砂緒が画面を覗き込む。



「むむ、盆地の南に到達した! 高度を下げるよ!!」

「あいあいさー」

「頼むよ」

「頑張ってセレネさん!」


 鳥型の魔ローダー蛇輪が高度を下げるが、確かに田畑しかないのどかな地であり、特に騒ぎになる事も無く蛇輪を森の中に隠した。


「では兎幸、貴様には蛇輪を完全に守るという任務を与える! 始動鍵の宝石も渡すゆえ、しっかり頼むぞ!!」


 体格が大きくなったので、以前よりももう少しは長く動かせる様になった……という本人の弁を信用して砂緒は蛇輪を守る任務を与えた。


「兎幸も行きたかった~~~!! 砂緒今度何かで埋め合わせするのだぞ!!」

「あいあい、頼みますぞ」


「ではセレネくん砂緒くん、このまま西の山々の間の道を魔輪で抜けると遂に新聖都ナノニルヴァになる。後は勘で宮殿を探して。僕は伽耶くんを招待したい場所があるので!!」

「や、急にえらくいい加減ですな……自信たっぷりに顔パスとか言うから聖都まで案内してくれるのかと」

「あたしもそう思ってた」

「いやいや二人なら何があっても大丈夫だよ!」

「なんか上手く誤魔化されてるな……」

「仕方ありませんセレネ、此処からは自力でなんとか致しましょう。では兄者我々は早速魔輪で出発します! お気を付けて」

「うん、砂緒くんとセレネくんも気を付けて! まあー殺される様な事は無いと思うよはははははは」

「なんかえらいいい加減だなあ……」


 手を振ると、魔輪に乗った砂緒とセレネは西の山々に向けて走って行った。



「さて、僕たちは良い所に行こうか、ふふふふふ」

「は、はい……」

(良い所……綺麗な宮殿? それとも美味しい物がいっぱいある所かな?)


 伽耶は胸がときめいた。



 しかし伽耶の期待とは裏腹に猫弐矢は旧宮殿を通り過ぎ、歩けども歩けども何が良い所なのか分からず、やがてどんどん人里離れた山奥に別け入って行く。


「あ、あの……なんだかどんどん寂しい場所に……」

「ふふふ、気にしない気にしない」

「や、あの……」

(あ、あれ?)


 伽耶は猫弐矢がどんどん山道に別け入って行くので少し心配になって来る。



「あ、あれ……今何か川の上に結界的な物が張ってあったのですが……」

「あーあれ、アレは気にしなくて良いんだよ、ふふふふふふふ」

(ヒッもしかして……猫弐矢さんってやばい人……?)


 遂に伽耶の脳裏に逃げるという選択肢が浮かんでくる。


「ここからさらに深い森に別け入って行くよ!!」

「は、はい……」


 しかし何があるのだろうという興味が先行して付いて行ってしまう伽耶。


「あ、あの……猫弐矢さま……」

「ん、なんだい?」

「信じて良いのですよね?」

「あーーー大丈夫だよ! 何も無いから心配しないで!!」

(へ? 何も無い場所に私を連れて行っている?? お母様どうしましょう……)


 さらにどんどん深い森に進んで行く猫弐矢。



 さらに進んでから突然ぴたっと歩みを止める猫弐矢。


「くくくくく、ようやく此処まで来れた。ここまで来るともう誰も来ない、ふふふふふふふ」


 猫弐矢が不気味に笑う。


「ど、どうしたんですか?」


 カチャッ

伽耶はポケットの中の小型魔銃に震える指を掛ける。


「緊張しないで良いよ! 力を抜いて」

(ヒッ!! お、お母様!!)


「な、何ですか?? わ、わたしだって」

「ほら、静かにして、耳を澄ましてごらん」


 突然猫弐矢は目を閉じて、うっとりした顔で耳に手を当て始めた。


「あの、何を……」

「ほら、小川が流れる音が聞こえるだろう……」

「え?」


 言われる通り耳を澄ますと本当にどこからか水の流れる音が聞こえた。


「此処は栢森(かやのもり)と言って聖地なんだ、分からないかな? ふふふ」


 猫弐矢はやけに嬉しそうに、にこっと笑った。もちろん邪悪な笑顔とは正反対の笑顔だ。


「あのー良く分かりません、すいません……」


 伽耶は素直に言った。


「分からないかな? 栢森に伽耶ちゃんを招待したんだよ!! 凄く壮大な駄洒落が完成したんだ!! 凄いと思わないかい??」

「へ……すいません、何だか良く分かりません!!」

「もういいよ、一緒に喜ぼうよ!! あはははは」


 猫弐矢はとても嬉しそうに伽耶の手を取った。伽耶は何だか意味が分からなかったが、猫弐矢が邪悪な人間でも何でも無くてホッとした。


(お母様……猫弐矢さんは砂緒さんに負けず劣らずの変じ、いや変わった方でした……でも何だか好きです。クラウディアに住んでみる事にします……お許し下さい)

挿絵(By みてみん)

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