七華リュフミュラン少しだけ意地悪なお姫様b
「冒険者ギルドてなよ、カウンターにはメイドさんかバニーさんみたいな可愛い子がいてよ、しかし裏にはヤバイ兄ちゃんが控えててトラブルを解決するシステムなんだ。あんたらにぴったりだ、あんたらで冒険者ギルド復活したらどうだ?」
「メイドさんは兎も角、バニーさんなんか聞いた事ないぜ~」
「え、本当ですか!? なんだか凄い事になって来ちゃった。砂緒はどう思う?」
ずっと黙っていた砂緒が聞かれて答える。
「すいません、冒険者ギルドとは何の事でしょうか?」
みんなで手取り足取り詳しく教えた。
「なる程、口入れ屋の事でしたか。江戸に現れた剣豪の浪人が貧乏長屋からふらりと口入れ屋に現れ、旗本の不正や幕府の陰謀、はては国元の危機を救ったりするアレの事ですか」
「バ、バクフ? いや、何言ってるのかちょっとわからないです」
フルエレは砂緒はやっぱり頭が……と不安になる。
「しかし……こんなみんなが避難して空き家が多い立地条件最悪の場所で口入れ屋を開業しても、自分で登録して自分で解決するような夢のシステムになり果てそうですね」
相変わらず配慮が無さ過ぎて相手の気分を害する様な物言いだが、事実でもあった。
「私、大将さんの話に乗りたい。行く当ても無いし、凄く良い話だと思うの」
「フルエレがそう言うのなら、私も当然賛成しますよ」
文句を言うのかと思いきや、即断で賛同する砂緒。雪乃フルエレは、大体の場面で自分の意見に賛同してくれる砂緒を内心嬉しく思っていた。
「警戒警報ー警戒警報ー!」
先程殴られて倒れこんでいたはずのラフが、もうせせこましく走り回る。
「やべえ、奴が来やがった」
豪放磊落で味方の誰にも優しそうな衣図が、苦虫を噛み潰した様な嫌悪の表情に変化した。砂緒らが今会話している村の入り口付近に、豪華な装飾の施された馬車が停止して扉が開く。
「貴方達が雪乃フルエレ様に砂緒様ですか?」
これまた豪華なドレスを纏い、頭から全身に宝飾品を装着したいかにもお姫様という人物が飛び出て来る。砂緒らの前に来るなりスカートの端を軽く持ち上げると足を曲げて挨拶をする。真横にはぴったりと守る様に美形の剣士が。
「あ、あ、あ、これはどうも」
フルエレも砂緒も浮世離れした挨拶にたじろぐ。
「わたくし、この国の第一王女、七華リュフミュランと申します。この度は我が国の危機をお救い頂き、感謝のしようも御座いません。父王の代わりにお礼を申し上げますわ」
「あ、あ、あ、あ、あ、こここれはどうも」
先程までの男共の雰囲気と違い過ぎる、慇懃な挨拶に面食らってさらにたじろぐ。衣図らは凄く嫌そうな顔をして、一向に話に入らないで知らんぷりをしている。
「それにしても……衣図、何ですかあれは? あれをどうしようと言うのですか」
洋扇で嫌悪感丸出しの顔で魔戦車を指す。どうやら王女の方も衣図が嫌いなようだ。常に一方通行な話し方をする印象だった。
「修理して使うそうです。素晴らしいですねあの機械は」
砂緒は王女の威勢を無視して、魔戦車の良さをアピールした。
「なんですって!? 燃やしてお仕舞なさい」
即座にぴしゃっと撥ね付ける。燃やすというワードに砂緒の顔にぴしっと怒りが入り込む様子をフルエレは見逃さなかった。慌てて制止する様に前に立ちはだかった。