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ゴブリン・オーク・コボルトを殲滅し魔法剣でドラゴンを倒す クラウディアへ

「これこれ水臭いですぞ。おくつろぎをとまで言われると、少し申し訳ない気もしますな。ここには魔ローダーは無いのですかな? 無ければ我らが撃退して進ぜよう」

「お言葉に甘えて良いでしょうか……そうであれば皆安心します。魔ローダーは昔はあったのですが、今は全て壊れてしまって。ですが魔ローダー用の剣はごろごろ転がっているので、是非お使い下さい」

「結局あたしゃが動かすんだぞ、勝手に決めるなよと……」

「そんな事言って、見た目も心も美しいセレネさんは、結局助けてくれるんでしょう??」


 むすっとしていたセレネは見た目も心も美しいんでしょうと砂緒に言われただけで、笑みが浮かびもう怒り顔が保てなくなって来る。言葉通り砂緒に頼まれると、結局何でも聞いてしまう甘ゝなセレネだった。



「さあこの門には一匹たりともモンスターは通しませんわよ!」


 鉢巻を巻き、両手にごつい魔連銃を抱えた第七代伽耶クリソベリルが気勢を上げた。


「座ってても良いと言ったのに、真面目なんですねえ」

「ただ単に戦うのが好きなんじゃないか?」

「それはともかく、私の能力で見ると遠くに大型のドラゴンに混じって、ゴブリンとオークとコボルトなる獣人族がうじゃうじゃ迫って来ています。本当に実在したんですねえ。蛇輪の飛来が連中を刺激したんでしょうか」

「どらどら、拡大して見るわ……あちゃー本当に居るわ。何百匹、何千頭か? うじゃうじゃいるじゃん! つかコボルト可愛い! 一匹欲しいわ」

「駄目ですよ、あんなの飼っちゃ、美しいセレネが寝込みを襲われかねません」

「お前はエロい方向にしか考えられないのな」

「あの……襲われると言っただけで、噛まれたりしないかって意味なのですが……どこにエロ要素が?」

「…………んでどうやって倒す? 一匹一匹ぷちぷち剣で倒して行くか? 踏むか?」

「いえ、あんなの梱包材みたいに一匹一匹ぷちぷちしててもめんどくさいので、サクッと雷攻撃します!!」

「おーー、んじゃあたしゃはふんぞり返って寝とくわ」


 いつもの様に砂緒が魔ローダーの両手を上げると、雷雲が飛来して両手から発した雷を増幅し、凄まじい轟音と共に無数の獣人族に向けて雷を降り注いだ。

 ドドドドドドーーーーーン!!


「きゃーーーーーーっ今のは何ですの!?」


 館の砦の人々は目を覆って驚いた。


「どんなもんじゃ?」

「あーーー、獣人族はきれいさっぱり消え去った様ですが、大型のドラゴンのみ五、六匹残っていますね」

「よし、それはあたしが貰った剣で叩いてみるわ!」


 蛇輪は適当に大型のドラゴンに向かって行ったが、近付くとそれは蛇輪の倍ほどもある超巨大なドラゴンだった。ジャンプしてその超大型のドラゴンの首を、巻き藁でも斬る様に一発で切り落とすセレネ。

 ズバッ!!


「お見事!! さすがです」

「相手は大きいだけでトロいからな、簡単だよ」

「こんなのが我々が居ない時に襲って来なくて良かったです。とにかく殲滅しましょう!」

「おっけー」


「きっと名のある主的なドラゴン達に違いありません。しかしあの銀色のピカピカの魔ローダー、人型に変形してからも凄く強い、次々にドラゴンを倒しています……とても有難い」


 クリソベリルが見ている間にも蛇輪はばっさばっさと巨大なドラゴン達を倒して行く。残り一匹になった時だった。

 カキーーーーン!!

ひと際固い鱗だったのか、剣が耐用年数を過ぎたのか、ドラゴンにヒットした瞬間に折れて飛んで行った。


「あちゃーー、折れちゃった」


 そう言って地面に突き刺した予備の剣を抜いて再び切り掛かるが、やはり折れて飛んで行く。


「特別硬いドラゴンで、通常の攻撃では無理なのでしょう」

「んじゃ訓練代わりに魔ローダーで魔法剣をやってみるか?」

「魔法剣とは?」

「もともと対人用の魔法剣術で、剣に色々な攻撃魔法の威力を付与させて、攻撃力を何倍にもする事なんだけど、基本魔ローダーには魔法が効かないから試した事が無かった。試しにここでやってみるよ」

「ほほう? では私の雷を纏わせる事も出来るでしょうか? 表面に傷を付けて体内で雷攻撃をすれば、先程の雷を生き延びたドラゴンにも効果を発揮するやも……」

「じゃお前やってみろよ」

 

 言われて砂緒はいつもの様にただ発散するだけの雷では無く、ひたすら剣に雷撃を纏わせるイメージを行った。よく考えればフルエレと最初に雷を発生させた時に、既に普通の練習用の剣に雷を纏わせていた事を思い出した。

 ジジジジジ……

やがて剣は雷を纏い青白く発光を始めた。


「いやいきなり出来てるじゃん。失敗したとこ笑ってやろうと思ってたのに」

「私天才なのかもしれません……魔ローダーでも出来ました。じゃ、一発攻撃してみましょう」


 青白く雷を纏った剣を両手で振り被り、走り出すとジャンプして上段の兜割りの攻撃を行った。

 ガツン!! バシッッッ!!!

物凄く堅そうな最後のドラゴンの脳天を少したたき割ると、そこから激しい雷撃が吸い込まれる。ドラゴンの両目は一瞬で白くなり、体中のあちこちから白い煙を噴き出して、巨体をゆっくりと倒した。

 ドターーーン!!

 バチッ!! パリンッッ!! シュ~~~~~。


「うげっ!!」

「うわ、剣が弾けましたね」


 攻撃に耐えられなくなったのか、大きな剣は一瞬で消え去った。砂緒は柄だけになった剣を持ち上げて見ると、ぽいっと捨てた。


「んじゃ、帰るか」

「その前に……」

「何だ何だ?」

「あのですねえ、これ絶対に奥方とクリソベリル殿に言わないで下さいよ、私どーーーも、此処に降り立ったのは良いのですが、ここの空気というか風土が性に合わないと言うか、ここにはなるべく居たくないです……それで最西の島の時みたいに長居しないで、明日にはもう出発しませんか?」

「お、おう……実は私も同じだったんだ、それでついつい横柄な態度をしてしまって……」

「で、では伽耶殿には重大な決断を短時間で迫る事になりますが、明日出発という事で……」

「おけー」



「さすがユティトレッド王女セレネ様、お見事で御座います。あれだけ沢山の数の獣人族とドラゴンを殲滅して下さったので、もともと人口密度の低い荒涼回廊の事、これからしばらくの海路陸路通行には何の支障も無くなりました。帝国の出先機関復活の折には、大手を振って遣使をする事が出来ます。一同お礼を申し上げます。何卒感謝の品をお受け取り下さい」


「おおー来たじゃん、良かったじゃん砂緒」

「お、お礼の品ですと!?」


 砂緒達が館に戻って来ると、既に中庭には鈍く光る何かの金属のインゴットが並べられていた。いぶかしげにセレネが訪ねる。


「これは何なのだ?」

「これはミスリルとオリハルコンの塊です。これをクラウディアの秘伝魔法で白鋼と合金して鍛錬すると、見事な魔ローダー用の魔法剣が製造出来ると言われております。先程戦闘中に魔法剣が分解した場面を見ておりました。どうぞお受け取り下さい」


 第七代伽耶クリソベリルの母親が解説した。


「伽耶、貴方にはクラウディアへお二人を案内する役目を申し渡します。よって館の主は一旦私が引き受けます。お役目しっかりと果たしなさい」

「お、お母様!?」

「クラウディアに着いたのちは、貴方自身でその後どの様にするか決めなさい……」

「は、はい……お役目しかと果たしたいと思います! お母様……」


「勝手にクラウディア行くと決めちゃったよ」

「あ、あのー感動的な場面申し訳無いのですが、このセレネが明日にはもう出発したいと申しておりまして……準備、明日までに間に合います?」

「明日行くって言ったのはお前だろうがっ!」

「明日!? 砂緒さまとセレネさま、明日には出発なさるのですか!?」

「ええ、出来れば」

「分かりました。皆の者にコンテナの強化とインゴットの積み込みを、今晩中に眠らずに行わせます。伽耶、明日の出発までに用意をしておきなさい」

「は、はい……」

「はーーーまた勝手に決めちゃったよ……」


 ここに来て終始むすっとしたセレネだった。伽耶クリソベリルの母親の言葉通り、コンテナは魔輪の搭載スペース以外の簡易宿泊施設は全て撤去され、徹夜で床には強化金属のトラス構造の補強材が張られ、壁も突き破らない様にある程度の強化がなされた。そこに次々に積み込まれるミスリルとオリハルコンのインゴット。その間セレネと砂緒は別々の部屋で一晩ぐっすりと眠った。しかし第七代伽耶クリソベリルは、これからの将来の希望と不安でなかなか眠れなかった。



 ―次の日。


「もう飛び立たれるのですか!? せめて朝食でもお上がりに……」

「い、いえ奥方、朝食は蛇輪の中でおにぎりでも食べましょう。お気遣い痛み入る」

「そなたらはこれからもユティトレッドの飛び地の民として、誇りを持って活動する様に!」

「終始偉そうですねセレネ……」

「うるさいわ、役目なんだよ」

「ははっ、しかと承ります。伽耶、しっかりとお二人をご案内する様に……」

「お、お母様、私やっぱり此処に……」


 第七代伽耶クリソベリルが泣き始める。


「しゃんとなさい! いつかまた会えます!!」

「あーーご心配無く、帰りたくなったらいつでもビュンと連れ帰りますんで、そんな今生の別れ的な挨拶はご無用でござる!」

「だから、魔力吸われて操縦するのはあたしだと」

「そんな事言って、本当は優しい癖にーー、ねえ?」

「しゃーしぃーー」

「それよりも奥方これを、こんな物要らぬかもしれませんが、ゴホウラ貝という貝殻です。お受け取りを」


 砂緒は袋に入ったゴホウラ貝の貝殻を半分渡した。


「こ、これは、なんと見事なゴホウラ貝!? こんなに沢山あれば何個腕輪が作れるかもしれません。こんな価値のある物を貰って良いのでしょうか?」

「え、それってそんな価値ある物なのです? 返し……」

「おい、恥ずかしい事言うな! どうぞ女主人殿、ユティトレッドの財力は無限です! 是非に受け取ってもらいたい。そしてこれからも役目に励む様に!」

「ははっ、有難き幸せに御座います……」


 伽耶の母親は畏まって受け取った。そして本当に出発の時が来た。砂緒とセレネは仲良く上の座席に乗り、伽耶クリソベリルは一人で下の座席に乗った。


「では奥方殿、達者でな!」

「砂緒さま、セレネ王女もどうぞお気を付けて! 伽耶、元気でね!! しっかりおやり!!」

「うう、お母様っ!! いつか必ず戻ります!!」


 伽耶は涙を流しつつ、手を振りながらハッチを閉めた。蛇輪は数歩走るとジャンプして鳥型に変形し、ガシッと強化されたコンテナを掴んで飛び立った。みるみる小さくなって行く館。伽耶は生まれ育った故郷が小さな点になって見えなくなるまで、涙の流れ続ける瞳で見つめ続けた。

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