砂緒泣く、セレネの危機に届かない腕
「そうか、魔ローダーで……でもセレネが!?」
「砂緒君辛いだろうが聞いてくれ、このエロ竜のマタマタは捕まえた乙女を裸にしてじっくり半日程掛けていたぶり、その後に特殊な器官で慰み物にする目的を果たす。だからまだ半日はタイムラグがあって間に合う。酷いと思うだろうが、急いで戻って魔ローダーを取りに行こう」
「そそんな!?」
「いやああああああ、キモイ、本当にキモイ、助けてっ砂緒っ!!」
「猫弐矢殿は上を見るなっ」
「え、ええそうするよ」
「セレネっ!! 絶対に魔ローダーに乗って戻って来る!! 半日は操は無事らしいです!! 必ず戻りますから待ってて!!」
砂緒が見上げると、セレネはおぞましい無数の副腕の攻撃に耐えていた。
「うっ……くっ……や、やめっ……はうっ……ああ? みさおっ!? 分かった。あたしは砂緒を信じる!! 待っているぞっ!! ……はわっ」
「くっそーーー、行きましょう猫弐矢殿!!」
「ええ。伽耶ちゃんは此処でセレネちゃんを見守ってて!!」
「えええ!?」
急いで走って行った砂緒と猫弐矢を見送ると、伽耶クリソベリルは拳銃タイプの魔銃を二丁取り出すと、震えながら周囲を見渡して、最後にチラッと捕まったまま副腕が身体中を這い廻り、おぞましい状態にされたセレネを見上げた。
「は、早く戻って来て下さい猫弐矢さま、砂緒さまっ!!」
「はわっくっやめ……きゃっ……あっ」
声がして恐る恐る伽耶が再び上を見上げると、無数の副腕がセレネの服の中に入り込み、おぞましい行為に及んでいる事がなんとなく分かった。
「あ、そうだ!! セレネさんって砂緒さんとお風呂で洗いっこする仲、もはや生娘じゃ無いですよね!? 直ぐに開放されるんじゃないですか??」
「あうっあれは全部嘘だ……キスを数回しただけ……はう、まだ乙女なんだよー馬鹿ーーー!!」
「ごめんなさい……」
伽耶は振り返って再び拳銃タイプの魔銃を握り直した。
「早く走って!! 魔輪に辿り着いたらそれ運転してもらいますよ!」
必死に走りながら魔輪が置いてある神殿建設予定地に戻る砂緒と猫弐矢の二人。
「そんなの運転した事無いよ、それに魔ローダーだって」
「ル・ツーがあったでしょうが!?」
「あれは猫名兄さんが所有してて触らせてもらえない」
「何でも良いです! 貴方は操縦桿だけ握ってりゃ良いんですよ! 私が動かしますから!!」
しばらく走って魔輪に辿り着き、そのまま魔ローダー蛇輪を置いた防風林に向かう。最初に出会った漁師さんにすれ違う。
「おやどうしたのかね? 可愛い女の子達はどうしたね?」
「急いでるんです!! 魔ローダーどの辺りに置きましたっけ!?」
「あそこの防風林の辺りだよ……」
漁師さんは指をさした。
「ありがとう!! 言われた方に早く急いで!!」
「………………」
猫弐矢は無言で覚えたばかりの魔輪を動かした。二人は防風林の中に隠した蛇輪に飛び乗ると砂緒が軽くレクチャーした。
「いいですか? 貴方は無意識で操縦桿だけ握って魔力を注入し続けて下さい! 血反吐はくかも知れませんが、気にせず魔力を注入し続けて下さい!!」
「はあ!? 酷いね……」
「行きますっ!!」
しゃがんでいた蛇輪が立ち上がると人間以外の色々な物を踏み潰しながら大急ぎで走って行った。
「おお何か知らんが気を付けなされ!」
漁師さんは手を振った。
バンバン!!
伽耶クリソベリルが待機していると、案の定スライムやマタンゴ、マンドラゴラの様なこの地に生息する色々な地味な雑魚モンスターが湧いて出て来る。それらを次々に拳銃タイプの魔銃で撃ち続ける伽耶。
カチンカチン! チャリン……
弾切れを起こすとすかさず空薬きょうを捨て、新しい弾を装填する。
バンバンバン!!
「キリが無い……早く来て砂緒さん……」
「うっくっ……いやっはあはあ……だめっ」
相変わらず上ではセレネが悩ましい声を上げているが正視が出来ない。そのセレネは次々に服の中に副腕の侵入を許し、服の中ではおぞましい手が細身の身体を這い廻っていた。
ズシンズシンズシン
変形出来ない為に大急ぎで走って来た蛇輪の足音が響く。
「来たっ!! 多分来ました!! セレネさん来ましたよ!! もう少しです!!」
「う、うん……頑張るよ……」
何を頑張るのか良く分からないが、伽耶はほっと胸を撫で下ろした。
『伽耶殿しゃがんで下さい! 当たったら申し訳無い!!』
「はっ? 何々??」
外部スピーカーで突然言われて慌ててしゃがむ伽耶。すると蛇輪の片手の指先から凄まじい雷が放出されて、伽耶の周囲に居た地味な雑魚敵が一瞬で一掃される。
「ひぃいいい、館で観たアレだ!?」
伽耶はしゃがんで頭を抱えた。
「よし、次はセレネです!! 変形せずに翼を出します!! 負荷があるかもしれないが耐えて!」
「ふぅ……も、もう結構きついのだけど……」
「知るかっ!! 自分に魔力回復魔法かけりゃ良いでしょう!!」
「そんな無茶な……トカゲが自分の尻尾を食べ続けて生きれると思うかい? 限界があるんだよ」
「知らんっ!! 飛びます!!」
砂緒が叫ぶと、背中の羽が展開して人間形態のままジャンプして飛び上がる。そのまま右手の尖った爪を揃え、エロ竜マタマタの喉元に突き刺そうとする。
「はぁああああああああああ!!! 死ねええええええ!!!」
「わああああああ砂緒、早くしてっ!!」
セレネが叫ぶ中、砂緒が血走った目で操縦し手刀を突き刺しに掛かる蛇輪。エロ竜マタマタは後ろに逃げようとするが、蛇輪のスピードには敵わない。しかし蛇輪の手刀が竜の喉元に突き刺さろうとする寸前だった。
「ガハッ!! げほげほ」
「どうした? 猫弐矢!!」
「も、もう、ら・め」
上の座席に乗る猫弐矢兄さんが洒落にならない大量の吐血をして前に崩れ落ちる。遂に猫弐矢の魔力が尽き、その直後にガクンと失速した蛇輪はひゅーっと墜落する。




