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境界を定める……侵入したシルク船団を沈めろ!

「なんかめっちゃ高い山があるんだが……」

「本当ですねえ、富士山より高い感じがします……」

「フジさんって誰だよ、女か?」


 フォルモサ島国には日本の富士山より高い山があったが、鳥型に変形中の魔ローダー蛇輪はそれを軽々と飛び越え、西岸に向かう。


「むむ、フォルモサ島国の人々も警戒しているのか、西岸に集結しているみたいですね」

「今まさに迎え撃とうって感じか。でも装備がちょっと前近代的かな……」


 拡大して見ると魔戦車や魔ローダーは無く、鎧を着た騎士や魔導士が集結していた。


「集結してるって事は今まさにシルクの船団がこっちに向かってるって事かあ?」

「早速沖合に向かってみましょう!」

「先程から何をやっておるんじゃ? 余は凄く暇じゃ……」

「抱悶ちゃん、もう少しで楽しくなりますから、おにぎりでも食べながら待ってて下さい」

「うむ……」


 おにぎりを食べ始める抱悶。砂緒の言葉には素直に従う抱悶だった。


「む、本当に居やがった! 複数の船が……」

「レーダーに感有り! 複数の不審船、砂緒機長シルクの軍艦と思われます! うむ……とうとうこの時が来たか……どうして人々は争うのか……そんなに戦争がしたいのか……」


 突然砂緒は一人で二役を始めた。


「どうした??」

「砂緒機長、このままでは戦闘になります! 落ち着け、相手の出方を見る。まずは停船命令を出す! セレネ一尉、停船命令を流せ!」

「なあ、本当に一度脳の病院に行こう。一緒に行ってやろうか?」

「セレネ一尉、停船命令だ!」

「だから分らんって!」


 砂緒はセレネを無視して自分の操縦席から久しぶりに蛇輪を動かして、シルクの船団に接近させる。


「うーーーーーうーーーーー、不審船に警告する、君達はフォルモサの領海内に侵入している、ただちに停船しなさい、直ちに停船しなさい! うーーーーーうーーーーー」


 砂緒の中ではコーストガードの巡視船と哨戒機が合体していた。


「……言葉通じてねーよ」


 セレネの言葉通りシルクの軍船団は迷う事無くフォルモサに直進する。甲板上では何かの兵器を持った兵達が蛇輪を指さして騒いでいた。


「機長! シルクの軍船と思われる船団、一向に停船する気配がありません!! なんと愚かな……神はそれ程までに我々に試練を与えたもうか……」


 砂緒は一人二役しつつ、ガンッと操縦桿の頭を叩く。


「壊すなよおい」

「仕方あるまいセレネ一尉、警告射撃だ!」

「砂緒、だから分らんて!」

「SRVの剣ですよ! それを一本船団の前に落とすんです! それと私が命令したらちゃんと復唱してくれないと困ります! それに私は砂緒一佐もしくは機長ですから、そう呼んでくれないと困ります」

「SRVの剣を落とす!? あれ一体いくらすると思ってんだよ!」

「兵器は大体高い物なんです! それで平和が買えるなら安い物です……ちゃんと復唱お願いしますよ! ではセレネ一尉、警告射撃開始!」


 一瞬むすっとするセレネだが、文句を言っても最後は砂緒の言う事聞いてしまう甘ゝなセレネだった……


「……ハァ、なんか恥ずかしいな。警告射撃開始!」


 セレネが操縦桿を握って念じると、蛇輪は爆撃機の様に船団の前にSRVの大剣を一本ボチャッと落とした。激しく上がる水柱と大波によって、シルク船団の軍船が木の葉の様に激しく揺れ動く。言葉が通じなくとも、これが警告だと誰でも理解出来るだろう。その直後、各軍船が蛇輪に向かって猛烈に何かを撃って来た。蛇輪の至近で炸裂する魔法弾。


「機長、撃って来ました! 対空砲火です!! セレネ一尉気を付けろ、近接信管だ至近で炸裂するぞ!!」

「いや……魔ローダーは基本魔法無効だから……」

「セレネ……何回言ったら分かるんだ? 雰囲気を大切にしろ……」


 その間も船団は、甲板上で魔導士による魔法攻撃や魔砲を空に向かって撃ちながら、前進を止めない。


「機長、めっちゃ無視して進んで来るぞ」

「機長! 敵船団無視して進んで来ます!」


 セレネと砂緒の一人二役が被った。


「セレネ……知り合いなのに役職で呼び合うって、なんか特殊なプレイみたいで興奮しますね」

「お前が呼べと言ったんだろうが」

「神よ……私にルビコンを渡れと言うのか……仕方あるまい、セレネ一尉対艦戦闘よーいっ」

「……たいかんせんとうよーいっ」

「ハープーン対艦ミサイルの準備だ! 照準は中心の巨大艦船!!」

「え、何それ?」

「さっきのSRVの剣の残り一本ですよ! ちゃんと復唱して下さい!」

「はーぷーんたいかんみさいる準備、照準は中心の巨大船!!」

「投下!!」

「とうか!!」


 蛇輪は激しい対空砲火を掻い潜りながら、船団の中心に位置する司令船と思しき巨大な艦船に肉薄すると、雷撃機の様にぽいっとSRVの大剣を船の真上に投げ捨てた。剣は重い刃先から船に吸い込まれ、巨大な船の艦橋を真っ二つにしながら、やがて船首までをも切り裂いて海中に没した。直後から大量の海水が船内に流入し、巨大船はゆっくりと沈没を始める。甲板上では多くの兵員が大混乱となって走り回り、自ら海に飛び込んだ。甲板に居た兵員は良いが、船内に居た多くの者は逃げる事が困難だっただろう。様子を見ながら対空砲火を避け急上昇する蛇輪。


「これで……引き返してくれれば良いが……」

「だな」

「おおおーーーーー壮観じゃのう」


 砂緒とセレネが固唾を飲んで見守るが、中心の司令船が海の藻屑となる中、その他の船団の軍船は沈没する船を物ともせずに、一心不乱にフォルモサに向かって突進して来る。もはやそうしろと脅迫でもされてるかの様な動きだった。


「あーーー全然だめだったな? あれ高いんだぞ……じゃ、砂緒機長先生、とりあえずあの雷をお願いします」

「……それはダメです」

「フルエレさんに人を直接雷で攻撃しちゃだめって言われたからか?」

「……違いますよ」

「なんじゃ、船を軽く攻撃すればいいのじゃな? 余がやろうか?」

「おお、抱悶ちゃんが居たか……してどの様に?」

「燃え盛る巨岩を落としてやるのじゃ!」

「それはそれで雷に匹敵するくらい酷いと思うが」

「一瞬で全員消える雷よりか、まだ逃げる余地はあります」

「ふ~~ん? 人道的なフリしてフルエレさんの命令守りたいだけだろ?」

「……違います、さっ抱悶ちゃん火の玉を落としてやりなさい!」


 砂緒は操縦桿を握って念じると、能力を蛇輪が増幅してくれる事を、抱悶に教えてあげた。


「よ~~~~し、悪い奴らは儂がコテンパンじゃ!!!」


 抱悶が念じると空中で人型に戻った蛇輪は両手を上げ、高く掲げた両手の間から燃え盛る巨岩が発生した。


「行け! 敵の船を沈めよ!!」


 抱悶が叫ぶと発生した燃え盛る巨岩が、次々に船と海面にランダムに落ちて行く。ある船には艦橋にぶち当たり、ある船の船首をぶち抜き大穴を開け、また別の船の真横に落ちると大波を発生させて転覆させる。海上は木片や浮遊物に掴まる漂流者で溢れ、一瞬で阿鼻叫喚の地獄と化した。


「やばいな……」

「結構酷いですね」

「きゃははははははははは」


 船団の先頭部分が地獄と化し、遂に船団の残りの船の航跡がジグザグに乱れると、次第に引き返していく動きに変わった。


「帰って行く……完勝だ……」

「完勝とか、空から一方的に攻撃してただけだろ……」

「なんじゃ? もう終わりか? 全滅させんのか? 面白く無いのう」


 こうしてシルクによるフォルモサ島国侵攻先遣船団は、砂緒らの活躍により撃退された。この後、砂緒達の知る所では無いが、シルク王は反対の声の中新たな将軍二名に一万もの兵を与え、大船団で再びフォルモサ島国への侵略を図り、とうとう上陸を許し多数の住人を奴隷として連れ去るという暴挙を行うが、やがて船団の中で疫病が大発生、大した成果も無く多大な犠牲を出し撤退した。シルク王は激怒し派遣した将軍二人を処刑したという……


「くっ戦争で犠牲を避ける事は出来ない……しかし分っていても、こうするしか無かったのか!? 教えてくれセレネ君……いや、セレネ一尉!!」

「まだやってんのかお前。ある意味不謹慎だぞ……」

「あーもっと落としたかったのじゃー、今度はいつやるのじゃ??」


 等と言いつつ、蛇輪は一応敵の船団がちゃんと引き返して行くか確認すると、再びフォルモサ島国に向かって、帰投のコースに入った。


「うっわ、フォルモサ人めっちゃ喜んでる! 手なんか振ってるぞ、お~い!」


 セレネは魔法モニター越しに手を振った。


「本当ですねえ、何だか良い事をした気がします」

「あははははは、めでたしめでたしなのじゃ」



「おお、空飛ぶ魔ローダーが戻って来たのじゃ! 砂緒殿はご無事かえ!?」


 蛇輪が最西の島に戻って来た時はもはや深夜だった。砂緒はセレネと抱悶が泊る部屋とは別々に、部屋を用意してもらって眠りについた。


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